Xリーグセカンドステージの富士通フロンティアーズ対LIXILディアーズの一戦は、11月15日に横浜スタジアムで行われた。すでに準決勝進出を決めている富士通に対し、LIXILは勝たなければベスト4に残れない。
 米国人選手が在籍せず、戦力面で劣勢に立つLIXILが、自分たちのペースに何度も引き込もうと仕掛けたが、富士通が動じることなくそのもくろみをくじいた。そんな印象のゲームとなった。


 ▽ジョーカーを狙ったキック
 前半は、富士通が圧倒的にボールを進め、LIXILがしのぐ展開となった。5回のドライブで計250ヤード以上をゲイン、うち4回はLIXILゴール前10ヤード以内に侵入した富士通オフェンスを、第2クオーター12分過ぎまで13点に抑えたのは、ある程度LIXILサイドラインの思惑通りだったろう。


 しかし、LIXILオフェンスは4ドライブ中3回が「3&アウト」で、唯一65ヤード前進したシリーズでもフィールドゴール(FG)失敗に終わっていた。いくらディフェンスが耐えても、前半を無得点のままでは厳しい。


 「リターンでビッグプレーが欲しい」。そう考えた直後だった。キックオフのボールをエンドゾーンでキャッチしたLIXILのリターナー前田直輝がぐんぐん加速すると、密集の中を素晴らしいスピードで走り抜けた。
 前にいる富士通の選手はキッカー西村豪哲だけだ。前田は西村をあっさりかわすとそのままエンドゾーンンに走り込んだ。100ヤードのリターンTDだった。


 日本代表のWRとして世界選手権にも3回連続で出場した前田は、XリーグではWR木下典明(オービック)に次ぐビッグプレーメーカーで、LIXILの「ジョーカー」といっていい。
 特に横浜スタジアムのゲームには強い。昨年のオービック戦、今年10月のIBM戦と、前田が第2クオーター終盤に鮮やかなTDを決めて勝利への流れを作っている。


 しかしこの後の富士通は、キックオフの度に、あえて前田めがけてボールを蹴り込んだ。終始富士通がリードしていたとはいえ、大半は10点差の局面が続いたこの試合。前田がもう一度ビッグプレーを決めればわからなくなる。
 富士通のカバーチームは、LIXILの切り札に対し「やれるものなら、もう一度やってみろ」と真っ向勝負を挑んだ。
 前田は7回のリターンで218ヤードを獲得したが、TD後は最長で27ヤードのリターンにとどまった。


 富士通の藤田智ヘッドコーチ(HC)は、試合後「(相手の切り札を避ける)そういうキックの練習も必要かもしれない。しかしそれだけで試合に勝てるかと言えば違う」と話した。
 リターンTDされたのはカバーチームに何らかの理由というかミスがあったからで、「(前田に)完全にオーバーパワーされて決められたわけではない。カバーに修正できる部分があると思ったので、修正をかけた上で挑んだ」という。


 負けても準決勝は決まっている富士通だから可能だった戦術と見ることもできる。しかし、ビッグプレーを再び許して敗れれば、準決勝でLIXILともう一度戦うことになり、リスクが大きい。安易な選択ではなかった。
 藤田HCは「選手には、『絶対、俺が止めたる』と思ってほしい。だからそこだけは逃げずにいこう」と決めたそうだ。そしてカバーチームの選手たちは臆することなくそれに答えた。


 ▽勝負を決めたベテランDB
 この試合、富士通の主役はDB陣だった。第2クオーター、前田の100ヤードリターンTDで6点差に詰めながら、富士通に1分余の速攻TDを許し再び13点差とされたLIXIL。残り1分4秒からの前半最後のドライブで勝負に出た。
 意表を突くランプレーを繰り返した後、QB加藤翔平が、WR中川靖士に23ヤード、WR永川勝也に37ヤードのパスを続けて通し、ゴール前5ヤードまで攻め込んだ。


 残り時間は1秒。1プレーしかできない。FGトライか、TD狙いのプレーか。以前に「プレーかFGかで迷った場合は蹴ることにしている」と語ったLIXILの森清之HCだが、ここはプレーを選択する。
 ファーストダウンだがギャンブルだ。意外な判断にも思えたが、ここで点差を詰めなければ勝てないという決然たる意思表示に見えた。ボールがスナップされ、加藤のパスはエンドゾーンに。ジャンプしてキャッチしたのは富士通のDB石井悠貴だった。


 後半、LIXILのQB加藤のパスが決まるようになった。キープレーヤーは今季加入のTE吉田武蔵だ。昨年までパナソニックで活躍した吉田は、長いリーチを生かしてWR顔負けのシュアなキャッチを見せる。
 ファーストステージでは加藤とタイミングが合わず、ブロッキングTEとしての起用が多かったが、ここへ来て呼吸が合い始めたのだ。吉田は、ミドルパスのターゲットとなり、第4クオーター9分過ぎにはTDパスをキャッチし、再び差を10点に詰めた。
 LIXILは次のキックオフでオンサイドキックを成功させ再び攻撃権を得る。2ポゼッションの10点差とはいえ、残りは5分以上、タイムアウトも3回あった。LIXILのペースになりかけていた。

 この危機を救ったのが富士通のベテランDB樋田祥一だった。ポストに走り込んできたWR中川を狙った加藤のパスを、自分の守っていたエリアから前に上がってきた樋田がすれ違うように体を入れてキャッチした。インターセプト。
 LIXILはディフェンスは富士通の攻撃を必死に止めて攻撃権を取り戻したが、残り時間は2分あまりとなっていた。焦る加藤のパスを再び樋田がインターセプトした。試合は決まった。最終スコアは34-24だった。


 富士通が奪ったインターセプトは4本。藤田HCも「今日はディフェンス」と賞賛した。2本を決めた樋田は「1本目はディープを守るアサインメント。DLがランをしっかり止めてくれていたから、狙っていけた」という。
 アルリワン・アディヤミや、日本代表の石井ら能力の高い若手が多く「ベテランも刺激を受けて、ポジション全体がレベルアップしている」と胸を張った。
 次の準決勝で戦うオービックには、法大で同期だったQB菅原俊が先発に戻ってきている。「菅原とやる時が一番面白い。今から楽しみにしている」と次戦への闘志をのぞかせた。


 かつて、鹿島(現LIXIL)やオービックにはね返され続けた頃の富士通は、勝負所でミスのないように細心の注意を払って試合をしていた。繊細過ぎるように感じたこともある。
 今の富士通は違う。分厚い戦力だけでなく、王者になったことで選手もサイドラインも、メンタルの面でタフで強くなっている。次戦の準決勝、王者は挑戦者オービックにどんな戦いを見せるのだろうか。

【写真】第1Q、富士通DB石井がLIXILのWR鈴木をタックル=撮影:Yosei Kozano