7月にアメリカンフットボールの「聖地」米オハイオ州カントンで開催される世界選手権。今週も、米国代表の話を続けたい。まずは、気になった選手をリストアップする。カッコ内は出身大学・所属カンファレンス(FCS以下はディビジョンのランク)


 ケビン・バーク=QB(マウントユニオン大・デイビジョン3)
 178センチ、83キロ。予想される米代表のエースQB。2013年はパス3830ヤード44TD、ラン1025ヤード8TD。14年はパス4412ヤード52TD、ラン599ヤード10TDと圧倒的な成績で、2年連続でディビジョン3の最優秀選手賞「ガグアルディ賞」を受賞。大学で先発した試合は43勝2敗。


 トレント・スティールマン=WR(陸軍士官学校・独立校)
 183センチ、92キロ。WR登録だが、元は陸軍士官学校の大エースQBで、32試合連続、通算46試合先発の学校記録を持つ。4年次はラン1248ヤード17TD。NFLプレーヤーになる夢を持ち続ける「鉄の男」だ。


 マイク・クリスト=OL(ワシントン大・パック12)
 195センチ、142キロ、強豪ワシントン大で38試合に出場。本来はセンターだが、タックル、ガードもプレーできる。今年、NFLシーホークスのミニキャンプに参加したとの情報もある。


 ザック・ウィリアムズ=OL(ワシントン州立大・パック12)
 193センチ、135キロ、ジュニアカレッジからワシントン州立大へ。2011年のドラフト6巡指名でNFLパンサーズ入団。2年間在籍し1試合出場した経験を持つ。


 チャーリー・タトル=OL(テキサス州立大・サンベルト)
 188センチ135キロ。生まれ育った町に近いテキサス州立大に一般学生として入学。最終的にフットボール特待生となった努力の男。大学通算40試合以上出場した。


 ジェームズ・アトエー=OL(ワシントン大・パック12)
198センチ、169キロ。2年次半ばからスターター。巨漢だが身のこなしは速い。


 ウィリー・モブリー=DL(ニューメキシコ州立大・サンベルト)
 188センチ、126キロ。オハイオ州立大、UCLA、アリゾナ大と名門大を渡り歩いたが、負傷に泣き続けた。しかしフットボールへの情熱は失わず、ニューメキシコ州立大でプレー。学業も優秀で、アリゾナ大を学士として卒業し、ニューメキシコ州立大では修士課程で学んだ。


 ジャック・シャーロック、DL(サウスダコタ州立大・FCS)
 193センチ、113キロ。祖父はノートルダム大、父はパーデュー大でプレーしたフットボール一家の3代目。FCSの強豪サウスダコタ州立大で3、4年で6QBサックを決めた。


 アレック・メイ=LB(ジョージタウン大・FCS)
 191センチ、110キロ。FCSのQBサック王。2014シーズン16.5サック、大学通算29サック。NFLライオンズのルーキーキャンプにも招待された実力派。名門大学で学業成績は優秀。「アカデミックハイズマン」と名高いウィリアム・V・キャンベル賞の最終選考にも残った。


 デビッド・ガスリー=LB(ニューメキシコ大・MW)
 178センチ、92キロ。NFLの公式サイトが選んだ、カレッジフットボール全米ハードヒッター14人中で11位となったほどの激しい当たりが持ち味。ジュニアカレッジからの転入生で、ニューメキシコ大ではセーフティー。1年しかプレーしなかったが、65タックル2サックを決めた。パンターもできる。


 デリック・ウェッブ=LB(コロラド大・パック12)
 183センチ、101キロ。NFLの名RBロジャー・クレイグ(元49ナース)のいとこ。血筋に恥じず、強豪コロラド大で通算258タックル、3年次88タックル、4年次99タックル。手を抜かない熱いスペシャルチーマーで、2年連続でチームメートからキャプテンに選ばれた。


 スティーブン・カーフュー=LB(テキサス大サンアントニオ・C-USA)
 191センチ、105キロ。ディビジョン2から転校してきた時は一般入部。すぐに頭角を現し、3年次71タックル4.5サック、4年次82タックル2サック。2年連続チームキャプテン。


 スコット・トンプソン=LB(ノースカロライナ州立大・ACC)
 180センチ、110キロ。高校時代からロングスナッパー一筋で、カレッジフットボール専門誌「フィル・スティール」の全米代表にも選出された。


 マイク・エドワーズ=DB(ハワイ大・MW)
 175センチ、86キロ。2012年のキックオフリターン1214ヤードは全米1位。リターンで3TD。NFLニューヨーク・ジェッツのキャンプで最終カットまで残る。地元クリーブランド出身。

