アメリカンフットボールの日本社会人Xリーグは 今週末の第4節、ファーストステージの山場を迎える。富士通スタジアム川崎を舞台に、10月3日(土)に東地区で富士通フロンティアーズ対ノジマ相模原ライズ、4日(日)に中地区でIBMビッグブルー対アサヒビール・シルバースターと、今季3戦全勝の4強が激突する。


 ノジマ相模原、アサヒビールは昨シーズンのファーストステージでは2敗して地区3位。ファイナルステージ(社会人準決勝)に進めなかった。その両チームが、アサヒビールは開幕週の第1節にLIXILディアーズ、ノジマ相模原は第2節にオービック・シーガルズと、ともに昨シーズンベスト4の強敵を倒し、ここまでたどり着いた。
 両チームの共通点は、今季米国選手の補強が奏功したことだ。迎え撃つ富士通、IBMも含めた4チームのエースQBがすべて米国人というのも、日本のアメフット史上初だ。今季の行方を大きく左右する無敗対決を展望した。


 ▽富士通―ノジマ相模原
 前年王者の富士通は、ここまで盤石の戦いが続いている。特に、第3節のオール三菱ライオンズとの一戦で実力を見せつけた。
 上位を狙うオール三菱は、強く堅いディフェンスと、大学トップ級タレントを要所に配したオフェンスで、第2節で明治安田PentaOceanパイレーツに45-6と圧勝、余勢を駆って富士通戦に臨んだ。そのオール三菱を富士通は69―10で文字通り粉砕した。


 富士通オフェンスの中核は今季もQBコービー・キャメロンだ。ここまでの3試合のパス成績は、50/67で成功率74.6%。834ヤード、15TDでインターセプトはゼロ。QBレーティングは、点数が低くなるNFL方式で計算しても155.72と満点(158.33)に近い。昨シーズン終了後に肩を手術をした影響はほぼないと言っていい。
 キャメロンのパスを半分キャッチしているのがWR中村輝晃クラーク。424ヤード、7TDと絶好調だ。さらに日本代表の宜本潤平、兄の宜本慎平、強盛、ルーキーでともに190センチ近い長身の水野悠司、福井雄哉、現役復帰した元日本代表・米山晃嗣と、質量ともにリーグ最強のパスユニットといって間違いない。


 ディフェンスも強力だ。DLで平井基之と高橋伶太、LBで鈴木將一郎と竹内修平、DBで藤田篤と石井悠貴と、各ポジションにベテランと若手の日本代表がそろい、さらにリーグナンバーワンDBのアルリワン・アディヤミと、新加入のLBトラショーン・ニクソンがにらみを利かす。ニクソンは前線でプレッシャーを掛けるだけでなく、3試合で2インターセプトと守備範囲が広い。


 富士通の不安材料をあえて探せば負傷者が多いことだ。特にRBでは、昨シーズンのジャパンXボウルとライスボウルのMVPジーノ・ゴードンは健在だが、高野橋慶大、今夏の日本代表の神山幸祐の二人がここまで全休。昨年、レシーバーに転向していた金雄一とワークホース後藤啓が堅実な走りをみせているが、前半にキャメロンのパスで大量リードした後のボールコントロールの局面が多い。競り合いの中で強いディフェンスに対峙した時のランがどうなるか。


 対するノジマ相模原。加藤慶ディフェンスコーディネーターが指揮するパスディフェンスは、昨シーズンの富士通戦で、QBキャメロンに対し1TD、2インターセプトと封じ込んだ実績を持つ。今季はそこにLBアート・ロウレル、DBマヌ・ナティカウラが加わった。


 今季第2節、オービックに延長タイブレークで競り勝った試合では、特にDB陣を中心としたパスディフェンスが、タイブレークも含め5インターセプトを奪って勝利の原動力となった。
 エースDB北村雅史は2インターセプト、マヌはインターセプトリターンTDを決めた。3試合で2QBサックのロウレルは、プレー全体の読みが的確で、パスラッシュだけでなく、ランでもボールに絡む「エブリダウンプレーヤー」だ。183センチ120キロのルーキーDL小宮洋平もパワフルな動きで、ディフェンスを盛り立てる。


 QBベンジャミン・アンダーソンは、最初の2戦はコンディションが万全でない部分もあり、インターセプトが先行するなど本来の力が出ていたとは言い難い。だが須永恭通HCは「人間的にも技術的にも手本になる」と高く評価する。


 第3節の警視庁戦では、序盤からパスが冴えて13/14で2TDと徐々に本領を発揮し始めた。タイプ的には、キャメロンやIBMのケビン・クラフトとは異なり、左右にロールしながらTEやRBに通すパスが多い。
 ノジマ相模原オフェンスで比較的手薄なポジションがWRということもあるのだろう。とはいえ、アーカンソー大パインブラフ時代の動画では、50ヤード近いロングパスを決めるシーンもあり、一発も秘めている。RBは負傷で出番が少ない主将の東松瑛介が気がかりだが、ベテラン宮幸崇の力強い走りは健在だ。


 富士通の藤田智HCは「(ノジマ相模原は)リーグでも一、二というとてもいい補強をしてきた。次の試合は、我々が持っているものをすべて出さないと厳しい」と見る。
 QBアンダーソンについては「あの走力はちょっと桁が違う。周りがよく見えているのでひどいヒットも受けない。そういう能力の高さがある」と警戒する。
 ノジマ相模原がオービックを破った一戦を映像で見た藤田HCは「オービックが不調だったとは思うが、それ以上にライズが良いプレーをしていた。なんといっても気持ちがすごく入っていた」と話す。「激しい試合になると思うが、とにかく目の前の一戦に集中して良い準備をして臨みたい」と、厳しい表情だった。


