12月15日(月曜日)に日本社会人アメリカンフットボール選手権「ジャパンXボウル」(東京ドーム)で対戦する、富士通フロンティアーズとIBMビッグブルー。富士通が6回目、IBMが初の大舞台、どちらが勝っても初優勝となる。富士通の藤田智ヘッドコーチ(HC)とIBMの山田晋三HCに話を聞いた


 <ジャパンXボウル記者会見で=12月3日>
 ▽富士通・藤田HC
 ここまでの試合で精いっぱいだったので、まだ先のことはあまり見えていない。このような場で、IBMとお互いの初優勝をかけて戦えることをうれしく思っている。IBMには山田HCをはじめとして、(アサヒ飲料チャレンジャーズで)昔一緒に戦った仲間がいる。その仲間とこういう舞台で試合ができることにも感謝している。準決勝でハードなゲームを勝ち抜いて調子は上がっている。「初優勝を」というプレッシャーは強いが、やるのはフットボールであることに違いはない。集中して試合をやっていきたい。


 ▽IBM・山田HC
 この舞台に来られてうれしく思っている。IBMの皆さんの長年のサポートのおかげで、大変感謝している。皆さんが思っているとおり、総合力では富士通が上。ファーストステージでも完敗した。しかし、あれから我々も成長している。キャプテンのジョン・スタントンを中心にまとまっている。1発勝負なので、なんとか勝ちたいと思っている。僕らは失うものは何もない。とにかく思い切りやる。ここまで来た勢い、モメンタムをぶつける。藤田さんとは、2001年の(当時の社会人選手権)東京スーパーボウルを(アサヒ飲料で)僕が選手、藤田さんはヘッドコーチで一緒に戦った。その藤田さんと試合ができることは本当に幸せだ。


 <主な一問一答>
 ▽富士通・藤田HC
Q:藤田さんは富士通ヘッドコーチとしては5回目の出場。これまでの出場と違う部分は
A:(4連覇中だった)オービック・シーガルズに勝って決勝に来たというのは、我々コーチも選手も自信になっている。そこは今までとは違う。


Q:IBMと比べて総合力が上だと見る意見が多いが
A:前回(10月4日のファーストステージで対戦し、41―13で勝利したの)は、あくまでも試合の結果であって、その結果がイコールチーム力ではない。いろいろなことが重なった結果ああいう風になっただけ。こちらが優っている部分もあるだろうけれど、向こうが上の部分もある。山田HCが言っていたように一発勝負だからわからない。力の差は関係ない。


Q:IBMのどういうところを警戒するか
A:IBMの怖いところは勢い。今一番勢いがある。そしてオフェンスにもディフェンスにもキープレーヤーがいる。マークしなくてよいところは少ない。そういう意味で、ディフェンスは止められるチャンスにはきちんと止める。オフェンスは点を取るチャンスにちゃんと取る。当たり前だがそういうことになる。完全に抑えるのは無理だと思うので。


Q:今までの出場ではチャレンジャーとしての意識が強かったと思う。今回は富士通の力が上に見えるが。
A:どういうものがチャレンジャーなのかわからないし、チーム力を比べる方法もない。(富士通が上というのは)そういう雰囲気があるだけ。それは危険だと思う。我々の方が決勝に出ている回数が多いのは事実だが、そこで気持ちが守りに入らないことが大事だ。向こうは初めてだし、思い切ってくるだろう。その思い切りの良さに負けないくらい、こちらが思い切ってプレーできるかどうかが、試合を決める一つの重要なファクターだと思う。


Q:今季は、ノジマ相模原ライズ戦の7―0、あるいはパナソニック・インパルス戦の48―24と、ロースコアからハイスコアまでどういう展開でも勝ち切れるチーム力があると思うが。今度の試合ではロースコアとハイスコアどちらを望むか。
A:あんまり試合の展開を予想したことがない。試合は、やってみないとどういう展開になるかわからない。(69―54だった準決勝の)IBM対リクシル戦のような試合になるのであれば、こちらも頑張って点を取らなければいけないし、そうなるとディフェンスは(タッチダウンの)7点を(フィールドゴールの)3点に抑えることが重要になる。(富士通が)オービックとやった準決勝のような堅い試合になるのであれば、3点をゼロに抑えるというのが勝敗を分けてくるところになる。そうなるとフィールドポジションが重要になってくる。一つ言えるのは、(今の富士通は)試合の展開に関係なく、選手がプレーできているというのは間違いなく進歩だと思う。今までは、左右されている部分が多かった。今季はそういうブレがとても少なくなってきた。それがここまでの結果につながっていると思う。


