「今秋、競技場でプレーする諸君の誰もが、必ず一度や二度の屈辱を味わうだろう。今まで打ちのめされたことがない選手など、かつて存在したことはない。ただし、一流選手はあらゆる努力を払い、速やかに立ち上がろうと努める。並の選手は立ち上がるのが少しばかり遅い。そして敗者はいつまでもグラウンドに横たわったままである」


 テキサス大のかつての名将ダレル・ロイヤル監督が選手たちに送ったとされる手紙の一節だ。9月6日、関東学生リーグ「TOP8」の開幕戦となった早大―明大を見ていて、この言葉が思い浮かんだ。


 試合は予想通りの白熱した展開となった。第1クオーター、早大がQB内村竜也からWR岡田義博へのTDパスで先制するが、明大もRB赤津裕之のFGで3点を返す。その後は両チームの守備がふんばり、FGを蹴り合う一進一退の攻防が続く。


 残り試合時間は4分。16―15と早大が1点をリードする中、明大は最後の攻撃に逆転をかける。2分以上の時間を使いながら、巧みにランとパスを織り交ぜて敵陣に入る。
 FGを許せば逆転という状況の早大守備が、ここで奮起する。第2ダウンのランをロスタックルに仕留めると、第3ダウンのパスはQBサックで大きく後退させる。最後はQB広瀬湧基が投じたミドルパスを、1年生のWR森平貴大が落球し、試合が決まった。


 森平は神奈川県立横浜栄高の出身。昨春の県大会決勝では法政二高を最後まで苦しめて、史上初の公立高優勝まであと一歩に迫った。
 攻守両面で出場する16人のチームの副将として、味方の士気を鼓舞し続ける姿が印象的だった。誰よりも勝利への執念を見せた森平は、試合が終わっても声を上げて泣き続けた。


 今春の明大の試合の記録を調べていて、彼の名前を見つけた。王子スタジアムで行われた関学大との定期戦で、試合終了間際にTDパスをキャッチしていた。
 「あの大泣きしていた高校生が、大学でもフットボールを続けていて、関学からTDを奪ったのか」。何だかうれしい気持ちになった。開幕戦では森平の成長した姿を見ようと注目していたが、最後に痛恨のキャッチミスを犯してしまった。


 森平はなぜボールを落としてしまったのか。これは推測だが、ノーマークの状態に絶好球が飛んできたことが最大の原因ではないだろうか。野球に例えると、ど真ん中の球に力んだ打者が打ち損じたようなものだ。
 さらに、あの場面は第4ダウンで20ヤード近くが残っていた。ランアフターキャッチでファーストダウンを獲得するために、DBの位置を確認しようとしたのかもしれない。いずれにしろ、捕球時に余裕が生まれたことで、瞬間的に捕った後のことを考えてしまった可能性が高い。


 フィールド上で早大の勝利に向けたカウントダウンが進む中、森平は1年前と同じようにサイドラインで泣き崩れていた。明大のベンチに彼を責める者は一人もいない。
 「下を向くな。リーグ戦は始まったばかりだ。次の試合で取り返せ」。まるでこう語りかけるように、先輩たちが次々に打ちのめされたルーキーの頭や肩をポンポンとたたいていく。そんな光景を見て、冒頭のロイヤル監督の言葉が頭をよぎった。


 実力伯仲のTOP8は、2敗したチームは優勝戦線から脱落していくことになる。後がない明大の次戦は9月20日。初戦で立教大から70点を奪う猛攻を見せた優勝候補の一角、慶大と対戦する。

【写真】法政二高に敗れて号泣する、県立横浜栄高時代のWR森平(左)=2013年、日吉陸上競技場