いよいよ佳境の日本社会人アメリカンフットボールXリーグ。11月9日、川崎富士見球技場で開催のセカンドステージ「スーパー9」で、オービック・シーガルズは、ノジマ相模原ライズと激突した。
 オービックは、今秋5年ぶりにリーグ戦で黒星を喫し(対LIXILディアーズ)、セントラルディビジョン2位。ここで敗れると、ファイナルステージ(準決勝)進出が困難になる。


 対戦相手のノジマ相模原はイースト3位ながら、前戦でウエスト1位のエレコム神戸ファイニーズ戦に完勝している。日本選手権「ライスボウル」5連覇を狙う王者オービックにとって、ここ数年で最大の危機ではないか、と私は考えていた。


 それは杞憂だった。オービックは第1クオーターから勝負を仕掛けた。2度目のドライブ、サードダウンロングでQB菅原俊からRB古谷拓也へのスクリーンパスで13ヤードをゲインしてダウンを更新すると、オフェンスの歯車がかみ合い始める。
 ゴール前18ヤードでオービックはショットガン。菅原は、レシーバーへのカバーで、左ががら空きになったのを瞬時に察知、スクランブルして先制のタッチダウン(TD)を奪った。


 次のドライブでは、WR萩山竜馬、木下典明へのパス、さらにRB望月麻樹のパワフルな突進、そして木下へのパスと、4プレー連続でファーストダウンを更新し73ヤードを前進、最後はTE森章光に7ヤードのTDパスをヒットした。


 圧巻は一つ置いたドライブ、オービックは最初のプレーでスペシャルプレーに出た。ハンドオフしたRB古谷が菅原にボールを返すフリーフリッカー、菅原はポストを走るWR池井勇輝にパスを通し、60ヤードのTDとなった。
 序盤で差を付けられ、焦るノジマ相模原ディフェンスを手玉に取るプレーだった。オービックは次のドライブでも菅原が木下にTDパスを決め、ノジマ相模原を突き放した。


 ディフェンスも序盤からエンジン全開だった。ノジマ相模原のドライブは試合開始から5回中4回が「3&アウト」、3ドライブはロスヤーデージに追い込み、合計でわずか10ヤードしか進ませなかった。
 前のゲームで293ヤードを走ったRB宮幸崇を完全に封じ込めた。ケビン・ジャクソン、バイロン・ビーティー・ジュニア、三井勇洋、古庄直樹といった、おなじみの顔ぶれがフィールドを駆け巡り、制圧した。


 ノジマ相模原が先発QB木下雅斗に代えてルーキーの大型パサー荒木裕一朗を投入したことが、かえってよくなかった。立命大時代から「未完の大器」として期待された荒木だが、社会人では試合経験が足りない上、ポケットにとどまってレシーバーを探すプレースタイルは、速く激しいオービックディフェンスの餌食となった。


 いかに荒木がパサーとして潜在能力が高くとも、ケビン・クラフト(IBMビッグブルー)、コービー・キャメロン(富士通フロンティアーズ)を攻略しているオービックディフェンスから見れば、脅威には感じなかったろう。荒木はパスを8回投げてすべて失敗。古庄にファンブルさせられ、味方OLが辛うじてリカバーするありさまだった。


 前半を終えて37―0。大勢は決していた。後半、メンバーを若手主体に切り替えたオービックから、木下がランとパスで3TDを返したが、反撃もそこまで。セカンドステージ最注目の一戦は、44―21でオービックが大勝した。
 ファーストステージでは「らしくない」ゲームが続いたオービックだが、ここ一番で今季のベストゲームを見せた。


 大差のスコアに、「もう少し面白い試合になるかと思っていたのに」という感想を持ったファンも多いだろう。しかし、アメフットにおいて点差=実力差ではない。序盤で大量リードしたのは、そうしなければ勝てない、競った展開に持ち込まれてはいけないというオービックの危機感の表れだ。
 オービックは選手もサイドラインもビッグゲームほど先制パンチが重要になることをよく理解している。大橋誠ヘッドコーチ(HC)が常々口にする「試合のオープニングをどう制するか。仕掛けにいって、それが本当にアグレッシブなプレーとして出るかどうか」。それをきっちりと出すことができた試合となった。


 活躍すべき選手がすべて活躍したオービックだが、MVPを選ぶとすればやはりQBの菅原をおいてほかにない。クラフト、キャメロンというXリーグのトップQBたちを苦しめたノジマ相模原のパスディフェンスを、パス324ヤードで5TD、0インターセプトと、完全に攻略した。
 クラフトやキャメロンが、ポケットで投げあぐねていたのに対し、菅原は、スナップ後に早いタイミングから10~20ヤードのパスをリズムよく決めていた。守備が専門の大橋HCも「複雑で読みにくい」と評するノジマ相模原のパスカバーを、菅原がプレーを始める前に、正確に読み切っていたからだろう。


