今春の学生フットボール界の話題をいくつかお伝えする前に、私が今年から学生を積極的に取材するようになったきっかけを説明しておきたい。


 「Xリーグの魅力を伝える」。2012年に週刊TURNOVERを始めた時のコンセプトの一つだ。社会人Xリーグは日本で最もレベルが高く、おもしろい試合も多いが、世間の認知度が低い。専門誌が学生を中心に誌面を構成しているなど、あまり報道されていないのが最大の理由だろう。
 その思いは今も変わらず、取材の中心はXリーグだ。今春のパールボウル決勝も、期待以上の素晴らしい試合だった。だが、「もっと学生もちゃんと見なければ」。昨年、あるチームにこう思わされた。立教大学ラッシャーズだ。


 秋の関東学生リーグ、9月7日の立教大の初戦を見た。Xリーグでのコーチ経験が豊富な市瀬一ヘッドコーチが就任するなど、チームの体制が大きく変革された立教大に注目していたからだ。
 結果は東大を相手に14―12と薄氷の勝利。チームのピークをリーグ戦の後半に持っていこうとしているのは容易に想像できたが、再建にはまだ時間がかかるかなというのが正直な感想だった。その後は全勝で勝ち進んだが、第5節の法大戦で10―45の完敗。これでAブロックの優勝は法大と早大の2校に絞られた。誰もがそう思った。


 第6節、立教大と早大の試合結果を聞いて、耳を疑った。35―20で立教大の勝利。しかも前半は28―0と立教大が圧倒する展開だった。「コーチ陣も含めて隙があった」。後日、早大の濱部昇監督は法大戦のことを考えるあまり、立教戦への準備に油断があったことを認めた。
 それでもこの試合結果は信じられないものだった。なぜなら立教大は早大戦の時点で、優勝の可能性がほとんどなかったからだ。


 既に法大に35点差で負けており、三つ巴で優勝するには早大に35点差以上をつけての勝利が最低条件。さらに早大が法大に勝たなければならない。ここまで全勝できている早大との間には、実力以前に大きなモチベーションの差があると思っていた。
 しかし、前半のスコアを見る限り、立教大はわずかな可能性を信じて本気でこの一戦に取り組んだのだ。


 結果を決めつけて、この試合を取材に行かなかったことをとても後悔した。地力では良くて互角の相手をこれだけ圧倒するには、チーム全員がよほど腹をくくって最高の準備をしたのだろう。「法政に負けてから一皮むけてくれたかな」。津田慶祐守備コーチがシーズンをこう振り返った通り、この試合は間違いなく立教大のターニングポイントとなった試合だ。
 11月9日、最終節の日体大戦を見に行った。そこで目にした立教大は、9月の東大戦とは全く別のチームだった。RB茂住雄太のランを中心に、多彩な攻撃と粘り強い守備が一体となった素晴らしいフットボール。スポーツに「たられば」は禁物だが、この時点で立教大が法大や日大と試合をしていたら、間違いなく互角以上の勝負になっただろう。


 たった2カ月でここまで変わるのか。学生スポーツではチームが短期間で急成長することもあれば、一気に崩れることもある。頭では分かっていたつもりだが、立教大にはあらためてその醍醐味を教えてもらった。
 今年はそんなターニングポイントとなる試合を見逃さないように、できるだけ多くの試合会場に足を運びたいと思っている。来週は関西学生フットボール界の話題を紹介する予定だ。

【写真】「トモダチボウル」で米国チームからTDを奪った立教大の若手オフェンス陣=3月、米軍厚木基地