現地時間2月1日(日本時間2日)の第49回スーパーボウルで、10年ぶり4度目の王者となったニューイングランド・ペイトリオッツ。MVPに輝いたQBトム・ブレイディのメーンターゲットのタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキーは、第2クオーターに22ヤードのタッチダウン(TD)パスをキャッチした。
第4クオーターの逆転ドライブでは、20ヤードと13ヤードのパスレシーブでTDのお膳立てをした。シアトル・シーホークスのオフェンスが試合を通じてTEのパスレシーブがなかったのとは対照的だった。


 グロンコウスキーは今季レシーブ距離(1124ヤード)、TD数(12)でチーム1位、レシーブ回数(82)で同2位。2度目の1000ヤード超え、オールプロ選出となった。


 NFLを見ていて、この10年ほどのオフェンスの大きな変化の一つが、ビッグプレーメーカー、ポイントゲッターとしてのTEの台頭だと思う。データの裏付けがある。


 2005~14年までの10年で、レギュラーシーズンに1000ヤード以上レシーブしたTEは15人、800ヤード以上のパスレシーブを記録したTEは55人もいる。
 その前の1995~2004年では、1000ヤード以上は4人、800ヤード以上は16人。1985~94年の10シーズンでは1000ヤード以上が4人、800ヤード以上は13人だった(すべて延べ人数)。 この10年の変化が分かると思う。


 いわば「スーパーTE」の登場だ。トニー・ゴンザレス(元チーフスなど)、後に続いたジェイソン・ウィッテン(カウボーイズ)、アントニオ・ゲーツ(チャージャーズ)から流れが変わったと思う。
 ゴンザレスは通算で1万5000ヤード、ウィッテンとゲーツは1万ヤードを超えている。ゴンザレスは昨シーズン引退したが、現在でも衰えを見せないウィッテン、ゲーツに加え、グロンコウスキー、ジミー・グラハム(セインツ)、グレッグ・オルセン(パンサーズ)、バーノン・デービス(49ERS)といった面々がトップ集団を形成し、マーセラス・ベネット(ベアーズ)、コービー・フリーナー(コルツ)、ジョーダン・キャメロン(ブラウンズ)、ジュリアス・トーマス(ブロンコス)らが次のスーパーTEを目指す図式だ。


 彼らに共通するのは、2メートル近い長身で体重も110キロ以上の大型プレーヤーということだ。彼らが活躍する戦術的理由について、Xリーグの鹿島、LIXILディアーズでTEとして8年間プレーし、今季で引退した庭野隆史さんに聞いた。


 庭野さんは「彼らが、インサイドレシーバーの位置から、パスコースに出た場合、マッチアップするのはLBのケースが多く、『スピードのミスマッチ』が生じる。一方で、アウトサイドレシーバー(シチュエーションとしては、特にゴール前が多い)の位置から、パスコースに出た場合、マッチアップするのはDBとなる場合が多く『身長のミスマッチ』が生じる。この2点に、QBからの正確なパス、そしてWR並みの確実なキャッチングが加わることによりビックプレーが生まれる」という。


 付け加えるなら、やはりサラリーキャップ制やフリーエージェント(FA)による、徹底した戦力均衡策の影響が大きいと思われる。
 オフェンスでは、優れたWRを2人、3人とそろえるのが難しい。能力の高いTEがチームのエースとまではいかなくとも、2番手レシーバーとなることは普通だ。ディフェンスでもLBやDBに優れた人材をそろえて維持するのはなかなか難しい。ミスマッチがより生まれやすくなる。


 また、身体能力に優れ、ボール扱いに長けているバスケットボール経験者の流入も大きい。ゴンザレスは大学時代バスケットボールでもトップ選手として活躍していたし、ゲーツやグラハムは、バスケット専門から転向して、プロフットボールで成功している。シーズンスポーツ制で、複数の競技を掛け持ちできる米国ならではともいえる。


 日本のアメフットでは、大半のチームでは、ゲームの中でTEは依然としてブロッカーとしての役割が多く、レシーバーとしての能力が最大限に発揮できているとは言えないようだ。
 Xリーグでは、2014年に200ヤードを超えたのは、ジョン・スタントン、小林遼平(ともにIBMビッグブルー)と、ベテランの二宮宗(明治安田パイレーツ)だけ。あとは吉田武蔵(パナソニック・インパルス)の197ヤード4TDが目につくぐらいだ。


 その一方でTEの大型化は進んでいる。昨春の日本代表、大橋智明(富士通フロンティアーズ)は187センチ、112キロ、森章光(オービック・シーガルズ)は189センチ、100キロだ。
 大橋と同じく富士通に所属している金本啓志は187センチ、106キロ、日本大学フェニックスで活躍した水野悠司は188センチ、103キロ、立命館大パンサーズの永野力丸は186センチ、111キロ。水野と永野は社会人でもプレーするだろう。


 大きいだけではない。大橋、森は時折見せるレシーブ力に非凡なものを感じるし、金本、水野は運動能力も高い。特に水野は40ヤードを4秒6で走るとも言われている。


 鍵はやはりQBのパス能力だろう。NFLでも、数字を残しているTEは、ブレイデイ、ドルー・ブリーズ(セインツ)、トニー・ロモ(カウボーイズ)らトップ級のパサーが能力を引き出している。


 庭野さんが関学大から入社したときの鹿島は、ゴリゴリのラン攻撃が主体。ブロッキングTEとしての起用がメーンだったが「個人的には、もっとパスを取りたかった」という。
 NFLでは、DEのJ・Jワット(テキサンズ)がTEにチャレンジしてTDを記録し話題を呼んだ。小難しい理屈を抜きにして、大きな選手がボールをキャッチしTDするのはなかなか痛快なプレーだ。そんな規格外のTEを日本でも見たい気がする。

【写真】パスをキャッチして前進する富士通のTE大橋=撮影:Yosei Kozano