今週から春季Xリーグ、学生リーグを取材して印象的だったトピックを紹介していきたい。まずはXリーグの話題から。
 パールボウルトーナメントで屈指の好カードとして注目されたオービック―IBMの一戦は、45―14と一方的な展開でオービックが制した。だが、スコアとは対照的にこの試合で感じたのは、秋の本番に向けたIBMの底知れないポテンシャルだった。


 最も印象的だったのが、IBMの新人DB中谷祥吾=関大出=のプレーだ。181センチ、90キロの日本人離れした体格は、NFLのDBの平均サイズとほぼ同じ。一般的にパスカバーよりもランプレーへのサポートを求められるストロングセーフティー(SS)のポジションから、素早い上がりで強烈なタックルを連発していた。
 現在、日本人最高のSSの一人、オービックの砂川敬三郎も関大出身で、昨季はビッグプレーでチームの日本選手権4連覇に大きく貢献した。
 中谷はまだ荒削りだが、そのポテンシャルは砂川を上回る。彼が成長すれば、日本人DBの概念を根底から覆すほどの存在になると思っている。


 その中谷とコンビを組むのが関学大出身のDB保宗大介だ。社会人2年目とは思えない安定感は、甲子園ボウル、ライスボウルをはじめとした大舞台を学生時代から数多く経験してきた結果だろう。
 春のオービック戦では、この二人で16タックルを記録した。若手のSF二人にめどが立ったことにより、長年IBMの最後尾を守ってきたDB中山裕貴が、春は一列前に上がってプレーしている。
 DLではアサヒ飲料から移籍した紀平充則が存在感を示しており、秋には守備の大黒柱、LB岸本祐輔も復帰する。選手層のレベルではトップチームとの差はあるが、クラブチームへ移行してから常にIBMの課題だった守備に、人材がそろった。


 もう一点、オービック戦で気になったのが、あまりに無策だったことだ。山田晋三ヘッドコーチ(HC)が各世代の日本代表のスタッフとして奔走していたため、チーム全体で準備不足となったことは否めない。
 だが、それを差し引いても戦略的な工夫の跡が攻守ともに見られなかった。「勝負は戦力の整う秋」。特にQBケビン・クラフト率いるオフェンスは、そう割り切っているかのような淡々としたプレーの連続だった。


 秋のシーズン、IBMは攻撃陣ではNFLへの挑戦を続けているWR栗原嵩が加わる。さらに、WRで起用している新人のアスリート、前田眞郷とQBクラフトのコンビネーションも春と比べて良くなるだろう。
 安定したパフォーマンスを続けるベテランの小川道洋とジョン・スタントンを加えたレシーバー陣もタレント揃いだ。
 オフェンスラインはまだ発展途上だが、関学大で主将を務めた岡田拓郎が加入するなど、以前よりレベルは上がっている。


 さらに山田HCから気になる発言があった。「秋には守備にもう一枚、秘密兵器が加わる」。Xリーグの規定で攻守二人ずつしか同時に出場できない外国人選手だが、IBM守備の外国人枠には1人余裕がある。
 有力な米国人選手が加入するという見方が妥当だろう。東ではオービックと富士通、西ではパナソニックが力の差を見せつけたXリーグの春季シーズン。秋は戦力の整ったIBMが大暴れする。そんな気がしてならない。

【写真】IBM期待の新人DB中谷=撮影:Yosei Kozano、5月31日、川崎富士見球技場