 
 前回紹介した3人のRBや、日本でもおなじみのバイロン・ビーティー・ジュニアについては割愛した。


 前回の小欄で、2013年までNCAAカレッジフットボールの王座決定方式だったボウル・チャンピオンシップ・シリーズ(BCS)について書いた。読者の中には、米国代表と何が関係あるのか、と関心の薄い方も多かったかもしれない。しかし、関係がある。


 NCAAフットボールは格差社会だ。最上位ディビジョンのFBS(フットボール・ボウル・サブディビジョン)は、昨年124校が所属するまでに膨張した。
 しかし同じFBSと言いながら、人気校、強豪校を抱える名門カンファレンスと、新興校や弱小校ばかりのカンファレンスには厳然とした差異がある。


 私が昨年見学したアラバマ大学はピンの中のピン。予算規模も、選手のレベルも全米屈指だ。BCSの仕組みでは、上位のBCSカンファレンスと下位の非BCSカンファレンスを、はっきり区別した。格差に公式の「お墨付き」を与えたといってもよい。BCSの制度自体は終わったが、今も影響は残っている。


 今回の米国代表選手は、非BCSカンファレンス出身の選手が半数いる。マウンテンウェスト(MW)、カンファレンスUSA(C-USA)、サンベルトなどがそうだ。
 本当はFBSでフットボールをしていること自体がエリートなのだが、そのエリートの中で、非名門カンファレンス出身の彼らは、常にテレビに映り、注目される有名校のスター選手に対する闘志や反発心を強く持っていると思う。そういう「バネ」を持った選手を意図的に選んでいるように思う。


 また「チームの中心」「ハードワーカー」「学業優秀」というプロフィールが多い。ウォークオンと呼ばれる一般入部の選手や、ジュニアカレッジ出身の選手が多いのも目につく。
 ジュニアカレッジは日本でいう短大だ。高校卒業時に選手としての評価が低く、学業成績的にも4年生大学にすすめなかった選手が、ジュニアカレッジで鍛錬して、認められて途中編入しているのだ。「上昇志向」「反骨心」「雑草魂」的な気構えも濃厚に感じられる。


 勤勉さとハングリー精神が同居しているとでも言えばいいだろうか。当初、メンバーを見たときは、ビッグネームの選手がいないように思えたが、名を捨てて実をとったというのか、こういうチームが一番怖い。


 一方、米国代表のコーチ陣に動きがあった。トム・カウマイヤー氏がDBコーチ職を辞し、後任には、マット・ホワイト氏が就いた。
 ホワイト氏はディフェンスコーディネーターのロバート・タッカー氏の勤務先大学での部下。ディフェンスの一体感はむしろ増すかもしれない。ただ、日本の主武器である早いタイミングのパス攻撃について、手の内をすべて知られた状況よりはだいぶましだろう。


 日本代表候補は、6月6日の練習から新たなステップに入った。練習前のミーティングでは、森清之ヘッドコーチ(HC)が、オフェンスはWR木下典明(オービック)OL小林祐太郎(富士通)、ディフェンスではDL脇坂康生(パナソニック)LB鈴木將一郎(富士通)の4人をリーダーに指名した。


 練習後、木下は「日本のこのレベルで満足していると駄目。もっと高いイメージを持たなければ」と、げきを飛ばした。
 「(2009年の)ノートルダムジャパンボウルの時は、試合中にディフェンスの気持ちが折れていた」と、自分の専門ではないポジション、それも守備を引き合いに出して、あえて厳しい発言をした。言いにくいことでも言い合っていかないと、強いチームにはならない。なあなあでは駄目。その口火を切ったのだ。


 森HCは「55人に絞るまでの練習では、残ることを意識して、選ぶ我々の方を見て、プレーしているみたいなところがあった。そこからすると、練習でも一つギアが入ったような感じはある。しかしお互いを練習台にして、ちょっと良いプレーが出たぐらいでは通用しない」という。


 森HCは「今回のアメリカ代表は、全体の3分の1くらいは、FBSで十分に通用していたとか、NFLのロースターに残るぎりぎりまで行ったという経歴を持っている。間違いなく、今まで戦った中で一番高いレベル」と見る。
 だから「本当にアメリカとやって勝つ気構えがあるのか。まだまだだと思う。選手はかなり横並びで競い合っているポジションも多いが、どんぐりの背比べではどうしようもない」と危機感をあらわにする。


 「ノリ(木下)は、今のメンバーでは数少ない、アメリカのトップレベルを知っている選手。今回の代表でも初回の練習から、『アメリカに勝つんだ』という強い気持ちが前面に出ている。私の方から、何かを話してくれと頼んだことはないが、彼も感じているのだろう」と森HCは言った。


 米国との初戦まで、残された時間はそう多くない。

【写真】経験豊かなベテランQB高田=撮影:Yosei Kozano