梅本裕之、木戸崇斗、大園真矢、木下豪大、樋之本彬。昨シーズンの関学大の主力WRは誰かと聞かれたら、この5人がすぐに思い浮かぶ。
 正確には樋之本はTE登録だったが、今季はWRとしてプレーしている。これはあくまで私の評価で、関学大のチーム内の序列は知らないが、ほぼ相違ないだろう。


 3年連続で甲子園ボウルを制覇した関学大について、今年は春から取材を重ねた。攻撃では2年生のQB伊豆充浩とRB橋本誠司にめどがついたことが、最大の収穫だと思う。特に伊豆は強豪パナソニック戦で活躍するなど、打倒社会人を掲げる学生王者にとっては頼もしい限りだ。
 守備では3年生のDB田中雄大の存在感が飛び抜けていた。学生界では久々に相手がパスを投げるのを恐れる「シャットダウンコーナー」が現れた印象だ。だが、それ以上に強烈なインパクトを放ったのが、4年生のWR横山公則だ。


 4月19日、王子スタジアムで行われた慶大との初戦では、キックオフリターンTDで先行される思わぬ展開となった。たが、横山がDBと競り合いながら同点となるTDパスを捕球するなど、この試合のリーディングレシーバーとなる活躍で、逆転勝利に貢献した。
 試合後の囲み取材では、落球を繰り返した若手のWRに対して、鳥内秀晃監督が厳しい言葉を並べた。だが、「横山君は良かったのでは」という記者の質問に対して、「あいつは一軍みたいなもんやから、あのくらいやって当たり前」と、一瞬だけ表情が緩んだのを記憶している。続く日大戦でもDBを振り切ってTDを決めるなどエンジン全開で、春季を通して関学大のパスユニットをけん引した。


 この横山が昨季の主力5人に次ぐ6番手のWR「シックスマン」だった(繰り返しになるが私の評価である)。シックスマンと聞けばバスケットボールが好きな方はすぐにピンと来るだろう。コートでプレーする5人のレギュラーの控えとして、試合の途中から出場する6番目の選手のことだ。
 フットボールと同様に選手交代が自由なバスケットでは、シックスマンが重要な役割を果たす。昨季の横山の記録を調べてみると、日本選手権で1回捕球しているのをはじめ、リーグ戦にも随時出場しており、まさにスーパーサブとしてチームに貢献した選手だった。


 ここからが本題だが、横山が印象に残った理由はただ活躍したからではない。昨季は6番手だったWRが、強豪チームとの試合では初めて任されたであろうエースのポジションで、初戦から堂々とプレーしたからである。関学大で試合に出場しているのだから、元々エースとしても活躍できる実力があったのだろう。そう思う方もいるかもしれない。
 確かに学生王者の控えWRであれば、他校に行けば十分にエースの看板を張れるだろう。だが、実際にエースとして試合で活躍することは、それほど簡単ではない。


 WRにとって、ローテーションで出場する控え選手とエースの役割は全く違う。つまり、勝負どころのダウン更新やTDパスなど、試合の本当に大事なところでパスが飛んでくるのがエースだからである。
 下級生の時は気楽にプレーして活躍していたが、4年生でエースになりプレッシャーに押しつぶされてしまう選手もいる。横山は今春任されたエースとしての期待に、見事に応えたのだ。


 昨年の関学大は、エースを主に梅本と木戸が担っていた。今年は下級生の時から主力としてプレーする木戸が文句なしのエース候補だろう。
 春は完璧な仕事をした横山が、きら星のごとく並ぶ関学大のWR陣の中で、本当にエースとして輝くことができるのか。春に活躍した選手が、本番の秋にどんなパフォーマンスを見せるのか。そのプレーぶりに注目したい。

【写真】春季、関学大のパスユニットをけん引したWR横山=撮影:Yosei Kozano、4月27日、アミノバイタルフィールド