7月に米オハイオ州カントンで開催されるアメリカンフットボールの世界選手権。前回のこの欄で米国のコーチ陣について分析したが、もう少し詳しく書きたい。


 ダン・ホーキンス米国代表ヘッドコーチ(HC)が、ボイジー州立大学時代になぜ高得点で圧勝するフットボールを展開していたか。
 それは、1998年から2013年のシーズンまでNCAAカレッジフットボールの王者を決めていたボウル・チャンピオンシップシリーズ(BCS)という仕組みに由来する。


 BCSは、当初、ローズ、シュガー、オレンジ、フィエスタの4大ボウルゲームの中から毎年1試合を順番で全米優勝戦に選んで運営するものだった。優勝戦となったボウルゲームには全米ランク1位と2位のチームが、残りのボウルにもランキング上位チームが出場する。


 しかし、この仕組みには異論が多かった。例えばローズボウルはビッグ10とパック10(当時)の1位校同士が対戦する、というように、メジャーカンファレンスの代表校同士が戦う伝統がある。
 ランキングを基準に出場校を決めるようになれば、伝統を壊すのではないかと、ファンや関係者から強い批判があった。
 それだけでなく、OBやファンが多い名門校が出場しなければ、テレビ視聴率や観客動員にも影響が出る。


 結局、BCSは「強者への配慮」をした。人気や伝統のある6大カンファレンスをBCSカンファレンスに認定して「メジャー校」扱いをし、優勝すれば4大ボウル出場決定、それ以外のカンファレンスはマイナー扱いしたのだ。
 BCSの詳しいランキング決定方法はここでは省くが、スケジュール強度という考え方などが取り入れられ、同じ勝ち星なら新興校よりも名門校、伝統校が上位となりやすくなる評価があらかじめデザインされていたのだ。


 カンファレンスに所属しない独立校でも、ノートルダム大だけは別格とし、一定の条件を付けて4大ボウル出場を後押しした。
 2006年に王座決定戦が、4大ボウルとは別に行われるようになったが、伝統校への優遇は残ったままだった。


 ダン・モリソンWRコーチが所属していたハワイ大も、ホーキンスHCのボイジー州立大も、NCAAのDiv.1A(現在のFBS=フットボール・ボウル・サブディビジョン)の中では、伝統校でも名門校でもないマイナー校の扱いだった。
 新興校やマイナー校がランキング上位に上がるためには、ただ勝つのではなく、圧倒的大差で勝つこと、下位に取りこぼしをしないこと、という2点が大事だったのだ。


 モリソン氏は2004年のニューエラボウルのため来日、その後は数年続けて関学大が招いて日本を訪れ、パス技術を細かに教えたコーチだ。
 2007年のシーズン、関学大はQB三原雄太を擁し、「ファイターズ史上最高のパス攻撃」を展開した。パナソニック・インパルスに敗れはしたが「ラン・アンド・シュート」で、ライスボウルのパス記録を作った。そのあたりの経緯は、関学大ディレクター小野宏さんのコラムに詳しい。
http://www.kgfighters.com/20080103ricebowl_column07/


 パス中心のハイスコアオフェンスを組み立てるモリソン氏のようなコーチが多く存在し、ハワイやボイジー、ユタ大のような、「成り上がり」を目指す非名門校からニーズがあるというのが、今世紀に入ってからのカレッジフットボールのある側面だった。


 今回の世界選手権は、カナダの不参加が確定し、日本はトーナメントA組1回戦が不戦勝となった。初戦は7月12日のトーナメントA組2回戦で、米国対メキシコの勝者と対戦する。そしてこの相手とは、18日の決勝まで日本が勝ち進めば再戦する可能性がある。


 手の内を隠して、初戦をあえて勝ちにいかないという考え方をする人もいるかもしれないが、それは危険だ。
 9日に行われるトーナメントA組の米国対メキシコの敗者は、12日に試合がない。例えば、9日に米国が勝ち、メキシコが敗れたとする。日本は12日に米国と対戦する。


 ここで敗れた場合、15日に試合間隔中2日で中5日のメキシコと対戦しなければならなくなる。過去世界選手権でのメキシコとの対戦は全勝だが内容的には差はわずかだ。極めて不利な対戦となる。もし12日に勝てば、15日の対戦相手は、実力的にはるかに劣るトーナメントB組からの進出チームとなる。


 日本はどうすればよいのか。6月3日に日本代表2次候補の55人が発表になった。内訳は、オフェンスはOL9人、WR10人、TE2人、QB3人、RB4人の28人。ディフェンスはDL9人、LB6人、DB11人の26人、K/P1人。


 私見を言わせてもらえれば、オフェンスは少数精鋭。人数を絞り込んで選手個々の練習量を相対的に増やし、精度を上げるしかない。
 パス攻撃中心に得点を狙う。QB2人、RB3人、WR/TE6人、OL9人の20人で良い。場合によってはOLも8人のオフェンス19人でよいかもしれない。OLの人数は、ロングスナッパー(LS)を務められる選手がどれだけいるかにもよる。


 仮に日本の攻撃がうまくいったとしても、ボールコントロールはできないだろう。守る時間はどうしても長くなるのではないか。
 だから守備陣は厚くする。DLとLBで15人。DBは10ないし9人。どのポジションも消耗が激しいはずだ。どんどんローテーションして、少しでもフレッシュな状態でQBにプレッシャーを掛けたい。


 オフェンス20(19)人、ディフェンス24(25)人、K/P1人。かなり偏ってはいるが、今回の日本代表は、オールXリーグの選出のような選手としてベストメンバーを選ぶのとは異なると思っている。


 最後に。このコラム締め切り間際になって、米国代表45人が発表された。ざっと見て気になるのは、RBだ。チャド・ヤングが178センチで116キロ、ラリー・ディクソンが180センチで108キロ、ニック・グリフィンが180センチで106キロ。
 

 体格もさることながら、経歴がすごい。ヤングはサンディエゴ州立大出身、「完璧なFB」と評されて、昨年はNFLニューヨーク・ジェッツと契約し、シーズン前の8月下旬に、ロースターが75人から53人に削られる時に放出された。


 ラリー・ディクソンはウェストポイント陸軍士官学校のエースRBで、4年間通算でラン3188ヤード。昨シーズンは1108ヤードを走った。
 ニック・グリフィンは、昨シーズン旋風を巻き起こし、最終ランクは全米8位だった強豪ミシシッピ州立大の控えRBだ。走るだけでなくブロックやパスキャッチも得意だという。


 米国人のRBといえば、日本では昨シーズン富士通フロンティアーズのジーノ・ゴードンが大活躍をしたが、この3人はゴードンと比べても1ランク、あるいは2ランク上かもしれない。

【写真】辞退した古庄の分まで頑張りたいLB塚田=撮影:Yosei Kozano