アメリカンフットボールの春季高校神奈川県大会の決勝が、5月11日に慶大グラウンドで行われ、法政二高が最大17点差を逆転して38―27で横浜栄高に勝った。横浜栄高は史上初の公立高校による神奈川制覇を目指したが、2年連続で法政二高に敗れた。


 勝敗のポイントは明確だった。横浜栄が決勝まで勝ち上がってきた原動力、エースRB山口祐介を法政二高の守備が止められるかどうかだった。
 山口はフルバックのポジションからのダイブ、テイルバックからのオープンプレーと、高校生離れした走力でフィールドを縦横無尽に駆け回るタフなランナー。一度抜け出したらエンドゾーンまで独走するスピードも兼ね備えている。
 今春、王者早大学院高を破っている慶応高も止められなかった山口のランに対して、法政二高守備がどのように対応するのか注目した。


 法政二高が先制して迎えた横浜栄の攻撃。山口が次々にロングゲインを重ねる。わずか5プレーでTDを奪った。
 山口のランを止めるために準備された法政守備は、いきなり修正を迫られた。試合中に攻撃や守備を修正することを「アジャスト」という。まずはスタンド上段から戦況を見つめるスポッターや、プレーしている選手から情報を集めて、フィールドで何が起きているのかを把握する。その状況に対してコーチが最善の対応策を考えて、選手に指示を出すのだ。


 よくフットボールの勝敗の半分は試合前の準備で決まると言われるが、言い換えれば残りの半分は試合中のアジャストにかかっているということだ。
 大学や社会人の強豪チーム同士の対戦では、ハーフタイムを境に試合展開が一変することがよくある。これは優秀なコーチ、分析スタッフによりアジャストが行われるからだ。


 この日の法政二高守備のアジャストは素晴らしかった。最初に失点した後、平本義人守備コーチがすぐにサイドラインで横浜栄オフェンスの狙いと対応策を明確に伝えていた。
 浮き足だった法政二高の守備選手たちが、みるみる落ち着いていく。守備にとって最も避けるべき状況は、選手がどうしていいか分からず迷いながらプレーすることだ。
 法政二高のコーチ陣は、出鼻をくじかれてから次の守備機会が訪れるまでのわずか5分間で、選手の迷いを断ち切ることに成功した。


 驚かされたのが次の横浜栄の攻撃に対する守備。ファーストプレーで山口が右オープンを駆け抜けて独走TDを奪う。だが、同じTDでもやられ方が全く違っていた。守備選手が自分の役割をきっちり果たしてRBを内から外に流していたのだ。山口の能力が上回り振り切られてしまったが、完全に止める形ができていた。
 短時間で修正の指示を出したコーチ陣も見事だが、それをすぐに実行した法政二高の守備選手たちも素晴らしかった。前半終了時のスコアは20―10で横浜栄高のリードだったが、守備の修正が完了した法政二高が後半に逆転するのは時間の問題だった。


 法政二高のDL吉田郁は、「点差が開いても誰もあきらめていなかった。みんなで集まって相手を前に倒すことに集中した」と語った。亀ケ森健次守備コーチも「今年の守備にスター選手はいない。それが全員で一丸となって止めようという集中力につながっている」と守備の成長に手応えを感じていた。


 敗れはしたが、強い日差しが照りつける中、18人で戦い続けた横浜栄高の選手たちもまた立派だった。特にエースRBの山口はLBとしても鋭いタックルで法政二高の攻撃を止め続けた。第3Q途中に力尽きて担架で運ばれたが、その後も足をひきずりながらフィールドに戻り、気力だけで最後までプレーを続けた。
 24日に開幕する関東大会では、法政二高は駒場学園高―江戸川取手高の勝者と、横浜栄高は東京を制した日大三高と対戦する。

【写真】第4Q、逆転のTDを決める法政二高のRB尾崎=11日、慶大陸上競技場