日本社会人アメリカンフットボールXリーグ、9月最大の注目カード、ノジマ相模原ライズ対オービック・シーガルズの一戦は、13日、相模原ギオンスタジアムで行われ、ノジマ相模原が延長タイブレークの末、20―17でオービックを破った。


 タイブレークにもつれ込んだとき、オービックの勝利を予想した。QB菅原俊はこの日不調だったとはいえ、終盤もつれた試合のマネージメントは傑出している。特にタイブレークには強い。
 2007年、法大4年時に早大とのタイブレークで見せたパフォーマンスは圧巻だった。菅原は戸倉和哉(現アサヒビール)と栗原崇(現IBM)らをターゲットに、5回に及んだタイブレークですべてパスでTDを決めて粘る早大を振り切った。
 昨年のパールボウル決勝では、富士通を相手に残り試合時間6秒からパスで同点のTD、タイブレークでは、自らのTDランで試合を決めた。そんな過去の映像が脳裏をよぎった。


 ファーストダウン。ノジマ相模原ディフェンスが左から強烈なブリッツを入れた。菅原はサックされる寸前でボールを投げ捨てた。セカンドダウン。TE森章光を入れてパスプロテクションを厚くしたが、ポケットを潰され、菅原は仕方なくサイドラインに投げ捨てた。
 サードダウン。パスプロテクションは持ったが、ノジマ相模原のカバーがよく、空いているレシーバーを探せない。そこにブロックを外したノジマ相模原LBロウレルがプレッシャーをかけた。菅原もRB原卓門がエンドゾーンにいるのを見つけパスを投げたが、ボールが上ずった。ノジマ相模原DB佐久間徹がインターセプト。オービックの攻撃はまさかの無得点に終わった。


 ノジマ相模原のサイドラインの須永恭通ヘッドコーチ(HC)は、パスを選択肢から外した。ボールを少しでも前に進めて、確実にフィールドゴール(FG)を決めればいい。
 強いOL、強いRB、強いQB、強いランゲーム。この状況でで最も必要な戦力とプレーがノジマ相模原にはあった。


 RB宮幸崇の力強いランを中心にファーストダウンを奪い、さらにボールを置くハッシュマーク(インバウンズライン)の位置を整えるランプレー。最後はキッカー望月康平がしっかりと決めた。
 東松瑛介主将ら選手たちが抱き合って喜びを爆発させた。2011年のX1昇格以来、オービックにはね返され続けたノジマ相模原が、ついに壁を超えた瞬間だった。


 試合後、須永HCは「ディフェンスが本当によくやってくれた」と振り返った。菅原、畑卓志郎の二人のQBから、タイブレークを含め5インターセプトを奪ったDB陣がヒーローなのは言うまでもない。ただ、昨シーズンのファーストステージ富士通戦でも、Xリーグナンバーワンパサーのコービー・キャメロンをほぼ完璧に封じ込んだが、試合には敗れている。


 須永HCは「今までも、パスを中心としたディフェンスには、自信があった。ラン攻撃でも、ある程度はボールコントロールもできていた。でも、結局はそこまでだった」という。ノジマ相模原は過去のオービックとの対戦では、大差で敗れた試合は少ない。ディフェンスが健闘し、途中まで互角の展開に持ち込みながら、結局は敗れるという試合を重ねてきた。


 須永HCは「今季からはポイントゲッターがいる。その違いは大きい」という。ポイントゲッターとは、決してQBのベンジャミン・アンダーソンだけを指すのではなく、勝敗のターニングポイントでビッグプレーを決める力を持った、新加入の米国人トリオを指していると理解する。


 試合冒頭のドライブで、RB宮幸の力強いランを生かしながら、先制TDパスを決めたアンダーソン。オービックの前半最後のドライブで菅原をサックし大きくロスさせたLBロウレル。そして後半、まさにトロイ・ポラマル(元NFLスティーラーズ)を思わせる、素晴らしいインターセプトリターンTDを決めたDBマヌ・ナティカウラ。それぞれのポジションで勝利に貢献した。


