9月6日に開幕する関東学生リーグは、今季から1部「TOP8」に所属する日大、法大、明大、立教大、慶大、早大、中大、日体大の8校がリーグ戦を行って優勝を決める。全体的に各チームのレベルが上がっており混戦が予想されるが、その中でも特に注目されているのが「早慶」だ。


 高校選手権で4連覇している早大学院高の礎を築いた早大の濱部昇監督と、かつて社会人のリクルート(現オービック)を日本一に導いた慶大のデービッド・スタント・ヘッドコーチ(HC)は、ともに昨年からチームを率いている。
 濱部監督は「選手の自主性に任せすぎた部分があった」、スタントHCは「選手の特性を理解するのに時間がかかった」と、そろって1年目は指導体制を模索したシーズンだった。
 今季は両チームともに春からエンジン全開で結果を残しており、戦力の充実ぶりがうかがえる。近年、関東の優勝争いを繰り広げている日大、法大のコーチ陣も昨年以上に警戒を強めている。


 早大は立命大に27―16、関大に27―10と春とはいえ関西学生リーグの強豪を破った。QBのポジションではエースをめぐって1年生の坂梨春木、2年生の笹木雄太、3年生の政本悠紀、4年生の内村竜也がしのぎを削っている。
 早慶戦では政本がフル出場して、スクランブル能力に長けた非凡な才能を見せつけると、立命大戦では坂梨が1年生ながらオフェンスのマネジメント力を披露して、TDドライブを演出した。笹木と内村はサウスポーで、虎視眈々とエースの座を狙っている。


 興味深いのが、下級生の坂梨と笹木が早大学院高で日本一を達成した「バランス型」の司令塔であるのに対して、政本と内村は身体能力や強肩に恵まれた「能力型」のQBであることだ。
 坂梨と笹木がある程度安定したパフォーマンスが期待できるのに対して、上級生の二人はこれまで多少調子に波があるタイプだった。政本が早慶戦で披露したように、安定して力を発揮できれば先発に最も近いと思う。
 だが、濱部監督にとって高校時代の教え子で、プレーの理解度も高い坂梨の安定感はきっと魅力的だろう。
 「坂梨君をはじめとして、濱部監督の早大学院時代の教え子たちがのびのびとプレーしていた」。早大が立命大を破った一戦について、共同通信OBで小欄コラムニストの丹生恭治さんは、このような印象を受けたという。
 いずれにせよ秋のリーグ戦までに誰かが抜け出さない限り、しばらくは何人かを併用しながら試合を組み立てる可能性が高い。


 その早大に春の定期戦で勝利したのが慶大である。早大は大学世界選手権のメンバーに選出されたLBケビン・コグランら主力が数人欠場したが、息詰まる熱戦を慶大が35―28で制した。
 その他にも京大をホームに迎えて56―7で一蹴するなど、ノーハドルを駆使した爆発的な攻撃力が光った。そのオフェンスを率いるのが4年生のQB高木翼だ。小学校でフラッグフットボールを始めた時から一貫してQBを務めており、QB歴は22歳で10年以上になる。
 「慶応のマニングになれ。(QBの判断で作戦を変更する)オーディブルはいつでも出していい」と、スタントHCも全幅の信頼を寄せている。


 だが、チームにとって高木の存在が大きすぎることが、逆にチームの弱点となっている。控えのQBが全く育っていないのだ。春は得点差が開いた試合で、3人のQBが交代で出場したが、攻撃はほとんど機能しなかった。
 「翼がいる間は試合に出られないと思っているのか、控えQB陣にあまり成長が見られない。彼のバックアップとしてレベルアップしようという意気込みがほしい」。スタントHCも現状を危惧する。


 ハードトレーニングで足がかなり速くなったという高木は、立教大戦でオプションキープから独走するなど、新たな才能も見せている。多彩なパスとRB李卓のランに高木の足が加われば、守備としては攻撃の的を絞りづらく驚異だが、高木の穴を埋める控えQBのいない現状では、あまりけがのリスクがあるプレーを選択できないだろう。


 リーグ戦の組み合わせでは、早大と慶大は11月23日に横浜スタジアムで行われる最終節で対戦する。この試合が優勝争いに絡むようなら、リーグ戦はがぜん面白くなる。

【写真】慶大オフェンスの大黒柱、QB高木=4月20日、同志社大グラウンド