3月の半ばに、XリーグのLIXILディアーズの眞中久仁枝マネジャーから、4月24日(日)に開催する「ディアーズファンフェスタ2016」(東京都調布市のディアーズ柴崎グラウンド)の案内をいただいた。今年で12回目の開催という。このファンフェスタ、個人的な思い出がある。


 10年前、2006年の好天の5月に、当時小学校3年生だった息子を、鹿島ディアーズのファンフェスタに連れ出した。
 他の社会人2チームとの合同の開催だった。その年齢になるまで、スポーツは見るのもやるのも嫌いという息子に、とっかかりを与えたいと思ったからだ。「バーベキューで肉が腹いっぱい食べられるぞ」との釣り文句が奏功した。


 会場となった柴崎グラウンドには「NFLエクスペリエンス」という、フットボールを疑似体験できるアトラクションが一部設置してあった。
 しかし、アメリカンフットボールを知っている人間がやるから楽しいので、息子にとってはあまり面白くなかったようだ。一通りやった後、「もう帰ろう」と言い出した。


 なだめて木陰で休んでいたところ、巨体のフットボール選手が声をかけてくれた。合同開催したチーム・ロックブルのOLだった間島公介さんという方が「坊や、フラッグフットボールやろうよ」と誘いに来てくれたのだ。
 渋々腰を上げた息子だったが、最初のプレーでボールを持たせてもらうとゴール直前まで快走した。それがフットボールをやるきっかけになった。


 その年の夏が終わる頃、息子は富士通のチーム「FFFC キディ・フロンティアーズ」に入った。ライバルチームとなったが、ディアーズには良い思い出があったようだ。
 川崎球場では鹿島の試合も熱心に見た。応援席でタッチダウンクイズに応募して、RB丸田泰裕選手の先制TDを当て、ディアーズのTシャツをもらったこともあった。我が家では「ディアーズのスパイだな」などとからかったが、本人は気に入っているようだった。


 小6までフラッグを続けた息子は、高校でアメフットを始めOLとなった。試合のときは「力が出る気がする」と言って、そのTシャツを一番下に着た。
 息子が見ていた時代、ディアーズOL陣はXリーグ最強を誇っていた。右のガードの控えで、昨年春の大会で引退した。
 最後の試合は出場せずにサイドラインから大声を張り上げた。富士通のフラッグフット時代、高校時代も通じて、ボールを持って一番長く走ったのが、あのファンフェスタの最初のランプレーだった。


 4月8日にベースボールマガジン社から発売された雑誌「アメリカンフットボール・マガジン2016SPRING」号は、『アメフットやろうよ』がコンセプトだ。
 私も、京都大学ギャングスターズを率いた名将で、今季から立教大学ラッシャーズのシニアアドバイザーに就任した水野彌一さん、今春早稲田大学ビッグベアーズからIBMビッグブルーに入った話題のLBケビン・コグラン選手にインタビューしたが、最後に新たにアメフットを始めようとする人たちへのメッセージをお願いした。


 水野さんからは「人間は、自分が成長したり変化したりするものほど楽しいことはないのです」と語り、「アメフットならそれが如実に体験できる。やれば変わる。変わったらもっと面白くなるのです」と、若者の背中を押す言葉をいただいた。


 コグラン選手は「アメフットは、いろいろなポジションがあってどこかで輝くことができる場がある」と話し、「選手だけでなくスタッフやマネジャーでも貢献ができるスポーツです。男女を問わず、充実した生活が送れる」と誘ってくれた。


 日本では、高校から競技を始める選手が普通で、大学から始める選手も依然として多い。だが、少子化が定着した世の中では、もっと子どもの時代に、純粋にアメフットは楽しい、面白いという体験をすることも大切だ。


 長年にわたりチームを支えてきた眞中さんは、森清之ヘッドコーチの信頼も厚く、昨年は日本代表チームの統括マネジャーを務めた。
 そんな眞中さんが、10年以上にわたって心を砕いて開催し続けてきたのがこのイベントだ。スタッフが入れ替わり、チームの運営が変わる中、人知れぬ労苦があったと推察する。少しでも多くの子どもたちがこのイベントに参加して、アメフットの楽しさに触れてくれればと思う。


 選手とのゲーム、フラッグフットボール体験やチア教室、さらに森ヘッドコーチの作る「カレー」や、鈴木修平主将の「ハヤシライス」なども楽しめるという。


 もっとも、10年前のあの日が息子には楽しい思い出だったかは分からない。私が夕刻から仕事だったため、肝心のバーベキューが始まる前に柴崎グラウンドを後にしなければならなかった。
 帰路の電車の中、ひどく文句を言われたのを覚えている。


「ディアーズファンフェスタ2016 」
http://www.deers.jp/blog/festa/2016●日時 4月24日(日) 11時開始(10時30分から受付)
    雨天時は4月29日(金・祝)に順延
●会場 鹿島建設柴崎グラウンド(東京都調布市 京王線柴崎駅より徒歩6分)

【写真】昨年夏の世界選手権に出場した日本代表でもマネジャーとしてチームを支えた眞中さん(右から2人目)=撮影:Yosei Kozano