日本社会人アメリカンフットボールXリーグ、ファーストステージ第4節注目の全勝対決は10月3、4日に富士通スタジアム川崎で行われた。
 東地区の富士通フロンティアーズとノジマ相模原ライズ、中地区のIBMビッグブルーとアサヒビール・シルバースターには、いずれも優れた能力を持った米国人QBがいる。しかし、勝敗を決めたのは、2試合ともディフェンスと選手層の厚さだった。


 ▽富士通―ノジマ相模原
 第1クオーター、QBコービー・キャメロンからルーキーTE水野悠司へのタッチダウン(TD)パスで先制した富士通オフェンス。だが、このドライブで異変が起きていた。エースWRの中村輝晃クラークが、ノジマ相模原ディフェンス選手のヒットを受けて負傷していたのだ。
 中村クラークは出場できなくなり、富士通は第2クオーターには2回のオフェンスシリーズでともにゴール前まで迫るが、フィールドゴール(FG)とエンドゾーン内でのインターセプトに終わる。


 攻め切れない嫌な雰囲気を変えたのがディフェンスだった。ボールを奪われた直後、ノジマ相模原のセカンドダウンで富士通DL岡本遥が、ノジマ相模原QBベンジャミン・アンダーソンをサック、大きくロスさせる。
 サードダウン、スクランブルに出たアンダーソンを再び岡本がパシュート、右手でボールをはたいた。こぼれたボールをダイレクトに拾ったのがLB竹内修平。「カール(パス)のゾーンを守るのが本来のアサインメント。だが、アンダーソンが走ってきたのと、自分のゾーンにレシーバーがいなかったので、早めに前に上がったのが良かった」という竹内は、そのままエンドゾーンに駆け込んだ。ポイントアフタータッチダウン(PAT)は失敗したが、16―0。ゲームが大きく富士通に傾いた。


 前半終了間際にFGを返し13点差としたノジマ相模原は、後半はオフェンスからのスタート。流れを変えたかったが早々にミスが出る。スナップのタイミングが合わずファンブル、自陣22ヤードで富士通DBアルリワン・アディヤミにリカバーされてしまう。
 この好機に富士通はスペシャルプレーに出る。QBキャメロンからボールを受け取ったWR宜本潤平がWR成田竜馬へパス、TDが決まった。キックも決まり、富士通が23―3と突き放した。


 ノジマ相模原のアンダーソンについては、気になる米カレッジ時代のスタッツがあった。QBサックが多いのだ。4シーズン45試合で被サックが129、ロスヤーデージは952ヤードに達した。
 4年時には42サックで289ヤードのロスを喫していた。日本での初戦(対オール三菱ライオンズ)を見た時、理由の一部が分かった。パスを通そうとするあまり、ボールを持ち過ぎる傾向がある。その弱点がそのまま出た。


 後半開始早々に3ポゼッションの差となったため、パスを狙わざるを得なくなったアンダーソンに富士通ディフェンスが襲いかかった。
 アンダーソンの脚力なら、漏れてくるパスラッシャーが一人であれば逃げ切ることもできただろう。しかしDLの岡本、古木亮、南奎光、LBの竹内、鈴木將一郎、トラショーン・ニクソンらが同時に二人漏れてくる場面もしばしばだった。


 計5サック。ロスヤーデージの連続で、アンダーソンのランはマイナスとなった。ノジマ相模原オフェンスは勝負所で大きく後退し、FGのチャンスさえ逃した。第4クオーター。富士通はWR秋山武史、RBジーノ・ゴードンのTDで加点。とどめを刺した。最終スコアは37―10。終わってみれば大差となった。


 富士通は、選手層の厚さも目立った。ディフェンスではパスラッシャーのDL平井基之とDB藤田篤が負傷のため欠場。オフェンスでも試合の大半で中村クラークがプレーできなかった。
 しかし、それを補って余りある他の選手の働きがあった。オフェンスではWR宜本潤、成田、秋山らが活躍。ディフェンスでもDLの岩熊正貴やルーキー神山恭祐が要所でいいプレーを見せた。


 序盤で中村クラークへのホットラインが断たれたQBキャメロンだが「控えのメンバーもよく練習ができており、皆ハイレベルだ。我々はすごいチームだ。自分たちを信頼していた」と語った。「I have confidents in our team」を何度も繰り返した。
 藤田智ヘッドコーチ(HC)は「オフェンスは、成田をはじめ普段は先発しないメンバーがよく頑張った。彼らがそのまま、抜けるんだったら抜いて、ポジションを奪ってしまってもかまわない。それくらいの気持ちでやってほしい」と話した。そして「得点や試合の結果だけに踊らされると自分を見失う。フットボールとして良かったかどうかだけを考えたい」と、いつものように厳しい表情で締めくくった。


 一方のノジマ相模原は要所でミスが目立った。強力な補強に成功したとはいえ、日本人選手の戦力では差がある両チーム。弱い方がミスをしていては試合にならない。
 救いは最後まで気持ちが切れなかったことではないか。複数の富士通の選手が「ライズ(の選手)は最後まで当たりがとても強く、どんな練習をしているんだというくらいに痛かった」と証言した。


