久しぶりにXリーグの話題を書きたい。日本社会人アメリカンフットボールXリーグは、2月22日に2014年シーズンの納会を開き、「オールXリーグ」(オフェンス11人、ディフェンス11人、スペシャルチーム3人)と、最優秀新人選手、最優秀選手(MVP)を発表した。
 最優秀新人は富士通フロンティアーズのQBコービー・キャメロン、MVPには同じく富士通のジーノ・ゴードンが選ばれた。


 各チームのヘッドコーチの投票で選ばれたオールXリーグは、富士通とオービック・シーガルズの2チームで25ポジション中17ポジション(富士通9、オービック8)を占める結果となり、あらためて両チームの実力が浮き彫りとなった。
 他に選ばれたのは、LIXILディアーズ(3人)、IBMビッグブルー(2人)、ノジマ相模原ライズ、アサヒ飲料チャレンジャーズ、エレコム神戸ファイニーズ(各1人)だ。


 また、2000年から始まったこの表彰で、初めてパナソニック・インパルス(松下電工時代を含む)からの選出が途絶えた。パナソニックは2013年シーズンには5人選出されており、優れた選手は依然として多いが、エレコム神戸の躍進で、得票が分かれたためだろうか。


 個人では、ベテランの活躍が目立った。DEケビン・ジャクソン(オービック)で10年連続10回目。回数、連続年数ともに最多となった。オービックの切り札、木下典明はWRとリターナーで選ばれた。
 38歳となったLB高橋睦巳(エレコム神戸)は初の選出。そして富士通のディフェンスリーダー、LB鈴木將一郎は2年ぶり4回目。イースト、セントラル、ウェストの3地区で、首位チームをけん引した4人の話をまとめた。


 ▽DEケビン・ジャクソン(オービック=10年連続10回目)
 誰もが認めるオービックディフェンスの象徴。10年連続でリーグベストのDEに選ばれた。9回で並んでいた同僚のLB古庄直樹が、負傷で長期欠場したため選出されず、単独最多の受賞となった。10年間を振り返って「頑張ったかな」と納得したシーズンもある。


 ただ、個人よりもチームが勝つことがメーン。昨年は残念な納得がいかないシーズンだった。10年連続については、「日本に来て、10年間で日本一に5回なった。チームが勝った中でもらっているのは誇りに思う」。
 2009年から3シーズン在籍したカール・ノアやバイロン・ビーティー・ジュニアら、コンビを組む後輩米国人選手の能力も引き出してきたことについては、「それを特別意識はしていない。自然にそうなっている」と話した。


 次のシーズンの目標は「やはり勝つこと」。個人の目標としては、QBサックを増やしたいという。「サック数がここ何年かで一番少なかった」。QBを脅かす迫力は変わらないように見えるが、公式記録上は秋シーズン8試合で1サック。確かに物足りない数字だ。
 「クラフト、キャメロン。すごいQBが増えてきた。パスを投げる前に封じ込むのが僕の仕事だから」と言う。昨年11月で33歳になった。引退も「考えない訳じゃないけれど、まだまだプレーできる」。来たるシーズンは新たなトレーニングを導入し、フィジカルを鍛え直して「ニューチャレンジ」。王座奪還へ燃えている。


 ▽WR・リターナー 木下典明(オービック=3年連続3回目)
 エース番号「18」が似合う、日本を代表する快足WR。2014年シーズンは、リターナーとしても選出され、初のダブル受賞となった。
 しかし喜びはない。チームは社会人準決勝で富士通に敗れ、個人としてもパスレシーブ距離で中村輝晃クラークに遅れをとった。「今年王座を取り返さないと、今後数年は厳しくなる」。チームの勝利が第一で自分の結果は二の次と言いながらも「自分がやるべきことをやっていたら、結果はついてくる」と語る。オービックの昨シーズンは「勝てるチーム作りができていなかった。富士通は勝つだけのことをやってきたから勝った」と振り返る。


