週刊TURNOVERの「チームメート」中村多聞さんは、小欄を熱心に読んでくれて、いつもいろいろと率直な感想を語ってくれる。
 よく言われるのが「勝った負けたとか、試合後にヘッドコーチがこういったとか、どうでもエエから、小座野さんがどう思ったかを読みたい」という意見だ。また、「カメラマンとして、このプレーをこう撮ったのはなぜか。どう考えながら撮ったのか書いてほしい。そやないと『レンズ越しのストーリー』にはならんでしょう」と言われることもある。


 確かにその通りだ。しかし私は、知見の乏しい身が何かを語るよりもアメリカンフットボールのプレーそのものや、ゲームの面白さを伝える方がはるかに大切だと思っている。だからこのリクエストには向き合ってこなかった。


 今回、宗旨変えしたきっかけは、NFLグリンベイ・パッカーズを今オフに解雇されたTEブランドン・ボスティックのコラムを読んだことだ。
 ボスティックは、今年1月のNFCチャンピオンシップ、パッカーズ対シアトル・シーホークス戦で、パッカーズ5点リード残り2分余、シーホークスのオンサイドキックの際にブロッカーの役割を放棄してボールを奪いに行って失敗、シーホークスに攻撃権を与えた。パッカーズがスーパーボウルを逃した「戦犯」の1人とされていた。

 「‘I Jumped Up, Reached for the Ball … and My Life Changed Forever'」と題されたコラムは、NFLジャパンのサイト内に「人生を変えた1プレイ、TEボスティックの手記」というタイトルで日本語訳が掲載されている。
http://nfljapanblog.com/blog/editor/2015/03/1te.html


 詳細はお読みいただくとして、文中に出てくるアーネスト・バイナーの「自分の犯したミスと向き合い、それから逃げるな」という助言が印象に残った。
 クリーブランド・ブラウンズやワシントン・レッドスキンズでRBとして息の長い選手生活を送ったバイナーも、かつて大きなミスをしていた。バイナーの側から、ボスティックに連絡を取ったそうだ。


 私は、業務としてアメリカンフットボールを撮影しているのではない。米国でNFLを撮り続けるタック牧田さん流に言えば「自分一人の戦い。自分との契約」だ。撮影時にミスをしても、誰からも指弾されることはなく、俸給がなくなったり、異動になったりすることもない。まして解雇されることなどあり得ない。
 ミスを反省するのは自分だけ。そういう甘さを承知の上で、自分の2014年シーズンを振り返る。


 (1)11月30日の社会人準決勝、富士通フロンティアーズ対オービック・シーガルズ戦で第4クオーター14分に4thダウンギャンブルで、QBコービー・キャメロンがタッチダウンを奪ったシーンだ。図柄としてはどうということない1枚だ。
 しかし勝負としてはこの1プレーが昨シーズンの行方を決めた。絵の良し悪しではなく、絶対に撮り逃してはいけない写真だった。正面に回り込まず横から撮影していた理由は、オービックディフェンスがストップする可能性をかなり見越していたから。
 結果的にはTDとなり、この後サイドラインに戻りながら両腕を大きく広げて喜ぶキャメロンも撮影できた。


 (2)1月3日のライスボウル。関学大ファイターズが第3クオーターにゴール前まで攻め込み、スペシャルプレーでRB橋本誠司からのパスに、TE松島紘樹が飛びついたシーンだ。
 松島はボールを捕り切れなかったが、スペシャルプレーを連発して富士通を追い詰めた関学大を象徴する一枚だった。写真的には少し後ピンで、必死で追いすがる富士通DB藤田篤の方にピントが来ている。


 (3)Xリーグファーストステージから。10月19日の東京ガスクリエイターズ対明治安田パイレーツ戦の第3クオーター、ジェットモーションの明治安田WR若島慎兵に、東京ガスLB松川陽志がナイスタックル。松川は弾き出したボールを、この後自分でリカバーをしてモメンタムを引き寄せた。


 (4)XリーグファーストステージのIBMビッグブルー対東京ガスクリエイターズ戦(9月17日)。第1クオーター6分、IBMのRB末吉智一がハードリングで東京ガスディフェンスを飛び越えたのだが、ジャンプの頂点で完全に頭が切れた。ひどい失敗だった。末吉の動きに不意を突かれたわけではなかったと記憶しているが、ジャンプ力が予想を超えていた。


 (5)XリーグファーストステージのLIXILディアーズ対オービック戦(10月19日)。第4クオーター、LIXILゴール前まで攻め込んだオービックが、エクスチェンジミスが原因でファンブル。LIXILのDL重近弘幸がリカバーしたボールを高々と掲げた。
 位置取り的に裏を食った。撮影場面としては、オービックのTD狙い。仕方がない部分もあるが、仕方がないを繰り返していては進歩がない。


 (6)写真はない。フレームアウトしたとか、裏側だったとかいう以前に、撮り逃した場面はそもそも写っていない。ここに載せられない無数の場面が自分の最大の失敗作だ。
 写真は結果がすべて。その意味ではスポーツ競技に似ている。名将・水野彌一さんがコラムで書いている言葉に当てはめれば、「写真はうまいから撮れるのではない、撮った方がうまいのだと言われる。確かにこれは真理の一面である。一方で、下手では撮れないというのも、明白な事実である」と言い換えできるだろう。


 「当たり前に撮れる、圧倒的な技術を身に付けよ」ということになる。この道に進んで27年目。毎日新聞新入社員の頃に私を叱咤し続けたデスク(関学大出身でアメフットファンだった)は「コザやん、まだそんな下手クソか。あかんなあ」と天上から舌打ちしているかもしれない。


 タック牧田さんから、先日メールが届いた。NFL撮影49年目の昨年、一時体調を崩して入院したという。それでも撮影を休んだのは1週だけだったそうだ。2015年は取材50年目となる牧田さんは「ともかく次のシーズンはフルパワーでやり抜くつもりです」と結んでいる。私など、まだまだ修行が足りない。

【写真】(1)富士通vsオービック シーズンを決めたキャメロンのTD=撮影:Yosei Kozano