日本社会人アメリカンフットボール、Xリーグで今季最激戦区となったイーストは、富士通フロンティアーズが5戦全勝でファーストステージ1位通過を決めた。
 10月20日に川崎・等々力競技場でノジマ相模原ライズと対戦し7―0で勝った富士通は、苦戦しながらもこれまでとは一味違った強さを見せた。過去5、6年、常に優勝候補に名を連ねながらここ一番で勝ち切れなかった富士通の変化とは何か。


 前節の10月4日、QBケビン・クラフト、DEジェームス・ブルックスら強力な米国人パワーを押し立てて勝ち進んできたIBMビッグブルーを、好守で完全に上回って会心の勝利を見せた富士通。現時点で国内最強のチームといってもいいほどの仕上がりだ。
 また、春も含めた過去の対戦成績を見ても、富士通オフェンスはノジマ相模原を得意としており、いずれも30点以上を奪って大勝している。富士通がそれほど苦戦せずに勝つのではないかと予想していた。
 試合開始直後、その予想は当たったかに見えた。


 ノジマ相模原の最初のドライブ、QB木下雅斗に対しブラインドサイドからラッシュした富士通DE髙橋伶太がファンブルを引き起こし、DT南奎光がリカバーする。
 敵陣48ヤードで得た最初の攻撃、富士通はRBジーノ・ゴードンの2度のランプレーとWR中村輝晃クラークへのパスでゴール前に侵入すると、最後はQBコービー・キャメロンがショットガンからエンドゾーン奥に走り込んだWR秋山武史に先制のタッチダウン(TD)パスをヒットした。
 所要時間1分余りで決めた先制点に、「今日もオフェンスは好調だな」と感じた。それがこの試合唯一のTDになるとは思いもしなかった。


 富士通は次のドライブ、秋山やゴードンらにパスを通し敵陣まで攻め込むが、キャメロンがTDを狙って投げたパスをノジマ相模原DBのロカ・カノンガタにインターセプトされる。キャメロンにとっては今秋5試合目で初のインターセプトだった。ここから富士通オフェンスの苦難が始まった。


 ノジマ相模原のディフェンスは、今季最高と言っていいさえを見せた。富士通の誇るRB陣、ゴードン、高野橋慶大、神山幸祐のランを止めた。タビタ・ウッダードらがキャメロンに再三プレッシャーを掛け、セカンダリーは富士通のレシーバー陣をしっかりカバーした。
 唯一のピンチは、富士通の後半開始直後のドライブ。キャメロンは秋山、中村へのパス、自らのラン、そして再び秋山にパスを決めてゴール前1ヤードに迫った。


 しかし、残り1ヤードが遠い。最初のダウンでカバーが空いていた秋山へのパスは不成功。外からラッシュしたウッダードのために、キャメロンがパスを投げるのが早まり、秋山が振り向くタイミングとズレが生じたように見えた。
 次はゴードンに持たせたが、ノジマ相模原ディフェンスの集まりが良くまったく進めず。サードダウンでキャメロンが右に走りながら投げたパスはノジマ相模原LBの田中喜貴がエンドゾーン内で後ろに倒れながらインターセプトした。


 富士通オフェンスがこんなに得点できず苦しんだ試合は、記憶になかった。OLの柱で左タックルの小林祐太郎が負傷で欠場したことも響いた。キャメロンは試合後半、珍しくフラストレーションをあらわにするシーンもあった。


 一方で、富士通の強力なディフェンス陣を相手に、ノジマ相模原オフェンスも健闘した。RB宮幸崇がラン、パスレシーブ双方で活躍。QB木下も、富士通DEオースティン・フリンに3回もサックされながら、パス成功率は76%、インターセプトはゼロ。更新したファーストダウンの数は14で富士通と同数だった。


 しかし、富士通以上にエンドゾーンが遠かった。今季のノジマ相模原オフェンスは、9月27日のIBM戦ではレッドゾーン(敵陣ゴール前20ヤード以内)に4回侵入しながら、TD1本にとどまったことが敗因となった。
 10月5日の明治安田パイレーツ戦では、台風による大雨の影響があったとはいえ、実力に差がある相手から17点しか奪えなかった。一発でTDを取り切るようなビッグプレー、決定力のあるプレーに乏しいのだ。


 この試合、勝負を分けたのは、フィールドポジションだった。ノジマ相模原の攻撃は田中のインターセプトがタッチバックで自陣20ヤードからとなった以外は、すべて自陣20ヤード以内からのスタート。そのうち4回は自陣ゴール前10ヤード以内からだった。
 ノジマ相模原が後半唯一ロングドライブを展開したオフェンスのスタートは、自陣2ヤード。9プレー3分45秒かけて57ヤードを前進したがフィールドゴールレンジにも届かなかった。


 ノジマ相模原ディフェンスに苦しんだキャメロンと富士通オフェンスだが、アメフットのオフェンスは点を取ることだけが目的ではない。時間を使い相手を消耗させること、それすらできなければ、最低限フィールドポジションを改善することだ。
 キャメロンはその最低限の務めは果たした。自陣内から始まったドライブでは、決して3&アウトでは終えず、サードダウンコンバージョンをパスや自らのランで更新した。


 ファーストダウンを更新できなくなりパントとなっても、ボールの位置は中央付近。さらに、パンターの吉田元紀はもともとQBとして活躍していた実績もある。足も速くパスも巧い。
 ノジマ相模原はスペシャルプレーへの警戒も余儀なくされた。結果的に吉田は、ナイスパントを連発した。それが、一発に欠けるノジマ相模原の攻撃を追い込んだのだった。


 この試合は、野球に例えると、ほとんどの監督が忌み嫌う初回に1点のみで後はゼロ行進が続く「スミ1」の展開だ。
 最初のオフェンスドライブで得点した後、延々と無得点が続き、2本もインターセプトを喫したら、富士通のサイドラインやファンはハラハラ、イライラの連続だったろう。先制しながら、後が続かず、競り合いのプレッシャーの中でミスが出て負けるというのは、かつてビッグゲームにおける富士通の悪癖だったからだ。
 しかし、この日の富士通はディフェンスもスペシャルチームも最後までノーミスで通した。反則も、ほとんどなかった。


 富士通が最後の攻撃で、ファーストダウンを更新し続けるのを撮影しながら、私はIBM戦で見たのとは異なる強さを感じていた。フットボール的には、ノジマ相模原のペースにはまりながら、悪い展開をものにした。
 自慢のパスやランがさく裂し、ディフェンスがターンオーバーを連発する本来の形とはほど遠いが、常にそんなフットボールができるわけではない。個人的には、「ランも出ない、パスも通らない、さあどうしよう」というところからアメフットは始まると思っている。そんな試合を、富士通は耐えて勝ち切ったと感じた。


 藤田智ヘッドコーチは、セカンドステージを勝ち抜く条件として、負傷者の復帰を挙げた。
 富士通のセカンドステージ初戦は11月1日、王者オービックシーガルズや、セントラル1位となったLIXILを苦しめたアサヒビールシルバースターが相手となる。復活の兆しを見せる名門を倒すことが、悲願の日本一に向けた次の関門となる。

【写真】ノジマ相模原RB宮幸の突進を押しつぶすように止める富士通DEフリン=撮影:Yosei Kozano、10月20日、等々力陸上競技場