6月23日にオービック―富士通のパールボウル決勝が東京ドームで行われる。試合の見どころはたくさんあるが、最も注目しているのは富士通のオフェンスライン(OL)とオービック守備フロントのパスプレー時の攻防だ。


 昨年の社会人選手権では第1クオーターにオービックのDLビーティー・ジュニアが富士通のQB平本恵也をサックで負傷させると、DB砂川敬三郎も途中出場したQB出原章洋からサックでファンブルフォースを記録、一気に試合の流れをつかんだ。
 今季も猛烈なパスラッシュでIBM、ノジマ相模原のパス攻撃を粉砕してきたオービックに対して、富士通OLが攻撃の大黒柱、QBコービー・キャメロンを守ることができるかどうかが勝敗の大きな分かれ目となるだろう。


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 以下の「図1」をご覧いただきたい。
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 昨年の社会人選手権で富士通のQB平本がオービックのDLビーティーにサックされた場面だ。ポイントはXリーグ最強のパスラッシャーであるビーティーを、体格で劣るRBがブロックするというミスマッチが発生していることだ。
 昨季までの富士通のパス壁は、OLが左右にスライドして空いたエリアをRBがサポートするという仕組みだった。また、TEがパス壁に入ることも多かった。富士通OLの両サイドを担当する小林祐太郎と勝山晃のコンビはリーグトップクラスの実力を持っており、小林は日本人最強OLとの呼び声も高い。
 だが、彼らは全てのプレーでDLケビン・ジャクソン、ビーティーらオービックのエースラッシャーと対戦していたわけではないのだ。


 次に「図2」が今春から富士通が取り組んでいるパス壁のフォーメーションだ。
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 大きな違いは二つ。基本的にパスプロテクションをOLの5人だけで行っていることと、スナップ後にOLが一気に2、3ヤード下がってQBの近くでコンパクトに壁を作っていることだ。
 これはキャメロンの出身校であるルイジアナ工科大のパス壁のスキームを取り入れたもので、導入から2カ月も経っていないが富士通のパス攻撃にフィットしている。7日に行われた準決勝ではこのパス壁で、強豪リクシルの守備フロントをほぼ完封した。


 既にお気づきだと思うが、このフォーメーションでは必然的にオービックのジャクソン、ビーティーを富士通の小林、勝山が対応するケースが増える。この攻守ラインの両エースの直接対決を制したチームが、勝利を大きく手繰り寄せるだろう。


 ただし、このパス壁は身長192センチのキャメロンだからこそフィットするものだ。172センチの平本恵也をはじめとした富士通の日本人QBにとっては、目前の視界が味方のOLによって遮られるため、プレーしにくいだろう。
 実際、予選リーグのハリケーンズ戦で平本はパスをインターセプトされたが、守備選手が見えずに投げてしまったように感じた。昨年の社会人選手権同様、もしエースQBのキャメロンを守ることができず負傷退場に追い込まれれば、試合はその時点で決着してしまうかもしれない。


 今季から富士通のOLコーチに就任したオレゴン州立大出身のグラント・ジョンソンさんは、「富士通のオフェンスラインは才能に溢れている。新しいシステムに慣れれば、もっと強力なパス壁を築くことができるだろう」と自信をみなぎらせていた。
 一方、オービックのビーティーも「強いOLとの対戦を楽しみたい。今年もビッグプレーを狙っていく」と、昨年のリベンジを狙う富士通を返り討ちにする構えだ。


 富士通オフェンスが新たに築いた壁でキャメロンを守るのか。オービックディフェンスがそれを破壊するのか。意識していないと見逃してしまいがちなこの局地戦が、今から楽しみだ。

【写真】富士通QBキャメロンのブラインドサイドを守るT小林=撮影:Yosei Kozano