桜の花が散るこの時期になって、昨シーズンを振り返る愚をお許しいただきたい。1月3日、パナソニック・インパルスと立命館大学パンサーズが日本一を争ったライスボウルについてだ。


 第4クオーターに入って、一時は12点まで開いた差を、12―15と3点差まで詰めてきた立命大オフェンスだが、決まれば同点のフィールドゴール(FG)を失敗した。
 しかし、パナソニックはオフェンスが手詰まりとなっていた。ターンオーバーを起こすことだけは避けたいが故、保守的なプレーコールを立命大ディフェンスに完全に見透かされていた。


 RBベンジャミン・デュプリーの外のランは2ヤードのロスとなった。QB高田鉄男のオプションキープは7ヤードを進んだが、サードダウンのパスはお辞儀をして失敗した。あっけなく3&アウトでパントとなった。


 佐伯眞太郎のパントは立命大陣40ヤードにいったん落ちたが逆バウンドになって戻って来た。残り5分余りからの立命大オフェンス、ボールオンは44ヤードとほぼ中央付近とポジションがいい。


 パナソニックディフェンスはこの時間帯からは、3点差を守りに入ると予想した。元来がディフェンスとボールコントロールのチームだ。さらに同じXリーグであっても、シュートアウトゲームの多い東、中地区とは違って、西は比較的に攻撃力の乏しいチームが多い。
 サイドラインのゲームメーキングはともかく、選手の心中に守り切って勝つ気持ちがあっておかしくない。西村のパワフルなランをケアするためにDBは早めに上がってくる。早いダウンで縦にストレッチするロングパスが来ると思った。


 第1ダウンはRB西村七斗に持たせた中央のランでほぼゲインがなかった。第3ダウンに追い込まれてからのパスは、2年生のQB西山雄斗にプレッシャーがかかる。次のプレーでパスを、それもビッグプレーを狙うと思った。


 西山はRB西村にフェイクを入れてのプレーアクションパスに出た。西山がボールを投げるのを撮影した後に、余裕を持ってレンズをダウンフィールドに振った。
 立命の快足レシーバー猪熊星也がパナソニックのDB辻篤志をブレークして走り込むのが見え、その胸にすっぽりボールが収まった。タッチダウンだ。そう思いながらシャッターを切り続けた。トライフォーポイントも決まって立命大が19―15と逆転した。

 決まってみればシンプルなこのプレーだが、ピントを微妙にぼかしていた。大きくぼけていればすぐにわかる。
 被写体である猪熊を捉え直してピントを合わせるのだが、ファインダーの中では合っているように見えた。プレー後、デジタルカメラ背面の液晶画面で確認すると、ピントの合っている写真は2コマしかなかった。


 逆転TDを撮り損なう失態だ。予期せぬプレーならまだしも、来るとわかっていたパスだっただけに、余計に落胆があった。
 しかし後に引きずらないことを心がけた。3年前のライスボウルでも、関学大がいったん逆転しながら、さらに2度、3度と山場が訪れて、最後はオービックが逆転勝ちしていた。ビッグゲームとはそういうものだ。


 「自分が今できることしかコントロールできない」「起きてしまったことにとらわれずに、今から起きることに集中する」。取材を続ける中で、幾人ものヘッドコーチから何度も聞いた言葉だ。その通りに集中した。


 とはいっても、モメンタムは完全に立命大ディフェンスにあった。FGでは駄目で、TDが必要な4点差が重くのしかかっていた。
 パナソニックオフェンスは、一度は何とか第1ダウンを更新したが、再び第4ダウン20ヤードに追い込まれた。残りは1分半ほどで、今度こそ絶体絶命かに見えた。


 QB高田からレシーバーにパスが通った。20ヤードには短いと感じた瞬間、左から青いジャージーの長身選手が走り込んできたのに気がついた。ラテラルパス、そして独走。WR小山泰史による逆転のTDをエンドゾーンまで撮り切ることができた。


 立命大が勝つと読んで、立命ディフェンスを撮影する側に回ろうとしなかったのはなぜかと問われれば、普段から撮影する社会人フットボール、Xリーグへの肩入れと、大学時代から折に触れて撮影してきた、日本のエースQBの勝負強さを信じたからだと思う。
 サイドラインのガッツあるプレーコールと、それを土壇場で見事にやり切った、高田率いるパナソニックオフェンスの素晴らしい男たちに心からお礼を言いたい。


 プロとしていえば、猪熊のタッチダウンを撮影できなかったミスは帳消しにはならない。これはその後でどんなにいい写真を撮ろうが関係ない。
 ただ、ミスを引きずらずに次に集中できた。そこは自分で納得がいった。シーズンの最後に少しは進歩ができたのかと思う。


 セレモニーも終わった後、ライスボウルを最後に引退するパナソニックDT脇坂康生に話を聞いた。 脇坂は花道となった試合について「いつまでたっても失敗するなあ。30年もやってきて、まだ試合でこんな判断ミスをするんか。今日もそんなことを感じながらやっていました」と、高ぶることなく淡々と振り返った。


 その一語一語がほんとうに心に染みた。

【写真】第4クオーター13分、パナソニックのQB高田からWR本多を経てWR小山へパスが渡ったスペシャルプレーで逆転TD=撮影:Yosei Kozano