12月6日、関学大と日大が対戦する「TOKYO BOWL」の会場、富士通スタジアム川崎へ向かう車中、スマートフォンで現地土曜日の米NCAAフットボールの結果を確認した。
 カレッジシーズンも大詰め、各カンファレンスの優勝戦の中で、個人的に最も関心があったのは、ビッグ10カンファレンスのミシガン州立大対アイオワ大の一戦だった。


 ここまで12戦全勝のアイオワ大が全米5位、11勝1敗のミシガン州立大が同6位とランキングが近接している。しかしそれ以上に、この両校は「流行に逆行した」古典的な「力対力」のフットボールを展開するチーム同士だった。


 現在のNCAAフットボールは、昨シーズンまでのオレゴン大に象徴される、スプレッドオフェンスによるノーハドル、高速プレー、高得点オフェンスが幅を利かせている。
 オハイオ州立大もスプレッドオフェンスを導入して昨年は全米王者になった。ベイラー大やテキサスクリスチャン大など、一昔前は強豪とは言えなかった大学が台頭してきたのも、それが理由の一つだ。


 しかし、攻守のラインを鍛え上げ、ライン戦を制し、強いディフェンスとランニングゲームで勝つ、武骨な昔ながらのスタイルを守るチームもある。ミシガン州立大とアイオワ大はその代表格だ。


 そもそも、ヘッドコーチ(HC)が似通っていた。アイオワ大のカーク・フェレンツHCは今年60歳。アイオワ大を率いて16年、10勝以上のシーズンが5回。フィジカルに強いフットボールがモットーで、NFLドラフトでは、毎年のようにアイオワ大出身の大型ラインメンが上位指名されていた。


 ミシガン州立大のマーク・ダントニオHCは今年59歳で就任9年目。強い守備、強いランでチームを盛り立て、過去5シーズンでビッグテン優勝2回。ミシガン大、オハイオ州立大という2大名門を相手に真っ向勝負で後に引かない。今季も劇的な勝利で2校を撃破しここまでたどり着いた。


 フェレンツ、ダントニオ両HCは、年俸はともに360万ドル(4億3千800万円)前後と言われている。NFLからHCとして引き抜きのうわさも絶えない。
 そして、何よりも共通するのが顔だ。といって顔立ちが似ているわけではない。笑顔などどこにもなく、いつも眉間にしわを寄せ、口をへの字に曲げている、厳格な親父そのものという表情が同じなのだ。

 電車を降りる前に見たアイオワ大―ミシガン州立大戦のスコアは、第3クオーター途中で6対6。両校の「らしい戦い」が想像できた。その後の結果は封印して、TOKYO BOWLの「赤対青」対決に集中した。


 日大と関学大が、秋季に甲子園ボウル以外で対戦するのは初めて。観客席はほぼ満席だった。日大が第1クオーターにフィールドゴール(FG)で先制するが、徐々に関学大オフェンスがライン戦を制し始めた。
 第2クオーター14分29秒にRB橋本誠司のタッチダウン(TD)ラン、第3クオーター、QB伊豆充浩からパスを受けたRB野々垣亮佑がTD。一方の日大はランを止められ苦戦、5ドライブ連続でパントとなるなど攻め手を欠く状態だった。地力に勝る関学大がこのまま押し切るかに見えた。


 しかし、第4クオーター、ゲームは大きく動く。残り13分を切ったところで、関学大のQB伊豆が、自陣内でこの日4本目となる痛恨のインターセプト。日大はこのチャンスに、QB西澤凌介が、自らのランでTDに結び付けた。
 関学大は次のオフェンス、FGで3点を追加するが、残り6分で8点差を追う日大の勢いは止まらなかった。


 後半ほとんど決まっていなかったQB西澤のパスが連続で決まった。その3本目が1年生WR吉野洋哲へのTDとなった。
 トライフォーポイントの2点コンバージョン、西澤は右へロールすると、エンドゾーンへ走り込んでいたRB高口和起へのパスを決めた。残り1分15秒で、日大はついに同点に追いついた。


 この後のキックオフ、日大はオンサイドキックを狙った。延長タイブレークがないこの試合、井上佳主将は「引き分けはまったく考えていなかった」という。このボールは、関学大が抑えることに成功、日大陣46ヤードからの好位置を得た。
 しかし、関学大はボールを進めることができず、さらに時間も24秒しか費やすことができなかった。
 残り51秒から、日大はQB西澤のスクランブルやパスで22ヤードを進み、キッカー有輪七海が49ヤードのFGを狙うが失敗する。


