昨年に引き続き、クリスマスにこの原稿を書いている。関西学院大ファイターズにも、富士通フロンティアーズにもクリスマスはない。勝たなければ、正月のめでたさも失われる。8月末に始まった日本のアメリカンフットボールは、来年1月3日に東京ドームで日本一を決める大一番、日本選手権「ライスボウル」を迎える。
 悲願の社会人王者となり初出場初優勝を狙う富士通・藤田智ヘッドコーチ(HC)と、4年連続出場で「打倒社会人」と2度目の王座を目指す関学大・鳥内秀晃監督の話を詳細な部分を含めて書き起こしてみた。


 <ライスボウル発表記者会見=12月16日>
Q:ライスボウルに向けて主力選手のコンディションは。
鳥内:西日本大会の決勝で副将の小野(耕平、LB)がけがをしたのだが、ライスボウルには間に合うと思う。ライスボウルにはほぼベストの状態で準備ができると思う。
藤田:何人か負傷者が出ている。QBのコービー・キャメロンもちょっと負傷をした。状況が僕の手元に入ってきていないのでこれから確認するところ。ちょっと時間があるのでライスボウルにはそろっていけるんじゃないかと思っている。


Q:相手の警戒する選手、自チームの活躍してほしい選手は。
鳥内:(警戒する選手は)QBのキャメロン選手、それにRBも。外国人いっぱいおるんでね。プレー制限してほしい。特別ルールで10プレーだけとか。フットボールが面白くなくなるんで。(活躍してほしい選手は)幹部含めて、4年生が皆頑張っていかないと勝負にならないんで。(過去)3年間負けて、今年のチームも「社会人を倒せ」と目の色が変わっている。それがかなうようにやるだけ。
藤田:(今季は)先が見えない状態で戦ってきたので、関西学院さんのことは全く分かっていない状況なので、なんとも申し上げられない。QBの斎藤君はウチのクラブ(富士通フラッグフットボールクラブ)の出身で、対戦が楽しみ。ただ、誰がということではなく関西学院さんはすごく上手なフットボールをするので、それにのまれないようにしなければ。ウチの選手で活躍してほしいのは、攻守のライン。ここがしっかりしていることがゲームの鍵だと思う。


<一問一答>
▽富士通・藤田HC
Q:今季、壁を破ったチームの意識改革をより具体的に言うと。
A:僕らは誰一人として「これをしたら勝てる」という確信はなかった。わからないまま、「どうしたらいいんだろう」と考え、春から試行錯誤しながら来ているのが今の段階。(社会人王者になった)今でも確固たるものはない。


Q:準決勝で富士通が勝った相手、オービックの大橋さん(HC)は富士通の初優勝に「一皮むけたチームとそうでないチームの差」という答えだった。一皮むけたというのは藤田さんの言葉にすると。
A:それは他の方が見てそう思われることであって、我々自身は気付いていない。変わっているのかもしれないがわかっていない。そこに気が付くのは自分たちが一番遅い。結果が出たので、たぶん変わったのだろうなと。試合でちゃんと力を出せるのがうまいということ。技術があったとしても試合でそれが出せないとしたら、それは下手。技術をちゃんと発揮するためには心に惑わされている部分があると駄目。そういう意味で今季は、選手が自分のやるべき仕事に集中できているのが試合で力を出せている原因かなと思う。


Q:準決勝のオービック・シーガルズ戦で(第4クオーターに)3点差に詰め寄られたときにどう思ったか。
A:そういうときに「あー、あかんのかな」と思った段階で負けている。あとで試合を見直すと、いつもの負けパターンにはまりかけていた。だが、選手たちがそれに影響されなくなったことが今季一番進歩したところだと思う。それくらい、次に自分たちがやることに集中できていた。


Q:勝負弱さを克服できたのは。
A:今やることに集中すること。ここが大事だと思うから力が出ない。練習でも試合でも、いつも同じように大事だと思って、瞬間瞬間に集中することが自分の自信になる。
Q:オービックの大橋さんがよく「起きてしまったことにとらわれずに、今から起きることに意識を集中しろ」と言うが、似た部分があるように感じるが。
A:表現が違うだけで、同じことだと思う。今できることしか自分をコントロールできない。終わったことや、未来のことはなんともならない。今季始まる前に、どうしたら(4連覇の)オービックに勝てるのか、先が見えない、わからない中で、選手たちが唯一できることがそれだった。


