日本社会人アメリカンフットボール・Xリーグは、11月16日にセカンドステージ最終戦を迎えた。
大阪・長居のキンチョウスタジアム第1試合、富士通フロンティアーズ(イースト1位、6勝)対パナソニックインパルス(ウエスト2位、5勝1敗)という東西強豪の激突は、富士通が44―24でパナソニックに大勝した。


 今季開幕戦でエレコム神戸ファイニーズに競り合いの末敗れファーストステージ2位に甘んじたパナソニックだが、1週前のアサヒビール・シルバースター戦(8日、調布市・アミノバイタルフィールド)では、看板のディフェンスが7インターセプトを奪い大勝。富士通との戦いは激戦になるかと思われていた。


 富士通の藤田智ヘッドコーチ(HC)も試合後に、「予想外でした。(パナソニックは)強いチームなので、もっと厳しいゲームになると思っていました」と語った。事実、第2クオーター終盤までは、富士通の20―17と接戦だった。
 富士通がQBコービー・キャメロンからWR中村輝晃クラークへの2本のロングパスによるTDを決めれば、パナソニックも、今西亮平の66ヤードパントリターンTDと、大黒柱のQB高田鉄男のランTDで応酬。まったく互角の展開だった。


 勝負を分けたのは、第2クオーター残り5分からの攻防だ。残り5分6秒からのパナソニックのドライブは、ファーストダウンを更新できずにパントとなる。富士通は残り3分8秒、自陣39ヤードからの攻撃で、中村へのパス、RB高野橋慶大のラン、WR成田竜馬へのパスで攻め込むと、最後はQBキャメロンが23ヤードのTDパスを中村に決めた。
 27―17とリードは広がったが、残り時間は2分余り。富士通としてはもう少し時間を使いたかったところだと私は思った。


 パナソニックは、5レシーバーノーバック隊形でTDを狙うオフェンスドライブに出た。二つ前のドライブではQB高田がノーハドルからこの隊形を巧みに操った。5人のレシーバーが出るとディフェンスがカバーで手いっぱいとなり、前があいてすかさず高田が走るという、ありふれているけれど厄介なオフェンスでパナソニックはTDを奪っている。富士通ディフェンスがこれだけあっさりやられたのは最近ではちょっと記憶にない、というほど効果的に見えた。その「虎の子」の戦術を、前半残り2分からパナソニックは再び使ってきた。


 その最初のプレーだった。インサイドからブリッツした富士通LB竹内修平が高田をサック。10ヤードのロスとなった。パナソニックはたまらずに、タイムアウト。パワー派の巨漢RB岩田駿一を加えた隊形に変更したが、セカンドダウンでも富士通DEオースティン・フリンが激しいラッシュを見せて高田はパスを投げ捨てた。
 次のプレー、パナソニックはディレイになりそうになり、再びタイムアウトを余儀なくされる。自陣17ヤード、サードダウンで残り20ヤード。パナソニックは得点をあきらめフィールドポジションを改善するため岩田にボールを持たせたが3ヤードのゲインにとどまり、パントに追い込まれた。


 残り時間1分17秒、パナソニック陣47ヤードからの攻撃という条件は、富士通のキャメロンとレシーバー陣には十分すぎた。WR宜本潤平へのパスでゴール前へ迫ると、キャメロンはエンドゾーン左隅に走り込んだRBジーノ・ゴードンにTDパスを決めた。得点は34―17。接戦だったゲームは、富士通に大きく流れが傾き、後半へ折り返した。
 富士通は第3クオーターにRB高野橋がランで2TD、リードを30点以上に広げ、パナソニックにとどめを刺した。


 私がアメフットの強豪対決を見る時に、注意しているポイントが一つある。それは前半残り2ミニッツを切ってからのTDだ。Xリーグでも、ファーストステージの富士通対IBMビッグブルー戦、LIXILディアーズ対オービック・シーガルズ戦、セカンドステージの前週オービック対ノジマ相模原ライズ戦で、この時間帯にTDを奪ったチームがそのまま試合を制している。


 試合終了直前、第4クオーターの2ミニッツオフェンスは目立ちやすいが、実際には同点か、1ポゼッション、せいぜい2ポゼッション差で負けているチームのオフェンスにしか意味がない。
 それに引き換え、前半2ミニッツのTDはあらゆるシチュエーションで意味がある。アメフットはアジャストのスポーツだ。ハーフタイムに前半の相手のプレーを分析して、自軍の戦い方を修正する。後半に向けて対策を練るサイドラインにとって、前半終了直前の失点、それもTDの7失点は大きな誤算になる。Xリーグのセカンドステージのハーフタイムは20分。モメンタムの面でも、優位に立った状態でハーフタイムを過ごせるのは大きい。


 富士通が前半2分余りを残してTDを決めたプレーに関して、もう少し時間を使いたかったのではと尋ねると、藤田HCは「よくそういう意見を聞くが、オフェンスの立場から言えば、TDは取れるときにしか取れない。時間を使ってフィールドゴール(FG)、というのはあると思うが。あそこはオフェンスのリズムも良かったので、ポンポンといくしかなかった」。それゆえに「竹内のQBサックがとても大きかった。パナソニックはあれで作戦を変更しなければならなかったし、もう一度オフェンスをすることができた」と振り返る。


 LBパートのベテラン、鈴木將一郎によると「もともとQB高田には走られてもいい。無理に走ってこないからパスカバーをしっかりやろうというゲームプランだったので、TDを奪われたといっても特にダメージはなかった。出されるプレーは限られていたので、そこのアジャストをするだけだった」という。


 富士通はこの試合の前に、社会人選手権ファイナルステージ(準決勝)進出が決まっていた。だが藤田HCには負けてもいいという考えは全くなかったという。「意識するなと言っても、準決勝が決まっていることは選手みんなが知っている。だから『この試合は何のためにやるんや』ということをしっかり確認した。この段階で一回しょうもない試合をしてしまうと、取り返しのつかないことになる」。これまで同様、藤田HCの顔に笑顔が浮かぶことはなかった。


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 この試合の後に行われた、オービック対エレコム神戸ファイニーズ、同時刻のIBM対LIXIL(横浜スタジアム)戦の結果、11月30日準決勝(横浜スタジアム)の組み合わせは、富士通対オービック、IBM対LIXILという組み合わせとなった。


 前回も書いたが、スケジュールストレングスを評価に使うこと自体は間違った考えではない。だが、本来これは前年度シーズンの実績を参考に何かを決定するというものだと思ったほうが良い。進行中のシーズンの順位を、進行中のスケジュールストレングスで決めるというのは、論理的に無理が出てくる。


 まして、他会場での試合結果によって、準決勝の対戦相手が想定できてしまったというのは、制度的に失敗だろう。2試合連続の同一カードは、2012年以来。このままの制度なら来季も起こり得る。
当事者のチームとしては「相手の出方を見て、手の内を隠す試合」とならざるを得なくなる。セカンドステージ制は残り1シーズンとなったが、せめて来年だけでも「2試合連続同一カードは避ける」という優先的取り決めを作れないか。


 盛り上がると宣伝し、結果的に試合が「公開スカウティング」となったとしたなら、観戦に来ていただいたファンに本当に申し訳ない。そういう気持ちを関係者には持ってほしい。

【写真】2Q、富士通LB竹内がパナソニックQB高田をサック=撮影:Yosei Kozano、16日、キンチョウスタジアム