日本でも米国でも、アメリカンフットボールのシーズンが始まった。開幕週で見た、いくつかのプレーについて書いてみた。


 ▽ギャンブル
 Xリーグの開幕週は、オービック・シーガルズとノジマ相模原ライズの対戦が注目を集めた。話題の主はノジマ相模原のQBデビン・ガードナーだ。全米屈指の名門ミシガン大学で3年間エースQBだった彼は、今季加入の新外国人選手だけでなく、過去も合わせてXリーグでプレーした外国人選手の中では、群を抜く知名度と実績を持つ。
 一緒に入団した、ミシガン大でチームメートだったWRジェレミー・ギャロンは、ガードナーとのホットラインで、パス獲得距離の大学記録を作った。


 開幕戦の詳細については触れない。二人が見せたプレーの中で、ここで取り上げたいのは、フォース(第4)ダウンのギャンブルだ。
 2回のギャンブルともに、ノジマ相模原はノーハドルからオフェンスを開始、ガードナーからギャロンにショートパスが通ってファーストダウンを更新した。


 日本のフットボールでは、フォースダウンのギャンブルは多くの場合、オフェンスのタイムアウトとサイドラインと選手の話し合いを経て決定される。原則としてショートヤーデージを確実に取り切るプレーだが、意表を突いてパスに出る場合もある。いずれにせよ、いったん「水入り」で間を取るのが当たり前だ。


 ギャンブルするシチュエーションは、オフェンスの中で決めごとにできると思う。ギャンブルは多くの場合、試合展開とボールポゼッションで決まってくる。
 ギャンブルするかしないかは、観戦しているファンでもわかる場合が多い。タイムアウトを取るのは、やるかやらないかを決めるというよりは、オフェンスの次のプレーの詳細を確認するためという色合いも強い。日本人の感性として、ミスなどないように後悔の残らないように、という側面を感じる。


 しかし、それは同時に攻め込まれているディフェンスにも落ち着かせて、決めごとを確認させる機会を与えることになる。
 米のNCAAフットボールでは、サードダウン残り1ヤードや、フォースダウンギャンブルで、ノーハドルのクイックスタートをしばしば目にする。ディフェンスは対応できずに、ファーストダウンを奪われる。特別なプレーではなく、オレゴン大に代表されるハリーアップオフェンスでは常套手段の一つだ。
 その常套手段を、ごく普通に決めたという印象があった。


 この試合、オービックのディフェンスはガードナーを激しくマークし、ノジマ相模原オフェンスのサードダウンコンバージョンを2/10と封じ込めたが、フォースダウンでは2/3だった。
 ギャンブル唯一の失敗はゲーム最終盤、ガードナーの負傷欠場で代わったQB荒木裕一朗が取れなかったものだった。


 同じ開幕週の東京ガス・クリエイターズ対明治安田ペンタオーシャンパイレーツ戦でも、ギャンブルプレーが勝敗を分けた。


 東京ガスが3―7とリードを許して迎えた第4クオーター最初のプレー、フォースダウン&1ヤードで、ボールの位置は敵陣の34ヤードと、フィールドゴールにはちょっと遠かった。
 ギャンブルに出た東京ガスはQB徳島秀一のキーププレー。これがぴたりと決まった。走力ではXリーグのQB中でも傑出した徳島だ。エンドゾーンまで34ヤードを走り切って、ファーストダウンを更新どころか、逆転のタッチダウン(TD)となった。
 東京ガスはこの後もTDを重ね24―10で快勝したが、このギャンブルが試合の流れを大きく変えたと言っていい。


 プレーコールはオプションだった。明治安田の右DEをブロックせずに浮かせて、徳島と左外を走るRB尾花史高とで、2対1の状況を作り出したうえで、徳島が中に切れ込んで独走した。
 試合の流れを変えたギャンブルのコール。徳島は「うちがショートヤーデージで一番得意とするプレー。DEがRBへ視線を送ったのでピッチせずに自分で持ち込んだ。本来は1ヤードを取るプレーだが、最高の形でTDにできた」と話した。


 ▽強豪対決は凡戦と熱戦
 今季の米NCAAフットボールは8月27日にオーストラリアでカリフォルニア大対ハワイ大戦で開幕したが、実質的な開幕週は9月第1週の週末となった。
 ビッグゲームが目白押しの中で特に注目されたのが、アラバマ大対南カリフォルニア大(USC)と、テキサス大対ノートルダム大だ。甲乙つけがたい歴史と伝統を持つ強豪同士の2試合となったが、内容はまったく違う形となった。


 9月3日、「中立地」のNFLダラス・カウボーイズ本拠地AT&Tスタジアムで開催という、ボウルゲーム並みの一戦となったアラバマ大とUSCの一戦。昨季ハイズマン賞のRBデリック・ヘンリーや、OLライアン・ケリー、LBレジー・ラグランドなど、ドラフト指名だけで7人の選手がNFL入りしたアラバマ大だったが、分厚い戦力と堅固なフットボールは、影響を受けなかった。シーズン前ランキング1位の下馬評通りに、同20位のUSCを52―6と粉砕した。


 アラバマ大は、1年生QBのジェイレン・ハーツが中心となったパスでも、RBヘンリーが抜けたランでも弱みを見せなかった。
 オフェンスコーディネーターは、USCのヘッドコーチ(HC)を3年前に解雇された41歳のレーン・キフィン。NFLのオークランド・レイダーズやテネシー大などでHCに就きながら解雇や喧嘩別れが続く「問題児」だが、コーチとしての手腕は高い。古巣に強烈なしっぺ返しをした形だ。


 NFLがまだ始まっていないため、9月4日の日曜日開催となったテキサス大対ノートルダム大の一戦では、滅多に見ることのできないプレーが勝負所で飛び出した。


 テキサス大が31―35で迎えた第4クオーター終盤に、RBデオンタ・フォアマンのTDランで逆転した。この時点で37―35。ポイントアフタータッチダウン(PAT)を決めれば3点差となる。
 しかし、そのPATをノートルダム大がブロック、ボールを奪ったDBショーン・クロフォードが反対側のエンドゾーンまで独走して2点を奪ったのだ。


 現地実況放送でアナウンサーが「アー ユー キディング ミー(俺をからかっているのか)?」と絶叫するほどのビッグプレーで37―37となり、延長タイブレークにもつれ込んだ。
 最終的にはタイブレーク2回裏に、テキサス大がQBスニークでTDを奪って50―47で勝利したが、全米が興奮したゲームになったのではないか。


 名門ながら近年低迷が続くテキサス大は、開幕前ランキングでは全米25位にも入らない低評価だったが、ランキング10位のノートルダム大をホームで仕留めたことで、今季は上昇気流に乗る可能性もある。


 現地9月8日にはNFLも開幕する。デンバー・ブロンコス対カロライナ・パンサーズという、昨季の第50回スーパーボウルの「再戦」だ。フットボールファンとしては、寝る間もないうれしい悲鳴を上げる日々が続く。

【写真】オービックDLジャクソン、ビーティージュニアに挟まれながらパスを決めるノジマ相模原QBガードナー=撮影:Yosei Kozano