Q:ジャパンXボウルで勝った後も、ライスボウルに向けて盛り上がっていくぞというようなことを言わなかったのはそういう意味合いもあるのか。
A:選手たちはわからない。僕個人としては、以前(アサヒ飲料チャレンジャーズ時代に)勝った時のような「わーっ」という感じではない。


Q:社会人代表として、学生に負けるわけにはいかないという気持ちは。
A:それがまたプレッシャーになる。そういう状況で戦うには、(関学大は)表現がよくないですが「最悪の相手」。いちばん危険な相手だと思う。


Q:関学大の何が嫌なのか。
A:単純な力勝負にならない。関学さんの土俵で試合をしてしまうと、まったく違うところでの勝負になる。学生のトップ選手が集まっているので、どう考えても社会人の方がいい選手が多い。我々としては、(力勝負の)そこに土俵を戻さないといけない。むこうの土俵で戦ったら、我々くらいの能力ではやられる。関学の皆さんは「今回はオービックでなくてよかった」と思っているはずなので「これは日本一になるチャンスだ」と思っているはずですよ。そこに乗らずに、力とスピードと根性で勝負するしかない。関学にいろいろ仕掛けられるだろうし、いろいろな試合運びをされると思うので、試合の中で押さえないといけないポイントをしっかり持っておく。キャメロンの状態に関わらず、他のQBが出ても仕事はしてくれると思うし、その準備もする。


▽関学大・鳥内監督
Q:試合のシミュレーションは。
A:まだ全然できていない。今コーチ陣が(富士通の試合映像を)見ている。社会人はどこが来ても強い。一方的な試合にならないようにはしなければならない。ディフェンスが(富士通オフェンスを)ゼロで抑えるのは不可能なので。こちらがミスをしないで食らいついていきたい。


Q:今年のチームはライスボウルが目標だったのか。
A:それはちゃうねん。学生でたまたま勝っているから。負けていたらライス(ボウル)じゃない。関西学生を勝って、甲子園ボウルを勝って(学生王者になるのが)そんな簡単なことではない。せやけどあの学年は最後やしな。


Q:ライスボウルはどんなプレーで戦うか。
A:持っている力を出すだけ。ビッグゲームでは持っている力を発揮できないことは多い。(甲子園ボウルの)日大もそうだし、立命館もそうだし。我々はそこでちゃんと戦えた。


Q:力を出すためにコーチとしてやっていることは。
A:ネガティブに考えないこと。「自分のせいで」というふうにならずに、自分のプレーをしてくれることが一番だ。


Q:2002年にライスボウルで戦ったときの藤田HC(当時はアサヒ飲料)の印象は。
A:あの年齢(当時34歳)で、前年もライスボウルに勝っていて、ちゃんとコーチをやっていた。人を使うのがうまいという印象。


Q:自分たちの戦略、自分たちのペースで戦えるか。
A:我々のデザイン通りにいけたらいいのだが、あの外国人のDE(オースティン・フリン)とか、日本人の選手もみなすごい。デザインを発揮する前に潰されたら終わりだ。そのデザインはもっと練っていくのだが。やっても無駄なプレー、個人能力で止められてしまうプレーもあるだろうから、それを排除していきながら考えていかなければしょうがない。


Q:オービックに肉薄した一昨年のチームを基準にすると、昨年は8割という話だった。今年のチームはどれくらいか。
A:攻守両方とも、ラインは去年の方が人材もいたし強かった。だが、オフェンスはプレーのバリエーションをかなり増やした。その点相手が的を絞りにくくなっている。QB、RB、WRで我々が持っている人材をうまく活用できていると思う。


Q:QBの斎藤は先発として2年目だが、3年前のエース畑(卓志郎、現オービック)や、過去の関学大のQBと比べてどのくらいのレベルにあるか。
A:畑は走れる魅力があった。スクランブルでもロングゲインできた。斎藤のランはそこまでではない。できるだけパスのコントロールミスがないようにしなければならない。斎藤の肩の強さは畑以上だから。


Q:米国人選手は別としても、社会人のトッププレーヤーと勝負できるタレントは、今年のチームでは。
A:バックフィールドにはいる。問題は攻守のライン。ラインが頑張ってくれたら勝負ができるが、ランでゴリゴリ進まれたら終わりやね。


