日本社会人アメリカンフットボールXリーグのセカンドステージ「スーパー9」は10月31日、曇天の横浜スタジアムで、アサヒビール・シルバースター(中地区3位)対パナソニック・インパルス(西地区1位)の一戦から始まった。そして、1年ぶりに見るパナソニックは「強い」の一言だった。


 勝負の分かれ目を作り出したのはパナソニックディフェンスだった。最初は、第1クオーター12分過ぎ、7―7の同点の場面だった。
 アサヒビールの攻撃はサードダウンロング、4WR、1RBの隊形でTEはいない。パナソニックの4人のDLは、右のDEに新外国人のカールトン・ジョーンズ、インサイドに倉本卓哉と大ベテランの脇坂康生、そして左サイドにはデービッド・モトゥという布陣だ。


 DLがラッシュし、188センチ118キロのジョーンズと183センチ112キロの脇坂を、アサヒビールOLがダブルチームでブロックした。その結果、外のモトゥが完全にフリーとなり、猛烈なスピードで侵入。QBメイソン・ミルズはパスを投げ捨てる間もなくモトゥに捕まって振り回された。
 QBサックで11ヤードのロス。そしてフォースダウンで、アサヒビールはパントをブロックされた。相手陣25ヤードからの攻撃権を得たパナソニックはやすやすとRBベンジャミン・デュプリーがTDを決めた。
 

 次のターニングポイントもパナソニックDL陣が生んだ。いったんはミルズのパスによるTDでアサヒビールに同点とされるが、パナソニックはQB高田鉄男からWR本多皓二への45ヤードのロングパスで相手陣に攻め込むと、デュプリーのTDランで再び7点のリードを奪った。
 前半は残り3分。アサヒビールからすれば、同点にできればベストだが、仮に点が取れなくとも、ファーストダウンを何度か更新し、時間を使い切るだけでもいい。ミルズのパスなら、1分あればTDが可能だ。1本差で後半へ折り返しなら決して悪くはない。


 しかし、ミルズの闘志がここで空回りする。セカンドダウンで、左に流れながらレシーバーを探せないまま、バックトスのような不用意なパスを投げてしまう。パナソニッDL武田航がインターセプト。またしても相手陣23ヤードという絶好のフィールドポジションを得たパナソニックは、高田がWR頓花達也へパスを決めて14点差とした。


 第3クオーター、パナソニックは、この試合大活躍のデュプリーがアウトサイドのランで41ヤードをゲインしてTD、アサヒビールを突き放した。


 3TD差となって、アサヒビールのオフェンスはミルズのパスだけに頼る悪循環に入り込んだ。この試合、パナソニックはアサヒビールWR林雄太にDBエモリー・ポリーを付けるなど厳しくマークし、仕事をさせなかった。
 ファーストステージでは、TDの本数こそWRローマン・ウィルソンに譲ったが、ドライブの中盤で好キャッチを見せていたのはむしろ林だ。その林を封じたことで、ミルズのパスがさらにバランスを崩す結果となる。


 パナソニックはDLをローテーションしてフレッシュな状態の選手がプレッシャーをかける。190センチ級の大型選手がそろうシルバースターのOL陣もなす術がなく、紙をくしゃくしゃと丸めるようにパスポケットをつぶされて、ミルズは投げ急ぎを余儀なくされ、ウィルソンとのタイミングも合わなくなっていった。


 パナソニックは第4クオーターにフィールドゴールで駄目を押した。最終スコアは38―14。アサヒビールのミルズは、後半はパス24回で成功は11回。最後は5回連続失敗で終わった。


 パナソニックはQB高田、WR遠藤昇馬、DL脇坂、飾磨宗和、DB辻篤志、今西亮平ら今夏の世界選手権参加の日本代表選手が良い動きを見せる。辻は本業ばかりでなくリターンでも2回で84ヤード。比較的目立たなかった高田だが、パス135ヤードながら2TDときっちりと仕事をした。


 さらに前回も書いたが、パナソニックは日本の大学を卒業したため日本選手扱いとなるOLスコット・ダフィー(早大出)とモトゥ(日大出)を加えると、計6人の米国人選手がいる。
 快足で3TDを決めたデュプリーはラン140ヤードに加え、リターンでも活躍。レシーブも合せると合計217ヤードを稼いだ。


 ポジションとして目立ったのはDL。強いだけでなく、層の厚さが際立った。モトゥ、ジョーンズ、脇坂、武田、飾磨に加え、3年前のライスボウルでオービックをあと一歩まで追い詰めた関学大の主将・梶原誠人、1昨年のオールXリーグ久司大貴と、大きくパワフルな選手がそろう。他のチームなら全員がディフェンスの大黒柱になれる猛者ばかりだ。


 とりわけ活躍したのがモトゥだった。生で見るのは6月の日本代表壮行試合以来だったが、体は一目でわかるほどに大きくなっていた。
 春にLBからDLにコンバートされて以来、週4回のハードなウエートトレーニングで体を作ってきたという。3月には100キロだった体重が現在113キロ。酒井宗宏、奥山沙織両ストレングスコーチに「『もっと上げろ、上げろ』としごかれて大変です」と笑う。
 その一方で、最大の武器のスピードは落ちておらず、キックオフでは、デュプリーとDB辻のすぐ前に、リターナーとしてセットしていた。


 荒木延祥監督は、快勝にも「オフェンスがもっとやれたはず。ディフェンスは、まあこんなものでしょう」とそっけない。そして「セカンドステージはこの3年ほど、2戦目の(ホームの)大阪で負けているから」と気を引き締めた。


 続いて行われた、IBMビッグブルー(中地区1位)対オービック・シーガルズ(東地区3位)でも、試合を支配したのはオービックのディフェンス陣だった。
 ファーストステージ5試合でラン51回493ヤード、1回平均9.7ヤードと活躍し、LIXILの森清之ヘッドコーチが「今季最も成長した選手。今のXリーグで最高の日本人RB」と評価するほどの髙木稜を、ラン9回14ヤードと封じた。
 相棒の末吉智一に対しても、ゴール前ディフェンスから2TDを許したものの、ラン自体は8回32ヤードに抑えた。


 バランスオフェンスの主役二人が抑え込まれたIBM。試合の大半で10点以上のビハインドとなり、QBケビン・クラフトのパスに頼らざるを得なかった。
 オービックディフェンスの激しいパスラッシュに遭ったクラフトは3回サックされ、レシーバーがいない地点にパスを投げインターセプトされるなど、3インターセプトと乱調。オービックが34―26で逃げ切り、4強進出に望みをつないだ。


 強いディフェンスとランオフェンスを併せ持ったチームが、パスオフェンスだけに頼るチームと戦った場合、前者が勝つのがアメフットの原則だ。
 これが崩れるのは、パス能力に秀でるだけでなくゲームマネジメント能力が高いQBがチームを率いる場合だろう。
 本場のNFLではトム・ブレイディ(ペイトリオッツ)、アーロン・ロジャース(パッカーズ)、ペイトン・マニング(ブロンコス)。今のXリーグなら、富士通のQBコービー・キャメロンがそれに近い存在かもしれない。


 大混戦だった今季のXリーグだが、にわかに方向性が見えてきたように感じた。

【写真】第1Q、パナソニックDLモトゥがアサヒビールQBミルズをサック=撮影:Yosei Kozano