2015年は、4年に一度のアメリカンフットボール世界選手権の年だ。昨年末に、当初の予定地だったスウェーデンが開催権を返上、一時はどうなるかと思われたが、米国が代替地として名乗りを上げ、オハイオ州カントンで7月開催が決まった。
 遠征費用の問題などからドイツなど欧州の一部が参加を取りやめ、前回大会と同じ8カ国で争われる。


 参加国の実力差を考慮したのか、今回は全面的に試合フォーマットが変わった。2011年前回大会成績に基づいたランク付けで8カ国をA、Bの2グループに分け、ランキング3位の日本は米国(同1位)、カナダ(同2位)、メキシコ(同4位)と同じAグループに入った。


 Bグループはフランス(同5位)、オーストラリア(同6位)、韓国(同7位)、ブラジル(同8位)の4カ国。両ブロックで3位決定戦を含むトーナメントを行い、Aの上位3チームとBの1位チームが決勝トーナメントに進み、Aの4位とBの2~4位がコンソレーション(5~8位決定戦)に回る。


 日程も決まった。7月9日を皮切りに、中2日で4試合を戦い、最終戦は18日となる。日本の初戦は、前回大会準決勝で苦杯を喫したカナダで、勝てば、米国対メキシコの勝者と対戦する。グループ戦で最下位になってコンソレーションに回らない限り、日本は4試合中3試合か4試合すべて北米勢を相手に戦うことになりそうだ。


 さすが「宗主国」開催と称賛したい。開催地返上から3カ月足らずの間に大会フォーマットや日程が速やかに決まった。さらに開催地カントンは、「栄誉の殿堂」のあるプロフットボールの聖地だ。
 会場となるフォーセットスタジアムは、昨年秋にNFLニューオーリンズ・セインツの名物オーナー、トム・ベンソン氏の名前を取って、トム・ベンソン殿堂スタジアムとなった。
 90年以上の歴史を持ち、収容人員こそ2万2000人と米国としては少ないが、毎年NFLのプレシーズン初戦が行われる、プロ仕様の競技場だ。


 そして何よりも、日程的に、徹頭徹尾ガチンコフットボールになる。昨年のドイツ代表との戦いでもわかるように、率直に言って、いまさら欧州やその他の国々と結果の見えた試合をしても意味がない。王者・米国や、因縁のカナダ、過去好勝負を展開してきたメキシコとの戦いは、想像するだけでも興奮を禁じ得ない。


 日本代表も動き始めている。日本アメリカンフットボール協会は3月7、8両日に千葉県八千代市の日本IBM八千代台グラウンドで、東日本のシニアフットボールアカデミーキャンプを開催した。
 育成プログラムに基づいて20歳以上の選手を対象に、トップレベルへの強化育成することを目的としているが、今年は日本代表選手選考の意味も持つ。
 初日の7日には40ヤード走や垂直跳び、立ち幅跳び、20ヤードシャトルランなどを測定するコンバインも行われ、比較的無名の参加学生の中から高い身体能力を見せる選手も現れたという。


 私が訪れた2日目は、午前中の座学に続いて、午後は日本代表の森清之ヘッドコーチ(HC)や、長谷川昌泳コーチのオーバーバイズの下でフルスタイルでの練習も行われた。
 オービック・シーガルズは、東日本大震災から4年たった被災地での活動のため、大橋誠ディフェンスコーディネーターをはじめ欠席となったが、王者・富士通フロンティアーズ、LIXILディアーズ、ノジマ相模原ライズなど強豪チームの主力選手が鋭い動きを見せていた。


 森清之ヘッドコーチ(HC)は「この時期としては、レシーバーやRBがよく動けていた」という。QBも、昨年のアカデミーの際は、肩が出来上がっておらずパスがまだ投げられなかったそうだが「今年は加藤(翔平、LIXIL)や荒木(裕一朗、ノジマ相模原)、平本(恵也、富士通)らが、しっかりとしたボールを投げていた。代表を目標に、きちんと投げられるようにシーズンオフに準備してきたのだろう」と話す。


 新戦力の発掘という点では、「自分も知らなかったポテンシャルを持った若い選手が何人か目についた。今回の代表に限らず、将来が楽しみ」という一方で、IBMビッグブルーのWR栗原崇のように、実績や実力は十分だが、負傷明けでまだフルスタイルでの練習には参加できない選手も多く、「こういう場にきちんと作ってきてアピールしている選手との比較で、悩みどころ」ともいう。


 世界選手権の試合日程や対戦相手が3月の段階でここまで決定したのはあまり例がない。森HCは「トーナメントの方式がかなり変則的で、米国やカナダなどと2回戦う可能性も高い。手の内を知られた相手とやってもう一度勝たなければいけない。特にオフェンスのパッケージを複数用意するなど相当に考える必要が出てくる。3人目のQBなど、選手選考に影響するかもしれない」という。


 実力差があって勝利を計算できる試合がほぼなく、4試合ともハードでタフな試合になるというのも過去の大会とは違う。森HCは「能力の高い選手であっても、負傷しやすかったり、疲労からの回復の遅い選手は選びにくくなる」と話す。


 今回の代表チーム作りのスタートラインに立った森HC。「絶対勝つんだと気持ちや精神論よりも、今はいかに具体的な方法論を積み重ねていくか。具体的な積み重ねがあれば、直前になれば自然に気持ちは上がっていく」と、京大時代の恩師・水野彌一さんばりの言葉で締めくくった。


 私個人は、今回の世界選手権の日程に注目している。


 7月中旬は、観戦という点では米国スポーツの「夏枯れ、ネタ切れ」の時期だ。NFLはシーズン前で大半のチームはキャンプインもしていない。
 バスケットボールのNBAとアイスホッケーのNHLは6月でシーズンが終了する。人気の高い米大学スポーツは、フットボールもバスケも野球も完全なオフシーズン。唯一行われている野球のMLBも、準決勝が予定されている7月15日は、オールスターゲームの翌日だ。つまり北米4大プロスポーツの試合がまったくない「空白の日」なのだ。


 そんな日に、フットボールの聖地カントンで繰り広げられるアメフットの国別対抗戦。スポーツ専門局ESPNなども何らかの形で取り上げると予想している。
 国技でありながら当の米国の国民がほとんどがこれまでよく知らなかったアメフット世界選手権の位置づけが変わるきっかけとなる可能性がある。


 日本代表が、旋風を起こす大きなチャンスだと思ってほしい。

【写真】オール三菱RB小形を追う、富士通LB海島と、立命大でDBとして活躍した大貫=撮影:Yosei Kozano