Q:藤田HCは「関学は『オービックが来なくてよかった』と絶対思っているはずだ」と言っているが。
A:そんなことはまったくない。以前から、富士通の方が強いと言われてきた。選手のタレントも富士通の方が上だと言われてきた。我々からしたら「えっ、あのオービックよりも強いのか」ということになる。ただ、オービックはウチとやるのに慣れてしまっていたから。裏プレーも含めて警戒感がすごかった。土俵に引きずり込めないというか、なかなか引っかかってくれなくなっていた。その点では富士通はまだチャンスがありそうだ。


Q:関学ワールド、鳥内マジックが全開ということか。
A:ウチのコーチがちゃんとやってくれれば。向こうの失敗からチャンスをつかめれば。インターセプトとかファンブルリカバーなど、(ジャパンXボウルの)IBMのようなことに富士通を追いこんでいければ、面白いやろなあ。ウチがリードするほうが面白いのではないか。向こうが焦るような展開になれば一番いいのだけど。オフェンス、ディフェンス、キックでいろいろと仕掛けていきたい。普通に戦ってしまったらなにもできないから。


(※)ここで、突然司会の近藤祐司キャスターから「鳥内監督、富士通の西村(豪哲、キッカー)選手は60ヤードフィールドゴール(FG)も可能と言っていますがどうですか」と振られ、「FGの3点で済むんだったらまだありがたい」と答える。


Q:関学は過去のオービックとの対戦で、ケビン・ジャクソンやバイロン・ビーティー・ジュニアら、外国人DEを無力化してきた。
A:どうやって封じ込めるかというが、その選手を相手にドロー、スクリーン(パス)などいろいろ使い分けていけば可能だ。OL以外の選手も低いブロックで足元にいくとか。どこのチームでもできることだ。毎回毎回厳しいパスラッシュをしてくる。普通にいったらOLが取ることはできない。OLを助けるために何ができるか。動き回られたら嫌だから、彼らが動けないようなプレーをしなければしょうがない。いろいろなことをやったらええねん。


Q:その中で、勝負できるタレントがどれくらいいるのかということになるが。
A:繰り返しになるが、去年よりはウチはラインのサイズが小さい。フットワークがよくなっているがパワーラッシュ系には弱い。(QB斎藤には)通常のドロップバックのパスだけではなく、毎回位置を変えて投げさせる。


Q:甲子園ボウルはパスを封印して隠した印象がある。
A:もっと投げさせる予定だったが、あれだけランが出ると思っていなかった。ああいう展開になると投げる必要がない。


Q:ライスボウルではそのパスが見られるのか。
A:それは投げないとしょうがないでしょう。ランだけではどうしようもない。(富士通は)LBも速いし、いい。タックルも強いので壊れないようにやるだけです。我々は、1本目(の選手)と2本目の差があるので。


Q:年末年始のカレンダーの関係で、今年も社会人は練習時間が多めに取れると思うが。
A:今回は、我々学生も休暇の期間が長い。十分に仕込みができると思っている。完成度を上げていきたい。


Q:キャメロンの出場が不明だが。
A:だけどね。控えの平本(恵也)もいいんです。投げて走れる。一番ディフェンスが守りにくいタイプのQBだ。


Q:愚問で申し訳ないのですが手ごたえはありますか。
A:(ジャパンXボウルで)IBMのOLがそれほど強くないのに、(QBのクラフトが)パスを投げられていた。ということはチャンスはあるのだろうなと。工夫をすればQBへのプレッシャーをかいくぐってパスを投げられるのだろうと考えている。(鷺野聡や橋本誠司ら)RBが皆パスを捕れるのも強みだろう。いろいろ使い分けて、インターセプトだけはなしにやることができれば。3アンドアウトでパントになってしまうようなオフェンスでは、ディフェンスが持ちこたえられない。どのドライブでも最低1回はファーストダウンを取っていく。まあ、いろいろなところで勝負しますよ。今からそれを考える。

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 私個人の予想としては、戦力の優れた富士通優位は動かない。この両チームが、例えば秋の公式戦中の10月もしくは11月に突然対戦したとしたら、富士通が圧勝するだろう。しかしこれはボウルゲームだ。準備期間も長い。関学大に久しぶりの日本一の栄冠のチャンスが大いにあると考える。

【写真】富士通・藤田智HCと関学大・鳥内秀晃監督=撮影:Yosei Kozano、16日、都内