 秋のシーズン前に、もう一つ大きなミッションがある。7月に米国で開催される世界選手権だ。「若いレシーバーに、いい選手が増えてきた」と中村クラークや栗原嵩(IBM)らの台頭を意識するようになったが「負ける気はさらさらない」と意地を見せる。
 若いWR陣の目標になるような存在でいたい。だから日本代表に選ばれることは目標ではない。米国を倒すのが、昨シーズンから自分の中で掲げている目標。「カナダに勝つのは当たり前、アメリカに勝ちにいく」ことを考えて毎日を過ごしているという。
 世界ランキング3位の日本は米国、カナダ、メキシコと同じ上位グループに入り予選ラウンドを戦うことになったが「僕はその方が楽しい」と燃えている。


 昨年末で32歳となったが衰えはない。肉体だけでなく、メンタル面でも若い気持ちと発想を持っている。「若い奴らなにしてんねん」という気持ちでやっている。


 ▽LB鈴木將一郎(富士通=2年ぶり4回目)
 優れたLBがそろう激戦区を勝ち抜いて選出され、チームも悲願の日本一に輝いた。「ずっと優勝したいと思ってやってきた」。過去、個人としては日本代表やオールXに選ばれてきたが、同僚やライバルの中で、自分は大学でも社会人でも優勝を知らずに過ごしてきたという思いが頭を離れなかったそうで「社会人13年目で、一番いいシーズンとなった」。


 スピードあふれるパスラッシュが持ち味だったが、35歳になった昨シーズンは、滑らかにボールに絡むようになった。意識してスタイルを変えたというわけではないというが「ディフェンスのシステムが変わり、そこだけでは勝負できないと思ったので、周囲に気づかれないように少しづつ模索していた」。モデルチェンジとチームの成功がうまくかみ合う結果となった。


 来季に向けて「周囲からは連覇を目指せとか、追われる立場だから大変だとか言われるが、個人的には意識はしていない」という。自分のやるべきことをしっかりやり切って、チームに良い影響を与えられればと語る。
 07年、11年と2大会連続で参加した世界選手権も「選んでもらえるなら」と意欲的だ。引退についてと尋ねると「今までもそうだが、一年一年と思ってやってきたので、これからも同じ」と話した。


 ▽LB高橋睦巳(エレコム神戸=初)
 昨シーズン、Xウエストに吹き荒れた「エレコム神戸旋風」の立役者の一人。身長は167センチ、表彰式のあいさつ順は193センチのケビン・ジャクソンの後だったため、マイクの位置が高すぎて届かないことをおどけてアピールし、笑いを誘った。
 そんな小柄な体から繰り出すハードタックルで、ファーストステージ5試合でラン喪失189ヤードという圧倒的なディフェンスをリードした。


 1月に38歳になった歴戦のつわもの。2000年代には米国のアリーナフットボールに連続で参戦するほどのスピード豊かなWRだったが、30歳を過ぎてディフェンスに転向。オールXリーグには意外にも初の選出となった。


 日大では篠竹幹夫監督の薫陶を受けた。富士通で5シーズン、アサヒ飲料、オービックで4シーズンずつを過ごしてきた。オービック時代には日本一も経験した。
 「試合だけでなく、いろいろな経験をさせてもらって、人間的に大きな成長ができた。その成長があったから今回のこの賞につながった」と、所属したチームへの感謝を忘れない。今年狙うのは日本一。「関西からXリーグを盛り上げる。そのために死力を尽くして頑張る」と言い切った。


 各チームは、すでに新たなシーズンに向けスタートを切っている。王座奪還に燃えるオービックは、LB古庄が選手兼任でディフェンスコーディネーターに就任、米国人のオフェンスコーディネーターも招聘したという。
 日本代表選考に向けた動きも3月には活発化する。3月末には「富士通スタジアム川崎」が竣工する。春はすぐそこまで来ている。

【写真】MVPに選出されたゴードンと、10年連続オールXのジャクソン