アメリカンフットボールの春季神奈川県高校大会の決勝が5月5日に慶大グラウンドで行われ、初優勝を目指した横浜栄高は、法政二高に13―14で敗れた。横浜栄高は、準決勝で強豪慶応高を破り、決勝でも伝統校に肉薄した。部員はわずか16人。決して恵まれているとは言えない環境で決勝まで勝ち進んだ公立校の戦いぶりは、称賛に値するものだった。


 ▽攻守両面
 2009年、神奈川県立の港南台高が上郷高に統合され、横浜栄高となった。それに伴い部活動の統廃合も進められ、港南台高のアメリカンフットボール部は練習グラウンドを移して存続し、少ない部員数ながらも関東大会優勝を目指して精力的に活動を続けている。
 11人でプレーするアメフットだが、基本的に攻撃と守備は分業制で、攻守が入れ替わる度に選手も交代する。だが、部員数の少ないチームは攻守両面でのプレーを余儀なくされる。当然体力の消耗は選手の入れ替えができるチームより激しい。高校でも関東大会に出場するレベルのチームの多くは攻守で選手を入れ替えるが、少ない部員でやり繰りする横浜栄高は、ほとんどの選手が交代することなく常にプレーし続ける。決勝は7―7の同点で前半を折り返したものの、初夏の強い日差しの下でスタミナを奪われた後半、徐々に実力差が出始めた。


 ▽スカウティング
 アメフットは準備のスポーツと言われる。体格や運動能力で劣っているチームが、相手を分析し、それに基づいた戦術を駆使することによって、勝つことが可能になる。横浜栄高が少人数ながら強豪チームと互角に渡り合える理由の一つはここにある。作戦は同校OBの長谷川順平コーチを中心に選手みんなで考えている。QBの伊勢馬場大樹は言う。「全員が対戦相手のビデオを繰り返し見ている。スカウティング(相手の分析)はどこにも負けない」。その成果は守備で顕著だった。相手の攻撃を予測して積極的にプレーしているのがうかがえた。また、「ランがマークされたので、ショートパスに切り替えた」と主将のDB小松直樹が言う通り、試合中の臨機応変な対応も奏功した。


 ▽逆転狙った最後の攻撃
 ここ一番での集中力も光った。法政二高が7点をリードして迎えた第4クオーター。残り試合時間3分を切って、自陣の奥深くから横浜栄高のドライブはスタートした。ショート、ミドルのパスを次々に決めてゴール前まで進む。残り40秒で第4ダウンに追い込まれたが、QB伊勢馬場がWR中村郁実へのTDパスを決めて1点差に迫る。キックで同点に追いつき延長戦に望みを託すこともできたが、横浜栄高は決まれば逆転となる2点コンバージョンを迷わず選んだ。ここで選択したのは相手の法政二高が得意とするオプションプレー。ゴールまで残り1ヤードに満たない地点でRBがタックルされ、敗戦が決まった。
 試合後、横浜栄高の16人全員が号泣していた。表彰式が始まってもその涙が止まることはない。それはこのチームの取り組みが本物であることを証明していた。
 横浜栄高の関東大会初戦は6月2日。全国高校選手権3連覇中の早大学院高を破って東京都大会を制した都立戸山高と対戦する。今年で44回目を迎える全国高校選手権決勝(クリスマスボウル)に、公立高校が出場したことはまだない。新たな歴史を切り開く可能性を秘めた東京と神奈川の公立高校の雄が激突する、興味深い一戦となりそうだ。

【写真】神奈川県高校大会の決勝で法政二高に敗れ、表彰式で号泣する横浜栄高の主将DB小松(右)と副将P森平=5日、慶大グラウンド