Xリーグセカンドステージの最終節、過去に何度も名勝負を繰り広げてきた鹿島と富士通が11月18日に横浜スタジアムで対戦した。試合は後半に突き放した鹿島が27-15で制し、Cブロックの1位となった。試合後に行われた抽選の結果、敗れた富士通もワイルドカードでのファイナルステージ進出が決まった。両チームは日本社会人選手権(ジャパンエックスボウル)進出をかけて、12月2日に横浜スタジアムで再び対戦する。


 ▽K青木の覚悟
 実力がきっ抗するチーム同士の対戦では、キックの重要性が増す。キックオフを待つフィールドで、2人のキッカーの戦いはすでに始まっていた。横浜スタジアムの人口芝を確かめるようにルーティンをこなす鹿島の青木大介に対して、50ヤード近い長距離のキックを淡々と決めていく富士通の西村豪哲。日本を代表する2人の「レフティー」の競演が迫っていた。
 試合開始早々にめぐってきた鹿島のFGトライでアクシデントが起きる。入念に確認していた芝の切れ目に青木の軸足がひっかかり転倒する。さらに、前半終了間際の29ヤードのトライは「1本目の残像が残っていた」そうで、いわゆる「置きにいった」キックとなった。かろうじて成功したが、クロスバーを越えるのがやっとで、本来のキックとは程遠いものだった。
 アメリカンフットボールのFGキックはスナッパー、ホルダー、キッカーが三位一体で織りなすとても繊細な作業だ。固定されたボールを自分の間合いで蹴ることのできるラグビーのプレースキックとは大きく異なる。スナッパーが出したボールをホルダーが固定してキッカーが蹴る。一連の動作の中で少しでもタイミングが狂えばキックは成功しない。そして、一度キックのリズムが狂うとそれを取り戻すことは容易ではない。しかし、後半の29ヤードのトライを青木はいとも簡単に決めてみせた。きれいな放物線を描いたキックは、前半のそれとは比較にならなかった。青木は言う。「ハーフタイムでリセットした。過去2年、プレーオフでオービックに敗れた責任は自分にある。絶対に試合を壊すわけにはいかなかった」。腰のヘルニアに苦しんだ日本代表キッカーが、一回り成長して戻ってきた。
 この後、青木の出番は回ってこなかった。第4クオーター、オフェンスがロングドライブを完結させて、2本のTDを奪ったからだ。一方、最長48ヤードを含む5本のFGを全て成功させた西村のキックは勝利には結び付かなかった。


 ▽覚醒した未完の大器
 2009年、米国の名門ノートルダム大学OBと日本代表の親善試合に、フットボールでは無名の日本福祉大学から将来性を買われて1人の選手が選ばれた。富士通のLB竹内修平だ。昨年富士通に加入して以来、今春まで試合出場経験はほとんど無かったが、オービック、鹿島と強豪を相手に一気にその才能が開花した。オフェンスのプレーを1人で破壊することのできる強烈な突進力と、後方に下がってインターセプトを決める機動力を併せ持つ。この日はキックカバー、パントカバーでも猛烈な勢いでボールキャリアに襲いかかり、ゲームの流れを引き寄せた。「フットボールの理解度が高まったことで、圧倒的なフィジカルを生かせるようになった」。自身も日本を代表する身体能力の持ち主である、富士通のLB鈴木將一郎は、成長した後輩をこう評価した。


 ▽QB加藤のリーダーシップ
 前半、鹿島はQB加藤翔平が今季初のインターセプトを喫した。昨年も横浜スタジアムで行われたファイナルステージのオービック戦で初めてのインターセプトを許し、そのまま攻撃が機能しなかった。だが、今年は「強いチームにチャレンジすれば(インターセプトは)起きることもある。自分が崩れなければ、うちのオフェンスは大丈夫だと確信していた」と、その後も冷静にパスを通して攻撃をけん引した。
 攻撃の組み立ても良かった。RBへのパスなどを効果的に使って相手に的を絞らせず、試合を決定付ける第4クオーターのTDドライブは16プレーで9分近くの時間を消費した。「昨年のことは覚えていたが、信頼していた。コーチ陣のプレーコールも含めていい攻撃を展開してくれた」。鹿島の森清之ヘッドコーチは若き司令塔への信頼を深めていた。

【写真】キックの前に集中を高める鹿島のK青木=18日、横浜スタジアム