台風接近を告げる強風が吹き荒れる中、2年連続日本一のオービックに米国人QBケビン・クラフトを擁するIBMが挑んだ注目の一戦が9月30日、川崎球場で行われた。試合は、オービックが攻守でビッグプレーを連発して流れを引き寄せ、35-21で快勝。IBMは後半、二つのターンオーバーを奪う守備の健闘とパスで反撃したが、前半のリードをはね返すことはできなかった。


 ▽クラフトVSビーティー
 今季のXリーグの話題は、クラフトに集中している。米カレッジフットボールの強豪、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)出身のクラフトは専門誌だけでなく、複数の全国紙やスポーツ紙がその活躍をとりあげるほどだ。オービックにはそんなクラフトに並々ならぬ闘志を燃やす選手がいた。米国ではUCLAと同じリーグに所属する、名門コロラド大出身のDLバイロン・ビーティー・ジュニアだ。ビーティーは、試合開始からエンジン全開。猛烈なラッシュでQBに襲いかかったかと思えば、次のプレーでは俊敏な動きでパス守備に下がる。フィールドを縦横無尽に動き回り、QBサック、パスカット、インターセプトを決めた。彼の存在そのものがオービックの守備戦術といえるほどだった。試合後、オービックの大橋誠ヘッドコーチ(HC)は「彼(ビーティー)をもっと動かすこともできたが、役割を制限して集中してもらった」と語り、その潜在能力がまだ底を見せていないことを明かした。
 ビーティーを見ていて最も印象に残ったのが、決してプレーを途中でやめないことだ。笛が鳴るまで全力でプレーするという、あまりにも当たり前のことができる選手は実は少ない。経験を積めば積むほど、体力のペース配分を考えたり、プレーの先を予測したりしてしまうからだ。188センチ、109キロの運動神経の塊が、常に100%でプレーしていた。


 ▽進化したIBMオフェンス
 序盤の大量失点で試合を決められたIBMだが、進化した攻撃の片りんも見せた。特にクラフトとWR小川道洋のパスのコンビネーションは、今まで日本ではあまり目にしたことのないレベルにまで高まってきている。後半のオービックの失点には守備メンバーの変更とメンタル的な要素が少なからず作用しているが、小川に決めた針の穴を通すようなパスがコンスタントに投げられれば、どのチームもそう簡単には止められないだろう。


 ▽主将古庄の読みと反応
 ビーティーの活躍の影に隠れるかたちとなったが、主将のLB古庄直樹の活躍も見逃せない。元々DBとしてもプレーできるアスリートだが、この日はIBMのパス攻撃に対する読みと反応が抜群だった。「受け身になったらやられるので、思い切り狙っていった」そうで、勝負どころでIBMのプレーをハードタックルでことごとくつぶした。
 終わってみればスコア以上にオービックの圧倒的な強さが際立った試合だった。それでもオービックの大橋HCは試合後のハドルで「日本一になるのはそんなに簡単なことではない」と、後半ミスが重なり失速したチームを引き締めていた。

【写真】IBMのブロッカーを飛び越えて、QBクラフトに襲いかかるオービック・DLビーティー・ジュニア(右)=撮影 Yosei Kozano