2014年シーズンのNFLはいよいよ大詰めを迎えている。日本時間で1月19日早朝にあったNFCチャンピオンシップ、シアトル・シーホークスとグリーンベイ・パッカーズの試合は、最終盤に驚くような波乱の展開が続き、シーホークスが延長オーバータイムの逆転勝利で、2年連続のスーパーボウル出場となった。
 この試合、残り1分25秒でシーホークスのRBマーション・リンチが逆転のタッチダウン(TD)を奪ったシーンが興味深い。


 OL、レシーバーのブロックが完璧に決まり、誰にもタックルされることなく20ヤード近く走ったリンチだが、ゴール目前で急に減速。ほとんど立ち止まるようにしてエンドゾーン内に入った。
 第4クオーター残り4分足らずから12点差をはね返した奇跡的な逆転劇にもリンチは喜ぶ様子はなく、駆け寄るチームメートを制するようにさえ見えた。
 おそらく、リンチの心中は「もう少し時間を使わなければ。直前で止まっても良かった」というものではないか。確かにパッカーズのQBアーロン・ロジャースのパス能力を考えれば、1分25秒あれば得点を取るのは容易だろう。


 こういう考え方をする人たちは多いようだ。おそらく2012年2月の第46回スーパーボウルで、第4クオーターにニューヨーク・ジャイアンツのRBアーマド・ブラッドショーのランプレーに対して、対戦相手のニューイングランド・ペイトリオッツ守備陣が故意にタックルせずにTDさせ、1分弱の時間を残してQBトム・ブレイディのパスによる反撃に望みをつないだプレーが念頭にあるのだろう。


 しかし私は、テレビを見ながら、今季取材中に聞いたある言葉を即座に思い出していた。富士通フロンティアーズ、藤田智ヘッドコーチ(HC)の「もう少し時間を使って得点をという意見をよく聞くが、オフェンスの立場から言えば、TDは取れるときにしか取れない。時間を使ってのフィールドゴール(FG)はあると思うが、時間を使ってTDというものはない」という言葉だ。


 リンチのTDに当てはめれば、パッカーズはその時点でタイムアウトを3回残しており、仮にゴール前のショートヤーデージからプレーを重ねてもほとんど時間を消費できない。
 もともとレッドゾーン(ゴール前20ヤード以内)の攻撃では、投げるエリアが狭くなるためにパスが難しくなる上に、この日のシーホークスのQBラッセル・ウィルソンは4インターセプトを喫している。そして何よりもシーホークスは14―19で負けており、逆転にはTDが必要だった。藤田HCの言う「TDは取れるときにしか取れない」という場面だったのではないだろうか。


 話は変わる。現在、日本のNFL中継には社会人、学生からそうそうたる顔ぶれの現役指導者が解説者として登場する。
 Xリーグからは日本代表、LIXILディアーズの森清之HC、オービック・シーガルズの大橋誠HC、アサヒビール・シルバースターの有馬隼人オフェンスコーディネーター。学生からは、追手門学院大学の水野彌一総監督、大阪学院大学の髙野元秀総監督、関西大学の板井征人HC、龍谷大学の村田斉潔HC。NFCチャンピオンシップでは、NHK-BSで高野さんが、リンチのTDにつながったオンサイドキックでのパッカーズのミスプレーについて、選手の役割を明快に解説してくれた。


 プレーや戦術、隊形の解説にとどまらない。局面をどうとらえるか、トップではない選手をどう評価するか。NFLと日本でレベルの差はあっても試合をマネジメントする立場にある人たちの思考は、私のような門外漢からは実に興味深く教えられることが多い。
 日本で試合後のインタビューでは、なかなか聞けないような考え方やフットボール観を意図せずに語っていることも多い。


 NFLの現地解説、実況は最新の戦術や、チームや個々のディテールな情報に富んでいるが、アメリカンフットボールのゲームという大きな道の中で枝葉末節に入ってしまい見落としている部分もあるのではという気がする。


 私が、是非聞いてみたいのは、藤田HCと関西学院大学の鳥内秀晃監督のNFL解説だ。藤田さんは、過去に1年だけ解説していたシーズンがあったように記憶しているが、鳥内さんはないはずだ。 


 京都大学の監督を退かれた水野さんがNFL解説者として登場した時は話題を呼んだ。「鳥内節」が現在のNFLを語ったらどうなるか。考えただけでもワクワクする。
 そもそも、関学大といえば、米カレッジフットボール中継や、NFL中継でも「プロフェッサー・ケン」として名解説を披露された武田建名誉教授(元学長、元アメリカンフットボール部監督)がいる。突拍子もない話ではない。


 あるいは、スーパーボウルの解説はその年のライスボウルで戦った監督、HCが二人で担当するというのも面白いと思う。テレビ放送には素人の思い付きで申し訳ないが、どこか検討してくれる放送局はないものだろうか。

【写真】富士通の藤田HC(左)と関学大の鳥内監督=撮影:Yosei Kozano