 ノジマ相模原の須永HCは、「ビッグゲームで勝った後は難しい」という。オービック戦の後「この勝利は大きいが、1勝にすぎない。切り替えをしっかりしたい」と語っていたが、第3節の警視庁戦は納得がいかない部分も多かったようだ。
 新加入の米国人選手については「ロウレルは、複雑なウチのディフェンスシステムをしっかり学習して、試合ごとに思い切り動けるようになってきた」と言う一方で「QBのベンはまだまだ」。警視庁戦では好調に見えたアンダーソンのパスも、必ずしもオフェンスコーディネーターの意図したプレーではなかったという。


 富士通戦でもキーになるプレーヤーは「やはりベン。彼の判断に任せているが、必要な時に走り必要な時に投げるという決断をしっかりすることが大事」と言う。「本当に強い。穴がない」という富士通との対戦。「選手のメンタル面とコンディションを整えて、思い切りぶつかりたい」と闘志を燃やす。


 ▽IBM対アサヒビール
 両チームはこの数年ファーストステージ3位に甘んじたが、昨シーズンIBMがそこを抜けだし、ジャパンXボウルまで進出した。後を追うのがアサヒビールだ。
 両チームは過去3年間、秋季の対戦がなかった。IBMのQBクラフトが加入以降は対戦がなかったということだ。
 今でこそ立場はIBMが上だが、アサヒビールは数々の栄光の歴史を持つ強豪だ。今春の交流戦はシルバースターが圧勝したが、まったく参考にならない。今の両チームの特徴は、米国人QBを取り巻くオフェンス陣にタレントが豊富なことだ。


 IBMのWR栗原崇、RB高木稜は今夏の世界選手権で日本代表オフェンスを支えた両輪だ。さらにカナディアンフットボール(CFL)を目指して今春はカナダで練習を積んできたRB末吉智一が、切れ味鋭いランを見せる。
 末吉は体重を90キロに絞り込んだというが、腕が太くなるなど体がむしろ大きくなったように見える。高木と末吉の進化は、QBクラフト加入以来、パス偏重の傾向にあったIBMの攻撃に変化をもたらした。 クラフトが3試合で投げたパスは25本、TDは5と黒子に徹する一方で、末吉が324ヤード、10TD、高木が297ヤード、4TD、移籍のベテラン鈴木友宏が207ヤード、2TDとラン攻撃の充実ぶりが際立つ。支えるOLは、ノジマ相模原から移籍の秋葉英明、パワフルなブロッキングを見せるルーキーの伊藤啄丸と、新戦力による大型化が進んだ。


 アサヒビールも負けていない。QBメイソン・ミルズは、富士通のキャメロンを上回るパス986ヤードを獲得。ターゲットはWRローマン・ウィルソンと、日本代表の大型WR林雄太がダブルエースだ。
 パスレシーブ382ヤード、7TDのウィルソンと、459ヤード、5TDの林は今やリーグ屈指のレシーバーコンビだろう。
 林は代表の活動を通じて、特別にフィジカルな部分がアップしたわけではないと言いながら「世界選手権で米国などの外国人プレーヤーと対戦したことで、プレーの判断力が上がり、余裕が出てきた。それでプレースピードが上がってきた」という。


 アサヒビールの課題はランオフェンスだ。開幕のLIXIL戦は28ヤード、70点を奪って圧勝した東京ガス戦でも96ヤードにとどまった。個々の選手で見ても、ランで100ヤードを超えている選手が一人もいない。IBMと比べ戦術の広がりに欠ける部分だ。


 IBMの山田晋三HCは「オフェンスは(これまでパス偏重だったのは)パスが好きだったわけではなく、クラフトのパスしか出るプレーがなかった部分がある。ここへ来て末吉、高木という二人に加えてOLがそろってきて、やりたかったランができるようになった」という。
 IBMは、昨シーズン同じ第4節で富士通と無敗同士で対戦したが、完敗した。戦力差もあったが、第3節にノジマ相模原相手に接戦を制してから中6日で富士通と戦うという厳しい日程の影響も大きかった。


 今季は第3節の21日に東京ガスと対戦後、中12日空いた。シルバーウィークなどで練習可能な日数も多かった。ディフェンスでは日本代表だった紀平充則も東京ガス戦から戦列に加わった。
 「ディフェンスは紀平がいるとやっぱり違う。レッドゾーンで助けられた。ベストとは言わないが、相当にいい状態でシルバースターと戦うことができる。楽しみ」と手応えを感じているようだ。


 アサヒビールの岡潔HCは「OLのブロッキング、特にパスプロテクション時のホールディング(の反則)が課題。ランに関しては、出るプレーと出ないプレーがはっきりしてきた。そこの見極めと修正をやっていきたい」という。
 アサヒビールは米国人選手がディフェンスにはいない。世代交代が進み、若く才能のある選手がそろってきたが、決定力のあるIBMオフェンス相手には、経験不足が露呈することも考えられる。「ディフェンスは(IBMの戦力充実は)想定内。速いテンポに対応できる練習も、ミルズを相手にやっている。まずはランをしっかり止めることを心がけたい」と話していた。

【写真】ノジマ相模原ディフェンスを支えるLB田中(57)、ロウレル(12)、DL伊倉(90)=撮影:Yosei Kozano