「冷静で頭が良く勇敢。体は小さいが、数匹が集まれば熊をも倒す」―。関東学生1部「BIG8」に所属する、「横浜国立大学マスティフス」のチーム名の由来となったマスティフ犬のことだ。


 今春、横国大の試合を見る機会が2回あった。4月27日の神戸大戦と5月18日の立教大戦。若手主体の神戸大相手には31―7で完勝し、立大には6―17で敗れた。
 印象的だったのが立大戦の第3Q。184センチの長身QB立石祥三を中心にゴール前までドライブして、第4ダウンのパスを立石がエンドゾーンの左隅に走り込んだWRにヒットした。
 上位8校で構成する「TOP8」の強豪に対して、粘り強く攻め続ける横国大のオフェンスを見ていたら、10年前の歴史的な試合を思い出した。


 2004年、関東学生リーグ開幕戦。この年、甲子園ボウルに出場することになる法政大は、初戦を12―15で落とす。相手は2部から上がってきたばかりの横国大だった。
 第3Q途中までは法大が12―0とリード。ここから横国大は「ショットガン・フォーメーション」からのランプレーを中心に、完全にボールを支配して逆転に成功する。この試合の攻撃時間は、法大の14分に対して横国大は34分だった。


 ショットガンと言えば日大の伝統的な攻撃フォーメーションとして昔から有名だが、20世紀の日本フットボール界では、ほとんどのチームがセンターから直接スナップを受け取るセットバックフォーメーションを採用していた。


 2000年ごろから流れが変わる。ショットガン攻撃を駆使して全米王者になったオクラホマ大のスキームを取り入れて、立命大がラン攻撃にも威力を発揮するショットガン攻撃を構築した。
 QB高田鉄男(現パナソニック)、WR木下典明(現オービック)らバックフィールドに豊富なタレントをそろえた「リッツガン」は爆発的な攻撃力を発揮した。02、03年には社会人を倒して日本選手権を連覇する。


 一方、関東でいち早くこのフォーメーションを導入したのが、当時2部リーグに所属していた横国大だった。
 04年に副将のTEとして活躍し、現在は横国大のヘッドコーチ(HC)を務める田島聡嗣さんはこう語る。「これからは日本にもショットガンの時代が来る。そう信じて、みんなで新しいことに取り組んだ」。そうして02年から試行錯誤を重ねた取り組みが、誰も予想しなかった法大戦のアップセットへとつながった。


 「現状は正直TOP8で戦う力はない」。主力の大半が卒業してしまった今のチーム状況を、田島HCは冷静に分析する。一方で明るい話題もある。今春、45人の新入部員を獲得したのだ。


 「彼らを鍛え上げて、また上に挑戦したい」。高校でフットボールを経験している選手は学年に一人か二人。全員を一から指導してチームを作り上げていくのがコーチの醍醐味だと田島HCは言う。
 関東のトップチームは近年明らかにレベルアップしていて、競争は激しさを増している。
力を蓄えたマスティフ犬が、数年後に再び熊に戦いを挑む日が楽しみだ。

【写真】堅実なクオーターバッキングで横国大オフェンスを率いたQB立石と田島HC=18日、アミノバイタルフィールド