 オービックはLIXIL戦の敗戦から3週間あり、11月上旬には3連休もあったため、練習時間はいつもよりも多くあった。菅原は「自分たちを見直す良い機会だった。オフェンス全員で、ポジションユニットで、ポジションリーダーで、何度も話し合った。ここからもう一回チャレンジャーとして、もがいてやると決めて、3週間やってきた」。
 3本目のTDを決めたスペシャルプレーについては「試合ごとに常にスペシャルは準備している。何年も前から練習しているプレーで、オフェンスコーディネーターも早い段階で使いたいと言っていた。決められてほっとしました」。10月上旬のアサヒビール・シルバースター戦で負傷した足は万全ではないが、ほぼ大丈夫なところまで回復しているという。


 大橋HCは「フットボールはエクスキューション(遂行力)ということがものすごく大事な要素だと思っている。エクスキューションを自分たちの中でどこまで突き詰めて、捉えられるかということを、この3週間やってきた。アサインメントが分かっているとか、(コーチから)言われたプレーができたというだけでなく、どこまでフィニッシュできたのか、どこまで激しくプレーできたのか。すべて包括したものがエクスキューションだとしたら。僕らの遂行力は、特にLIXIL戦では相手に負けていた」と語る。


 久々に、オービックらしい勝ち方だったのではないかと尋ねると「ゲームによってはそういう風に見てもらえる。しかし、そうではない試合も多々あるということは、僕らの中にはそういう危うさがあるということ。今日のようなゲームをしたときこそ、逆にそういう部分を自覚しなければいけない」と喜びを見せない。


 私が、サイドラインでXリーグの強豪チームに共通して感じるのは、学生チームのような張りつめた感情はないということだ。特にオービックは個々の選手の能力の高さ、フットボール知識の抱負さも手伝ってか、「笑っているのに強い」印象があった。
 しかし、この試合の前、サイドラインに集結したオービックは違った。笑顔はほとんどなく、緊張感がひしひしと伝わってきた。一緒に渡米したこともあって顔見知りの選手も多いが、声を掛けられる雰囲気ではなかった。


 大橋HCは「今日のゲームは崖っぷちだということは皆わかっていた。スタンドの観客の皆さんにどれくらい感じていただいたかわからないけれども、LIXIL戦とは空気が違っていた。結局それを作り出しているのは選手一人一人。これからの試合もそれを作り続けられるかどうか」。
 負ければ、シーズンが終了する可能性が強いことは依然として続いている。次戦のエレコム神戸ファイニーズ戦(16日、大阪・キンチョウスタジアム)に向けて、最後まで大橋HCの表情には笑顔が浮かぶことはなかった。


 ここで、Xリーグの総合順位決定方法に対する疑問を書いておきたい。それは
4. 勝利した対戦相手の勝ち星数
(※ただし、対戦相手はSuper9もしくはBattle9内のチーム)
という部分だ。
 同じ1勝でも強い相手に勝った方が価値があるという「スケジュールストレングス」の概念によるもので、妥当に思えてしまうかもしれない。だが率直に言って私は相当におかしいと思う。


 なぜなら、シーズン序盤に勝った対戦相手のチームが、負傷者などが出ることで、終盤に調子を崩し負けが多くなると、さかのぼって自分たちのチームに影響するからだ。
 今セカンドステージの場合でいえば、LIXILディアーズが該当する。LIXILがファーストステージ2戦目で勝利したアサヒビール・シルバースターはその段階までは間違いなく強いチームだった。


 しかし、その後エースQB安藤和馬の負傷などもあって調子を崩し、セカンドステージは大敗で2連敗、3勝4敗でシーズンを終えた。LIXILがセカンドステージで対戦したアサヒ飲料チャレンジャーズも、同じく3勝4敗でシーズンを終えている。そのためにLIXILは「勝利した対戦相手の勝ち星数」が低くなる。
 16日に大阪と横浜で行われる「スーパー9」の3試合の結果によっては6勝1敗で5チームが並ぶのだが、LIXILはファイナルステージ(準決勝)には残れなくなるのだ。


 実は、昨シーズンまで米NCAAフットボールの王座を決める仕組みだった、ボウル・チャンピオンシップ・シリーズ(BCS)のコンピューターランキングも同様の問題点を指摘されていた。
 開幕戦で勝った相手が、その後11連勝してくれたおかげで自分たちのチームがランキング上位になるとか、馬鹿げた計算をコンピューターがやってしまう。BCSは契約が切れたこともあり終了したが、このランキングがメディアやファンから疑問を投げかけられていたのは事実だ。


 フットボールに限らず、勝った相手は、勝った時点の相手であって、その後その相手チームがどう改善したか、けが人が出たとか、逆に復帰したとかは関係ないはずだ。あるいは、不祥事を起こしてそのチームが出場停止になるようなことだってあるかもしれないのだ。その場合はどうするのか。


 シーズン開幕当初から決定していた事項をいまさら蒸し返すのは、フェアではないかもしれないが、この決定方法で順位を決められてしまうチームや、チームスポンサーの立場なら納得できるのか。
 笑顔でも涙で終わっても納得のシーズンエンドであってほしいと思う。セカンドステージ制は来シーズンで終了するが、この決定方法だけは再考すべきだと思う。

【写真】ノジマ相模原QB荒木をサックするオービックDE三井=撮影:Yosei Kozano、9日、川崎富士見球技場