胴上げを撮影するのは難しい。日本のプロ野球で優勝時の胴上げが、きれいに撮影できるのは、カメラマンのカメラ席からの飛び出しが規制されていて、胴上げの周囲に近づけないからだ。


 アメリカンフットボールでは、カメラマンが胴上げの周囲を取り囲む。上げる側の選手が大きく力も強いため、胴上げされる側がより高く上がる。
 少し離れたところで脚立に乗って上から撮影すればうまく捉えることができるのだが、私の場合は機材の量が多く、脚立を持ち込む余裕がない。


 結果、他の人たちと一緒になって周囲を取り囲み、腕を目いっぱい伸ばして広角レンズ付きカメラを頭上に掲げて、ノーファインダー撮影(被写体をファインダーの中で確認せず撮影)をすることが多い。


 ノーファインダーの胴上げ撮影には、コツがある。闇雲に腕を伸ばしてシャッターを切ってもうまく写らない。被写体を見ずに、カメラの底を見ながら胴上げされている人とカメラの位置関係を見定めながら調整するやり方だ。
 今はデジタルカメラなので、背面の液晶を見ながら撮影することもできるが、フィルムカメラの頃から培ったこの基本をきっちり守ると、時としてタイミング良く撮影することができる。


 過去のノーファインダー胴上げで、最もうまく撮影できたのが2006年6月の東日本社会人選手権パールボウルで優勝した、富士通フロンティア-ズの藤田智ヘッドコーチの写真だった。


 その後、息子が富士通にフラッグフットボールチームでお世話になることになった。藤田さんの娘さんも同じチームで、送り迎えの時に何度か立ち話をする機会があった。
 胴上げの写真をプレゼントしようかとも考えたが、「パールボウルではなく、ジャパンエックスボウル(JXB)やライスボウルで勝ったときの写真にしよう」と思い直した。
 その機会はすぐにでも訪れると予想した。当時の富士通は戦力も含めたチーム全体が上り調子だったからだ。


 実際にはその機会がなかなか来なかった。富士通は2007、09、11、13年と、1年おきにJXBに出場しながら松下電工(現パナソニック)、鹿島(現LIXIL)、オービックに負け続けた。
 富士通が初優勝を成し遂げた14年のJXBでは、宙に舞う藤田HCをうまく捉えたが個人的にはアングルに不満があった。ライスボウルでは位置取りが悪く、靴の裏を写す結果となった。


 今年のJXBは、富士通がオービックシーガルズを16-3で破った。ディフェンスのオービックの十八番(おはこ)を奪う快勝だった。
 しかし、私が撮影した藤田HCの胴上げは、アングルはよかったのだが顔がよく見えていない不満足な出来だった。


 ゲームから3日たった15日木曜日の夜、偶然に藤田さんとお話しをする機会があった。
 1月3日の日本選手権(ライスボウル)では、胴上げの写真を撮影する機会を、ぜひ作ってほしいとお願いした。10年前の6月を超えるショットを、今度こそものにしたいと考えている。

【写真】2006年のパールボウルで優勝して胴上げされる富士通の藤田HC=撮影:Yosei Kozano