日本社会人Xリーグ1部の鹿島が、今季限りで企業チームとしての活動を停止する。鹿島本社の広報室によると、クラブチームなど形態を変えて存続するかは未定。同広報室は理由について「社員の採用数を減らす中で、選手の補強に影響が出る。これまでの活動で社の一体感に寄与するという役割を果たせた」と説明した。


 ▽理想の企業チーム目指した鹿島
 2012年12月、社会人選手権の決勝を1週間後に控えた鹿島の練習グラウンドを訪れた。選手の数が少ない。守備は主力選手を欠いている。森清之ヘッドコーチ(HC)に話を聞いて理由が分かった。「仕事を優先させている。景気に左右されることなく活動を継続するためには、選手は職場の人たちに信頼されなければならない。チームが企業の経営資源になることが究極の目標」
 東京・赤坂にある鹿島建設の本社で、攻撃ラインの選手を取材した。フィールドでのプレー同様に黙々と仕事をこなす彼を、職場の人たちが温かく応援していた。企業チームとは一体どうあるべきか。森HCが描く理想の姿が、各選手に共有されているのを感じた。鹿島は1989年の創部以来プレーオフの常連で、日本選手権を2度制するなど結果も残している。だから、チームが活動停止を発表するとは夢にも思わなかった。


 ▽企業スポーツの栄枯盛衰
 自動車、金融、アパレルにIT業界。アメリカンフットボールに限らず、企業チームは時代を映す鏡のように、日本スポーツ界の中に誕生しては消えていった。企業の広告塔や社員の士気高揚、地域社会への貢献。かたちとして表れにくい企業スポーツの価値は、常にコスト削減という目に見える数字にかき消されてきた。苦しい時こそスポーツや文化活動に投資をすべきと言うのは簡単だ。だが、経営者側の視点で考えれば、トップリーグのチームを運営するのは並大抵のことではない。社会人Xリーグについて言えば、1部のチームを維持するには年間億単位の経費がかかる。個人的には嫌いな言葉だが、費用対効果というものさしでアメリカンフットボールチームの運営を捉えた場合、企業が撤退という選択肢を選んでも、決して責められるものではないと思う。


 ▽自立目指すクラブチーム
 一度スポンサーの撤退を経験して、生まれ変わったクラブチームはたくましい。オービックやノジマ相模原は、地域に密着してスポンサー料以外の収入基盤を少しでも確立しようと取り組んでいる。さらに地域に根ざしたフットボールの普及活動にも積極的だ。来季以降、仮に鹿島がクラブチームとして再出発した場合、大いに参考にするべきだろう。


 ▽チームの未来、切り開けるか
 17日に東京都内で開催されたパールボウルトーナメントの記者発表会で、森HCは力強く語った。「われわれは被害者だとは考えていない。チームが自立するために親離れする、巣立ちをする時」。RBの丸田泰裕も「日本一を目指すということについては、例年と何も変わりない」と、今季への意気込みを見せた。鹿島の初戦は5月12日。順当にいけばトーナメント準々決勝でIBMと対戦することになる。新たなスポンサーを獲得するために、勝ち続けてアピールすることは大きな意味を持つ。強豪チームが存続をかけた取り組みに注目したい。

【写真】社会人選手権、タッチダウンを決める鹿島のRB丸田=12年、東京ドーム