 QBアンダーソンは、パスでは2インターセプトを喫し、ランでも31ヤードと、成績だけを見れば決して良かったとは言えない。それでも一つ印象に残ったシーンがある。


 第3クオーター、ランプレーで、オービックDLバイロン・ビーティー・ジュニアに追われたアンダーソンは、オービックLB澤田遥が正面からタックルされた。103キロの澤田のヒットを浴びたアンダーソンは背中から激しくグラウンドに叩き付けられた。日本人QBなら、ほぼ間違いなくインジュアリータイムアウトのケースだったろう。
 しかし次の瞬間、アンダーソンはすっくと立ちあがり「お前、なかなかやるじゃないか」とでも言うように澤田のヘルメットを上からポンとたたいた。プレー自体はファーストダウンを取れずにパントに切り替わったが、4年間米の大学で先発QBを張ったのは伊達ではないと感じた。QBが「フィールドジェネラル」と呼ばれる所以を示した。


 オービックのオフェンスは試合当初から何かがおかしかった。先制TDを許した後のドライブ。QB菅原は最初のプレーでWR木下典明に21ヤードのパスを通してあっさり敵陣に侵入、自らのランも交えてゴール前4ヤードまで迫った。
 しかしここから3回連続でパス失敗。サードダウンでは誰もいない場所にボールを投げ込んだ。このドライブはFGに結びつけたが、この後オービックは3&アウトを繰り返す。あまり見慣れない光景だ。前半最後のドライブではインターセプトに終わった。菅原の前半はパス15回で成功6回、成功率40%と、まれに見る調子の悪さだった。


 オービックは後半からQB畑卓志郎を起用した。畑は後半最初のドライブではリズムよくボールを進ませ、あっさりTDを奪うなど、好調と思われたが、その後4回の攻撃で3インターセプト。前述したようにリターンTDも喫した。
 第4クオーター、オービックは再び菅原を投入、ゴール前でワイルドキャット隊形からのRB望月麻樹のランでTDを奪い同点としたものの、その後の2回のドライブではFGレンジまでも進めずに終わった。試合中、リーグ屈指のセンター、フランク・フェルナンデスが、2度もスナップミスをするシーンもあった。今までのオービックではあり得ないことだった。


 オービックはすべてが悪かったわけではない。特にディフェンスは懸念されたモバイルQBへの対策も十分で、最初のドライブを除けばノジマ相模原オフェンスを封じ込んだと言っていい。
 しかし、アンダーソンや宮幸を追い回し、タックルして止めるディフェンス陣は、やはりDLケビン・ジャクソン、LB古庄直樹、塚田昌克、DB藤本将司、三宅剛司という面々が目立っていた。


 この試合のタックルリーダーは古庄で5タックル。塚田が3.5タックルで続く。第4クオーターにQB畑がインターセプトを喫した直後のプレーでも、お返しのインターセプトを決めて、さらに気迫のリターンを見せたのは藤本だった。ここぞというときに活躍するのは、歴戦の勇士たちという構図は変わらない。


 昨シーズン、富士通に準決勝で敗退し「我々のフットボールは、足りないのではなく、違っていた」と話した大橋誠HC。「シーズンで2敗もして、もうこのリーグで勝ち続けられるチームじゃないんだよと突きつけられた」と語った古庄。
 オービックはコーチ陣を含め、体制を一新した。7月の世界選手権のため、大橋HCとディフェンス主力組がチームから離れていたとはいえ、開幕の警視庁戦を見る限り、しっかりと準備をして、ノジマ相模原戦に照準を絞ることができているように思えた。


 もちろん、変わるというのは、単なる選手の新旧交代を意味するのではない。ベテランが活躍しているから変わっていないと言う気もない。だが、オービックが4連覇した時期と比較しても、特にこの2年でXリーグは進化を続けている。
 従来とは違う上昇カーブを描いているライバルに対して、変わりながらレベルアップして勝ち続けることの難しさを見せつけられたと思う。


 試合終盤で、オービックが勝負強さで一枚上と見て「肉を切らせて骨を断つ」的な結末を予測した。それは従来のシーガルズフットボールそのものだ。見ている我々もそこに囚われている。今季のチームスローガン「PUMP IT」(ぶちかます)は、残念ながら見えてこない。


 試合後、ノジマ相模原の須永HCは「いつも通り、皆さんの温かい応援が選手たちの力になりました。ありがとうございました」と、ホームゲームに駆けつけたファンに感謝した。
 その後マイクを渡された東松主将は涙が止まらず、言葉にならなかった。撮影しながら、昨年の社会人準決勝でもオービックを破った富士通の選手が泣いていたのを思い出した。


 オービックはXリーグにそびえる巨大な壁だった。しかし、今季次にオービックが敗れるとしたら。おそらく、相手チームの選手は、泣くことも、優勝したかのように喜ぶこともないだろう。

【写真】第2Q、オービックQB菅原をサックしたノジマLBロウレル=撮影:Yosei Kozano