2012年9月、日本のアメリカンフットボール関係者にとっては少なからずショックな出来事が起きた。NFLの日本法人であるNFLJAPAN株式会社の解散が発表されたのだ。16年間にわたって代表を務め、現在はNFLの日本コンサルタントとして活動する町田光さん(56)に、これまでの取り組みと今後の展望について話を聞いた。

 ▽「町田リポート」とNFLJAPANの設立
 1995年、就職情報会社の新規事業部門に勤務していた町田さんに、特命が下された。「アメリカンフットボールがなぜ日本で人気が出ないか調べてほしい」。アメリカンフットボールの経験はおろか、見たこともない競技だったが、町田さんは1週間かけて研究しリポートを提出した。人間ドラマをスポーツに投影する日本人の国民性と、規律や合理性が前面に出るアメリカンフットボールの競技性に焦点を当てた内容だった。
 96年、NFLのインターナショナル部門が設立され、各国に拠点が設置される。日本では大手広告代理店を含む5社によるコンペが実施された。前年のリポートをふまえて、徹底的にNFLを日本の市場に落としこんだ町田さんの提案が採用され、後にNFLJAPANの代表に就任する。


 ▽ロンドンへの投資
 NFLのプレシーズンマッチであるアメリカンボウルの撤退などはあったが、NFLJAPANは今日まで着実に成長してきた。そもそも解散した理由は何だったのか。急成長を続ける米NFLと比較して、国際部門の成長は鈍い。オーナーたちに成功モデルを提示できなければ、縮小路線からは脱却できない。海外拠点で最大の利益を上げているカナダですら最盛期の8人から2人へと人員が減らされている状況だそうだ。そこでNFLが資源を一点に集中して勝負をかけた都市がロンドンだった。今季は2ゲームの開催が予定されていて、チケットはすでに完売という盛り上がりだ。ロンドンでの取り組みが成功するかどうかに、日本を含む他の海外拠点の命運がかかっている。


 ▽フラッグフットボールの飛躍
 明るい話題もある。近年、フラッグフットボールが日本の教育現場へ急速に普及しているという事実だ。フラッグ協会の専務理事も務める町田さんは「学校体育自体がスポーツ嫌いを作り、いじめと差別の温床になっている」と指摘する。そして、その状況を打破できるのが、フラッグだと断言する。NFLインターナショナルも、日本におけるフラッグ普及の可能性には大きな関心を示しており、投資を続けると約束しているそうだ。
 さらに米国で興味深い調査結果が発表されている。12歳までにアメリカンフットボールに何らかの形で関わった人は、そうでない人と比較して将来NFLのファンになる確率がかなり高まるというのだ。「フラッグが普及しても、簡単にはアメリカンフットボールの人気拡大には直結しない」と前置きした上で、「学校でフラッグを体験した子どもたちに適切に働きかければ、道は開けてくる」と語る。


 ▽火を絶やさぬために
 昨年、NFLJAPANの解散を伝えるため、テレビ局にあいさつ回りをすると、プロデューサーらの反応はみな同じだったそうだ。「町田さんたちの分も自分たちが頑張らないと」。実際に昨シーズンはCS放送を中心にNFLの中継数が前年よりも増加した。町田さん自身もこのまま撤退する気は毛頭ない。「法人の形態は変わるが、必ず事業を継続し拡大させる」。人も社会も多様化する現在の日本で、アメリカンフットボールは間違いなくニーズのある競技だと町田さんは確信している。(共同通信社 松元竜太郎)

【写真】「リエゾンオフィス」の設立を計画しているNFL日本コンサルタントの町田さん=NFLJAPANオフィス