12月23日、東京・味の素スタジアムで行われた全国高校選手権決勝(クリスマスボウル)で、早大学院が立命館宇治を破り史上3校目の4連覇を達成した。「大学についてお話をうかがいたいのですが」。早大学院の選手、スタッフらが優勝の喜びに沸く中、兄貴分に当たる早大の浜部昇監督代行(早大学院総監督)にこう切り出すと、表情が一瞬曇った。だが、早大学院という常勝チームを作り上げ、今季から早大の監督代行を務める指揮官は、新たな挑戦について一年間をふり返りながら丁寧に語ってくれた。 


 ▽常勝チームの伝統  
 早大学院は今年も強かった。今春、東京都大会の決勝で都立戸山に4年ぶりの敗戦を喫したが、その後はクリスマスボウルまで全勝でシーズンを駆け抜けた。「選手が入れ替わっても伝統が受け継がれ、勝ち方がチームに染みついている」。今季から浜部氏の後を継いだ箕浦秀一監督の言葉が象徴的だ。  
 「試合前のタックル練習を初めて見た時、これは勝てないと思った」。ライバル校のコーチにこう言わしめるほど、早大学院のファンダメンタル(基礎技術)の高さは高校フットボール界では群を抜いている。トレーニングをしっかり行った上で、タックルやブロックなどの基礎を徹底して身につけさせる。これは浜部氏の中で揺らぐことのない方針だ。
この基盤に、浜部氏がコーチ留学していた南カリフォルニア大のものをベースとした戦術が加わり、よく統率された組織が試合で確実に遂行する。  
 これまで早大学院で築き上げてきた常勝チームのノウハウが、果たして大学でも機能するのか。春から注目してきた。  


▽大勝から生まれたすき  
 今季の早大は順調な戦いぶりだった。4月29日、初戦で慶大に38―7と完勝すると、関大、明大と強豪を次々に破っていった。秋のリーグ戦に入っても勢いは止まらない。4連勝で迎えた日体大戦も45―10と圧勝する。残り2戦となったこの時点で、リーグ最終戦は法大と早大の全勝対決になるというのが大方の予想だった。
 だが、次戦の立教大で20―35とまさかの完敗。立教大がシーズン終盤に力をつけていたのは明らかだったが、その一方で浜部氏はこうふり返る。「思い返すと春の早慶戦の大勝で、チームが自分たちの実力を過信した部分があった。そして、リーグ戦の一つ目の山場と想定していた日体大に大勝したことで、我々コーチ陣も含めて完全に慢心、すきが生まれた」
最終戦となった法大相手には何もできずに完封負け。「今年の法政は選手たちに(監督問題などの)緊張感があって、気持ちの入った素晴らしいプレーをしてきた。立教に負けていなくても勝つことは難しかった」と完敗を認めた。  


▽不協和音の解消  
 結果だけを見れば以上の通りだが、チームの内情はどうだったのか。そして、浜部監督代行はこの一年で何を変えたのか。見えてきたキーワードが「環境の違い」だ。  
ここ数年、早大学院の監督時代から浜部氏が感じていることがあった。それは高校からの内部進学組と大学からの外部受験組とがうまく融合していないということ。高校が日本一になったことが、大学では時としてマイナスに働いているというのだ。
 全国制覇を経験している早大学院出身者たちは、どうしても「高校時代は違った、学院ではこうやっていた」という言葉を口にしてしまう。人間なかなか成功体験を捨てることはできない。  
 国立大学はもちろんのこと、推薦枠がほとんどない早大、慶大、立教大などの私立大も、フットボール未経験者を含めた受験組の戦力を融合させてチームの底上げを図る必要がある。だが、早大ではこれらの言動が少なからずチーム全体のまとまりを阻害していたのだ。  
 さらにチームをまとめる上でもう一つの壁があった。「高校はスタート地点も生活リズムもみな同じで、意識統一が図りやすかった。大学は選手のレベルや学部、キャンパスなどの環境がばらばら」。高校の教員として選手と生活をともにし、指導してきた浜部氏だからこそ、その違いは決定的に感じられたのだ。  
これらの課題を認識した上で、浜辺氏は1年間試行錯誤を繰り返してきた。「大学生には高校生よりも自主性を求めた。彼らを尊重すべきところはして、私のやり方を浸透させてきた」  


▽真の強豪校へ  
 「来年は攻めに転じたい」。浜部監督代行はチーム再建に確かな手応えをつかみつつあるようだ。早大は2002年にQB波木健太郎を中心としたチームで初の甲子園ボウル出場を果たして以来、強豪チームとして常に関東の優勝争いに絡んでいる。だが、法大、日大の壁は厚く、その後の10年間での関東制覇は、末吉智一(現IBM)がエースRBとしてチームをけん引した2010年の一度だけ。
 来季の早大は1年から4年まで全ての代に、高校日本一を経験した教え子たちが含まれる。浜部監督代行が早大を真の強豪へと導くことができるのか。その手腕が注目される。

【写真】今季から早大を指揮する浜部昇監督代行=4月29日、駒沢陸上競技場