アメリカンフットボールを見ていると、秋を短く感じる。ついこの間開幕した日本の社会人Xリーグは、早くもセカンドステージに突入した。準決勝のファイナルステージ、そして12月の社会人決勝ジャパンXボウルへ進むためには、ここからは1敗が命取りになる。


 アメフットが最も熱くなる季節の到来だ。11月1日のアミノバイタルフィールド(調布市)では、負ければセカンドステージでシーズンが終わるノジマ相模原ライズ(イースト3位)が、ウェストディビジョンで今季旋風を巻き起こしたエレコム神戸ファイニーズ(ウエスト1位)を迎え撃った。


 今季の成績だけを見れば、エレコム神戸にノジマ相模原が挑戦する形だが、ノジマ相模原の実力は折り紙付き。今季も、リーグ1の激戦区イーストで、敗れたとはいえ富士通フロンティアーズ、IBMビッグブルーと接戦を展開してきた。
 負ければセカンドステージでの敗退が決まる「背水の陣」だ。一方のエレコム神戸については、私自身は1年前のセカンドステージ以来の撮影で、今季見るのは初めて。パナソニック・インパルス、アサヒ飲料チャレンジャーズを相次いで撃破したパワーがどのようなものか、楽しみにしていた。


 両チームともに2回ずつパントを蹴り合うディフェンシブな展開で始まった第1クオーター13分。ノジマ相模原はサードダウンでオプションプレーに出た。
 QB荒木裕一朗からピッチを受けたRB宮幸崇は、右サイドライン際をOL細野燿平らのダウンフィールドブロックを巧みに使いながら55ヤードを走り切って先制のタッチダウン(TD)を決めた。


 第2クオーター、宮幸は再びビッグプレーを決める。フィールドゴールで加点して10―0とリードした第2クオーター8分、エレコム神戸に自陣ゴール前まで迫られたノジマ相模原は、DEタビタ・ウッダードがQBイノケ・フナキのパスをインターセプトした。
 危機を脱したとはいえ、ゴール前2ヤードからのドライブとなる。しかし、ファーストダウンを1回更新したノジマ相模原は、QB木下雅斗から、またしてもオプションで宮幸にピッチした。宮幸は83ヤードを快走してTD。この攻防が試合の流れを決めたと言ってもいい。


 前半でRB東松瑛介が負傷したノジマ相模原だが、後半も宮幸のランがさえる。第3クオーター3分には中央をついて30ヤードのTDラン、その後も連続でボールをキャリーして次々にファーストダウンを更新、フィールドを支配した。
 エレコム神戸もフナキのパスで必死に追撃したが、要所を締めるノジマ相模原ディフェンスから2TDを奪うのがやっと。41―14でノジマ相模原が生き残りをかけた第一関門を突破した。


 ヒーローとなった宮幸は、試合の大勢が決した第4クオーターは、細野陽平らに出番を譲ったが、18回のキャリーで293ヤードをゲインし、3TD。ファーストステージ5試合でラン喪失189ヤードと、圧倒的な守備力で勝ち上がってきた「西の覇者」を完膚なきまでに打ち砕いた。
 試合後、宮幸は「ディフェンスが今まで頑張ってきたのに、僕らが足を引っ張っていた。今日はディフェンスを助けられたかな」。2本のTDを奪ったオプションからのランは秘策というものでもなく、「相手の守備隊形を見て、これは出るなと思った。あとは縦に走っただけ」という。


 宮幸といえば思い出すのが中央大学3年時の対早稲田大学戦だ。2005年11月の横浜スタジアム。この試合の後に登場する法政大学のRB丸田泰裕(現リクシル)が関東学生史上2人目のシーズン1000ヤードを達成しそうだということで、私は丸田狙いでスタジアムにいた。
 宮幸は早大ディフェンス相手に25キャリーで341ヤード、5TDという驚異的なパフォーマンスを見せ、この試合で1000ヤードを突破し、丸田を出し抜く形で「史上2人目」となった。エレコム神戸戦での活躍は、9年前のあの日、フィールドを縦横に駆け回った姿とダブって見えた。


 宮幸は11月26日で30歳になる。RBとしてはベテランの域だ。しかし、同年代のRBと比較してもまったく衰えを見せないどころか、進化している印象さえある。この日の3TDのうち、2本はアウトサイドをスピードで走りぬいて決めたが、本来インサイドで勝負するパワーランナーとしても一流だ。
 166センチ74キロと小柄ながら頑健で、二回りも大きいDL、LBのタックルにも真っ向勝負、臆するところがない。ノジマ相模原の須永恭通ヘッドコーチも「宮幸は、試合の中で走れば走るほど、どんどん良くなってくる」と称賛する。


 「大学の時から毎試合20から30キャリーしていた。持てば持つほどリズムに乗ってくるのはそこからつながっている」。心拍数が上がったら、どれだけ早く下げるかを意識しているという。
 第3クオーターに連続でボールを持って走った際には「サイドライン戻ってきたときに『お前、バテてただろう』と言われて。外から見てそうなら、もっと(フィジカルを)上げなきゃなと思います」。負けん気や向上心も人一倍だ。


 そんな宮幸が縁遠いものが二つある。一つは、日本代表の座だ。これだけの実力を持ちながら、2009年7月のノートルダム・ジャパンボウルでは最終選考で外れるなど悔しい思いをしてきた。今春、フィリピン代表との試合で、初めて日本代表として戦った。「いい経験になったし、来年の世界選手権にも、もちろん行きたい」と意欲的だ。


 そしてもう一つはチームのビッグタイトルだ。日大三高時代はクリスマスボウルにも出場したが、準優勝。中央大学、旧オンワード時代を通じても、優勝を経験していない。
 セカンドステージ第2戦は11月9日のオービック・シーガルズ戦(川崎富士見球技場)。ノジマ相模原は敗れればシーズン終了となる。過去の対戦では接戦の末に敗れる形が多いが、「問題はオフェンス。今までの試合も結局は取り切れていなかった。いい試合をしても意味がない。必ず勝ちます」。


 ノジマ相模原の悲願である「日本一」は、宮幸の走りにかかっている。

【写真】力強い走りを見せるノジマ相模原RB宮幸=撮影:Yosei Kozano、11月1日、アミノバイタルフィールド