 残り9秒、関学大のQB伊豆が投じた最後のパスを奪ったのが、日大DBブロンソン・ビーティーだった。この日2本目のインターセプトを決めた、Xリーグ、オービックDLバイロン・ビーティー・ジュニアの弟は、エンドゾーンを目指し猛然と走り出した。
 残り時間はゼロ。関学大の選手たちが必死で追う。行く手をふさがれたビーティーからラテラルパスを投げられた日大の選手がタックルされ、試合は終わった。17-17。1955年、84年の甲子園ボウルに次ぐ3度目の引き分けとなった。


 双方ともにプレーにミスが多く、詰めの甘さも目立ったのは確かだ。しかし、勝利のために力を振り絞ったライバルの戦いは、最後の最後まで見ごたえ十分だった。


 帰宅する車内で再びスマホを取り出し、アイオワ大対ミシガン州立大の結果を確認した。16―13でミシガン州立大が死闘を制し、全米王座決定の4校プレーオフに進出を決めていた。帰宅後、映像を見た。


 このゲームも第4クオーターにドラマがあった。9―6とミシガン州立大のリードで迎えた第4クオーター最初のプレー。アイオワ大QB、CJベザードがプレーアクションから思い切り腕を振った。ポストへロングパス、落下地点にはWRテボーン・スミスがいた。
 スミスはマンツーマンのミシガン州立大DBを振り切ると、エンドゾーンへ。現地実況のアナウンサーの声は完全に裏返っていた。13―9。この試合初めてのTDでアイオワ大がリードした。


 その後、残り9分31秒からの攻撃、4点差を追うミシガン州立大が真骨頂ともいうべきドライブを見せた。
 来年のドラフト候補と目される好QBコナー・クックが、3プレー目に意表を突くショベルパス、5プレー目にはスプリットエンドに入るワイルドキャット隊形まで繰り出した。
 OLがホールディングの反則を取られ、10ヤードの罰退となるが、6プレー目に懲りることなく再びワイルドキャット、リバースプレーで前進する。


 9プレー目、WRアーロン・バーブリッジがつま先だけを残すサーカスキャッチでファーストダウンと思いきや、直前にラインを踏むミスでアウトオブバウンズに。
 10プレー目、クックは再びバーブリッジにパス、レシーブ直後に激しいヒットでサンドイッチされたが、前プレーの失敗があったバーブリッジは、決してボールを離さなかった。ミシガン州立大の新記録となるシーズン80回目のキャッチだった。


 16プレー目、ここまで70ヤードを進んできたミシガン州立大は、ダブルTEでIフォーメーション、アイオワ大ディフェンスはボックスに9人を集め、力対力の勝負だ。
 このプレーでも3ヤードの前進を許したアイオワ大は、たまらずにタイムアウトを取る。エンドゾーンまで10ヤード。18プレー目、アイオワ大はランを止めてフォースダウン残り2ヤードとするが、4点差で負けている以上、ギャンブルしかないミシガン州立大は19プレー目にQBクックのランでファーストダウンを奪う。


 21プレー目。アイオワ大がゴール前1ヤードを死守した。22プレー目を前に、ミシガン州立大は、後半初めてのタイムアウトを取った。残り33秒、ゴールまで1ヤード。
 ミシガン州立大はレシーバーを下げて、控えのOLを入れた。もうランしかない。ミシガン州立大は1年生RBのLJスコットが右を突いた。アイオワLBフィッシャーとDBキングが反応よく上がってきて、ゴール前でしっかりタックル、ボールは止まったかに見えた。


 しかしスコットは渾身の力でセカンドエフォート、右手を伸ばしてボールをエンドゾーンの中に叩き付けた。ミシガン州立大のビッグ10優勝、そして全米プレーオフ進出を決める逆転TDとなった。
 ダントニオHCはその瞬間でも、いつもの厳しい表情をまったく変えることはなかった。残り時間は27秒となっていた。


 ミシガン州立大の決勝ドライブは82ヤードを22プレー、9分4秒かけて進んだ。13プレーが3ヤード以下、サードダウンコンバージョンは5/6、フォースダウンは1/1だった。最終スコアは16―13だった。


 ミシガン州立大は近年、レビオン・ベル(現スティーラーズ)、ジェレミー・ラングフォード(現ベアーズ)といった、NFLでも活躍するRBを生んでいる。
 決勝TDのスコットは、スピードや敏捷性では先輩たちに劣るが、タフでパワフルな走りは一級品。将来が楽しみな逸材だ。


 第4クオーターの最後まで勝負が分からない好ゲームを、期せずして同じ日に堪能できた。日米4校の選手たちに感謝したい。


 今度の日曜日は甲子園ボウル、月曜日はジャパンXボウルだ。

【写真】残り27秒、逆転のTDを決めたミシガン州立大のRBスコット(AP=共同)