Q:QBのコービー・キャメロンと日本人レシーバー陣のコミュニケーションは。
A:当初はお互いの「常識」が違っていた。キャメロンが「当然だろう」と思っている部分が日本人選手はできなかったり。日本人のプレーヤー同士の間でもあることが、もう少し大きな差となって起きていた。プレーヤー一人ずつの性格やプレーの質をお互いが理解するのにも時間がかかってきた。(今の状態が)完璧かと問われれば違うと思うが、これから練習を積めば積むほど良くなってくると思う。言葉で説明してわかる部分は、(ギャップが)早く解消するが、実際にプレーするとなると、時間と経験、実戦の場数がいる。(勝ち進むことによって)時間をもらえたのがより良いチームになるためにありがたかった。


Q:キャメロンはどういう選手か。
A:一言でいうと、「うまい」QB。ボールのコントロール、タッチ、(パス守備の)カバーリード、状況判断、すべての面でうまい。日本にもいいQBはたくさんいるけれど、またそことは違う「うーん」と唸るような部分がある。


Q:プレーコールは誰が出している。
A:コービーとサイドラインがやり取りしながら決めている。


Q:(日本一が)悲願と言われて長い。今季の手応えは。
A:チームとしては強くなっていると思う。すごいチャンスだとも思う。しかし、それを意識しすぎるのは一番よくない。やるのはフットボール。リーグ戦の初戦であろうが決勝であろうが同じこと。それに集中できるかどうかが、今度の試合の鍵かもしれない。


Q:前評判ほどには楽な試合にはならないのではないか。
A:圧勝とか、絶対にない。仮に勝つ確率が高いとしても、負ける1回がここで出てしまえばおしまい。ビッグゲームは何が起こるかわからない。起きた時でも慌てずに自分たちのプレーを続ける以外に勝つ方法はないと、皆で認識することだと思う。


 ▽IBM・山田HC
Q:準決勝のLIXIL戦は記録的な大量点ゲーム(69―54)となった。
A:ノーハドルのアップテンポのオフェンスは進んでいる限り、疲れが出ない。ケビン(クラフト、QBでオフェンスコーディネーター兼任)もオフェンスが進んでいるときはすごくいい。オフェンスが止められるようになると非常に苦しい。当然、守備にも影響が出る。点を取れないときはすぐにオフェンスが終わる。結果、50点台、60点台の勝負になる。米国のカレッジフットボールで起きているのがそういうことだ。(富士通の)キャメロンがルイジアナ工科大時代に、テキサス農工大と大変な試合をやった(2012年、59―57でテキサス農工大が勝利)のがその典型だろう。早く点を取ってしまうので。攻撃のプレー数が多ければいいというフットボールになるのはある程度は仕方がない。フットボール自体が変質している。Xリーグにも広がっていくのではないか。僕自身は守備の人間なので、あまりこういうのは歓迎できないのだが。NCAAのルール自体もオフェンスが有利な方向に改正されている。そのカレッジのノウハウをNFLでもちょっとずつ取り入れている。日本もその流れになっていかざるを得ないだろう。


Q:LIXIL戦は第4クオーターに浮き足立ってしまったのか。
A:(ノーハドルのハイテンポオフェンスで)直ぐに守備が回ってくる。しかし、これは守備にチャンスが来ているということでもある。LIXIL戦は、確かにパスで7TDされたが、取られるというリスクを背負いながら勝負して、5インターセプトしている。ビデオを見直したが、(LIXILのQB)加藤(翔平)君が相当良かった。ここしかない、という良いところに投げられ決められた。僕らもわかっているのにやられていた部分があった。彼がリスクを背負ってパスを投げていた。しかし我々も(インターセプトを)5本奪った。そういう裏表の関係にある。TDと2ポイントコンバージョンを2回続けて決められ、16点をドーンと短時間で奪われたが、システムではなく人の問題。修正は可能だと思っている。