 ▽IBM―アサヒビール
 アサヒビールのQBメイソン・ミルズとWRローマン・ウィルソン、IBMのDB星田光司と中谷祥吾。試合の前半は4人の火花散る戦いを軸に展開した。
 第1クオーター、ミルズのパスが鮮やかに決まる。自陣29ヤードから、星田と中谷にダブルカバーされていたウィルソンに63ヤードのロングパス。星田が必死に食らいついてゴール前6ヤードでストップした。


 このドライブはFGに終わったが、次のドライブでもミルズのパスは冴え渡る。WR中村可沁、大澤健太、そして林雄太にパスを通して次々にファーストダウンを更新。IBMゴール前に迫った。
 サードダウン。エンドゾーン前でパスをキャッチしそのまま走りこもうとするWR戸倉和哉をIBMのDB星田がタックルしてゴール前1ヤードで食い止めた。
 フォースダウンギャンブル。ミルズが大澤を狙ったパスを星田が奪った。そのままアサヒビールサイドラインを走り抜け、99ヤードのインターセプトリターンTD。3―7とIBMに逆転された。


 第2クオーター4分、敵陣45ヤードまで進んだアサヒビールだが、セカンドダウンでミルズがサックされ9ヤードのロスとなる。サードダウン14ヤードからミルズが勝負に出た。ターゲットはウィルソン。星田と中谷のダブルカバーをものともせずキャッチしTDとなった。
 数字上は49ヤードだが、ショットガンからさらにステップバックして投げたパスは、実際には60ヤード近く飛んだのではないか。10―7とアサヒビールが逆転した。


 緊迫感溢れる攻防に、予想していた登場人物が一人足りなかった。IBMのQBケビン・クラフトだ。「元祖・黒船パサー」が、この撃ち合いに参加しなかった。
 ミルズの強肩を見せつけられてもどこ吹く風。煽られることなくRB高木稜にボールを預け、立て続けにファーストダウンを奪ったIBMは、敵陣21ヤードまで前進する。ファーストダウンでダブルTEフォーメーション、ランと見せかけてクラフトはパスコースに出たTE河合寛行に、軽いタッチのパス。あっさりTDを奪った。


 後半、IBMはアサヒビールの反則をきっかけにTDを挙げリードを11点とした。追うアサヒビールは第3クオーター11分、QBミルズがタックルされて大きくロスしながら、サードダウン25ヤードからウィルソンにTDパスを決めた。
 2点コンバージョンでもミルズが戸倉にパスを決め、アサヒビールは18―21と3点差まで詰め寄った。


 しかし、パスだけのオフェンスでは限界があった。第4クオーター、アサヒビールが自陣から一気にロングゲインを狙ったパスを、WR中村と空中で競り合ったIBMのDB保宗大介が奪う。ミルズが喫した3本目のインターセプトだった。


 IBMのクラフトは落ち着いてこのボールをRB末吉智一、高木に託し、ファーストダウンをランで更新、最後は高木が17ヤードを走りきってTDを決めた。
 10点差で残り6分余り。焦る時間帯ではなかったが、エンドゾーン内でセーフティーを奪われそうになったミルズは、、無理な体勢からパスを投げた。IBMのDLジェームズ・ブルックスがインターセプトしてリターンTD、17点差となりゲームは決着した。最終スコアは35―18だった。


 IBMの勝利の原動力は、5QBサック、5インターセプト(2リターンTD)のディフェンスだ。LBディミトリアス・ウィートン、アサヒ飲料から移籍の星田兄弟ら新加入選手に加え、DBでは中谷、保宗、LBでは岸本祐輔、DBからコンバートの中山裕貴らが随所で好プレーを見せた。


 IBMオフェンスのプレー選択はパス24回に対し、ラン31回。QBクラフトはパス199ヤード2TD、RB高木がラン93ヤード1TD、末吉が65ヤードと、バランスよく相手に的を絞らせなかった。
 一方のシルバースターは、パスは462ヤードながら、ランはQBミルズのサックによるロスが響いてマイナス42ヤード。ファーストダウンはパス19回に対して、ランは1回だけと偏りが目立った。


 IBMの山田晋三HCは、試合後のハドルで「俺たちは、もうパスだけじゃない。ランでも、ディフェンスでも、キッキングでも勝てるチームになってきた」と選手たちを賞賛した。


 山田HCは「シルバースターを見ていると、3年前にケビンが来たばかりの頃の我々を思い出す」としみじみと語った。
 下位チーム相手ではランが機能しても、上位チームとの対戦では、オフェンスで出るプレーは結局クラフトのパスしかなかった。オービックや富士通と対戦すると、一元的なオフェンスを見透かされ、ターンオーバーを連発して負ける。その繰り返しだったと話す。
 この3年間、ブルックスら米国人選手だけでなく、日本人選手の補強にも努めてきた。その層の厚さが試合結果となって表れた。


 アサヒビールは若返りが進み、素質のある選手がそろってきている。山田HCは「僕らは3年かかったけれど、彼ら(アサヒビール)の復活のペースはもっと早いのではないか」と予測した。

【写真】第1Q、IBMの守備網をかいくぐりパスをキャッチするアサヒビールWRウィルソン=撮影:Yosei Kozano