Q:ロースコアを望むか、それともハイスコアか。
A:ケビンといつも「点数はどれくらいになるか」と話をするのだが、結局は「やってみなければわからん」ということになる。望むのはハイスコアゲーム。点の取り合いになった方がまだチャンスはあると思う。ロースコアの展開になって、オフェンスの機会が少なくなってしまう方が、僕らにとっては不利。ディフェンスが取られてもすぐに取り返すという試合にして、食らいついていくという形にしたい。前回の試合は、前半が(IBMは6点と)ロースコアゲームだった。ああなってしまっては厳しい。


Q:ディフェンス選手のローテーション起用がある程度必要になると思うが、選手のデプスで富士通と差があるのでは。
A:我々のオフェンスは、スピード感が最速だと思う。最速というのは、プレーが終わってから次のボールがスナップされるまでの時間。それだけハイテンポでやっている分、ディフェンスにも負担がかかる。ローテーションはやりたいところだが、できない部分もある。


Q:クラフトがあれだけのパス能力を持ったすごいQBなのに、リードされてからの逆転勝ちがない。それはなぜ。
A:ケビンがというよりは、チーム全体の問題。たとえば今回のようなステージにも今まで来たことがない。リードされてしまうと、「よし、盛り返してやろう」「俺がやったる」というような雰囲気がなくなってしまう。僕が選手たちによく話をしているのは「ケビンに頼り過ぎるな。ケビンがイライラしないように、君らがもっとやらなあかん」ということ。日本の選手がそこは盛り返していかないと。ケビンが調子悪いから駄目だということではいけない。ただ、今季はそういうチームになってきたんじゃないかなと思っている。


Q:富士通への守備対策は。
A:短いパスとランを止めて、長いパスを投げさせる方向にもっていかせる。ロングを狙うとプレーに時間がかかるので、そこでなんとかQBにプレッシャーをかけたい。ショートパスは、プレッシャーを掛ける前に決められてしまうので。


 私個人の予想としては、やはり富士通が有利と見ている。両チームにはQBのキャメロン、クラフト以外にも、RBジーノ・ゴードン、DEオースティン・フリン、DBアルリワン・アディヤミ(富士通)、TEで主将のジョン・スタントンDEジェームス・ブルックス、トゥイカ・トゥファーガと攻守の要所に米国人プレーヤーがいる。彼らを外して両チームを眺めると、日本人トップ選手の力やデプスにやはり差がある。


 キーとなるのはIBMのOLとDB陣だろう。富士通フリンのプレッシャーはすさまじく、準決勝では対面に入ったオービックの巨漢RT坂口裕が思わず反則を犯したほどだ。かといって外国人頼みというわけではない。オービック戦では、フリンがペナルティーで前半出場していなかったにもかかわらず、TDを奪われなかった。
 選手層が厚いためローテーションできており、ベテランDE平井基之、ルーキー髙橋伶太らがフレッシュな状態でパスラッシュを仕掛けられる。比較的小柄で、ずば抜けた選手もいないIBMのOL陣がクラフトをどう守るか。攻撃コーディネーター兼任のクラフトをパニックにしないためにも、OLの責務は重い。


 IBMのDB陣は、前回の対戦では富士通WR陣のクイックネスとスピードを警戒しすぎてクッションを深くとっていた。結果、富士通・キャメロンのパスは230ヤードだったが、ターンオーバーの心配をまるで感じなかった。
 キャメロンの真骨頂は得点能力というよりはゲームのマネジメント能力だ。してはいけない場面でミスを犯さない。こういうQBと対戦する場合、山田HCの言う通り、ある程度はリスクを背負った攻撃的な守備がないと、攻略は困難だろう。

 これがリーグ戦の対戦なら「富士通の優位は動かない」の一言で済む。しかし、これはボウルゲームだ。何が起こるかわからない。それがボウルゲームの面白さ、楽しさでもある。

【写真】【IBM】主将でTEのジョン・スタントン=撮影:Yosei Kozano