日本社会人アメリカンフットボール、Xリーグのセントラル全勝対決、オービック・シーガルズ対LIXILディアーズの一戦は19日、横浜スタジアムで行われ、LIXILが23―17でオービックを破った。
 LIXILのオービック戦勝利は、鹿島時代の2008年11月以来6年ぶり。またオービックが秋シーズンの公式戦で負けたのは09年11月以来だった。


 この結果に驚いたアメフットファンは多かったようだが、私個人としては想定内だった。事前の予想としては基本的にはオービックが優位とは見ていたものの、LIXILが勝つ可能性は十分にあると思っていたし、試合内容もLIXILが勝つとしたらこういう展開だろうと考えていた通りだった。LIXILの勝因を振り返った。


 ▽RACを断った守備陣
 第3クオーターまでは、LIXILディフェンスがとてもよく守った。森清之ヘッドコーチ(HC)は「一発、すれ違いで持っていかれるのだけは避けよう。多少はゲインされてもしっかりタックルしようと、練習中から言ってきた」。その言葉通り、ショート、ミドルのパスでオービックレシーバー陣のランアフターキャッチ(RAC)を、セカンダリーの集まりの速さと鋭いタックルで断ち切った。


 第2クオーターに、右側に縦に3枚のレシーバーを入れられて、エンドゾーンに走り込んだオービックのWR木下典明に通されたタッチダウン(TD)パスが、LIXILディフェンスがほころびを見せた唯一の場面だった。
 その後、インターセプト(INT)で自軍ゴール前12ヤードからのオービックの攻撃は粘り強く耐えて、フィールドゴールによる3失点にとどめた。


 特に目についたのは元主将の牧内崇志、副将の大舘賢二郎、2年目の天谷謙介の3人のLBだ。天谷は第3クオーターにインターセプトを決めたし、牧内もパスをカットしてファーストダウンを防いだ。
 強大なオービックOLの圧力でディフェンスが消耗した第4クオーターにはランを進められ、自陣ゴール前4ヤードと、逆転TD寸前まで迫られたが、オービックオフェンス陣のスナップミスによるファンブルを見逃さず、リカバーして攻撃権を奪ったのはDL重近弘幸だった。


  ▽OLが奮闘、サックを許さず
 鹿島のOLといえば、2、3年前までは国内最強。大型選手がそろい、パワフルなブロックで他チームディフェンスを蹂躙して、ラン攻撃を支えた。
 新チーム移行後も倉持和博、荒井航平、笠井公平の「130キロトリオ」は健在だが、大黒柱だった元日本代表・井澤健らが抜け、メンバーは7人と層が薄くなった。


 これを機にOL内でのポジションをシャッフル、Cだった笠井がQBのブラインドサイドを守る左Tに。右のGだった荒井がCとなった。森HCは、笠井はリーチがあって骨格も大きいため左Tに向いており、OLの全ポジションがプレーできるという荒井のCは、DLの圧力でへこまされることなく前に出られるのがいいと評価する。


 鹿島時代はどちらかといえば前にドライブするランブロックが得意だったOLだが、この日のLIXILは攻撃の53プレー中6割の32プレーがパス。それでもしっかりとしたプロテクションで、ケビン・ジャクソン、バイロン・ビーティー・ジュニア、三井勇洋らリーグ最強級のパスラッシャーが揃うオービックDLからQBの加藤翔平を被サック数ゼロで守り切った。
 森HCは「オービックDLを研究したというよりは、夏から自分たちのファンダメンタルを追求した結果。OLが今日一番の殊勲者だと思う」と称賛した。


 ▽強力ディフェンスを制した加藤
 前回のコラムで、LIXILのQB加藤がオービックディフェンスを苦手にしていると書いたが、ある意味フェアではない表現だった。なぜなら、オービックディフェンスを苦にしないQBなど国内には存在しないからだ。
 ノジマ相模原ライズの木下雅斗も、アサヒビールシルバースターの東野稔も、あのIBMビッグブルーのケビン・クラフトでさえも、ジャクソンやビーティー・ジュニア、古庄直樹らに追い回され、グラウンドに叩き付けられてきた。
 勝つ能力は日本一と思われるオービック菅原俊でも、味方のディフェンスと戦ったら、あのパフォーマンスができるかは疑問だろう。


 その強力ディフェンスを加藤はコントロールして、勝った。加藤のパス成績は24/32で成功率は75%、2TDで1インターセプト。2TDと3フィールドゴール(FG)で、10ドライブ中、半数のドライブを得点に結びつけた。
 しかしそういう数字以上に、オービックディフェンスのミーンな圧力に屈することなく、冷静にオフェンスをリードし続けたのが光った。


 印象に残っているパスが2本ある。1本は、第1クオーター、RB丸田泰裕にフェイクを入れて左に持ち出すと、オービックのパスカバーの切れ目に走り込んだWR宮本康弘にパスをヒット。宮本はそのまま一気にゴール前まで走り込んで30ヤードをゲインし、先制TDのお膳立てをした。
 映像を見直すと、OLが右方向へゾーンブロック、浮いたオービックDL三井も丸田に反応し、加藤がフリーになるという、NFLフィラデルフィア・イーグルスを思わせる洗練されたパスだった。


 もう1本は、第2クオーター残り34秒で決めたWR前田直輝へのTDだ。一つ前のプレーから、前田にはマンツーマンでオービックのDB藤本将司がついていた。前田は加藤に「マンツーマンになったら俺に投げろ」と言っていたという。
 第3ダウンで残り2ヤード、ゴールまでは13ヤード。タイムアウトをはさんで次のプレーでも前田の前には藤本がついた。「セットしたときにパッと見て、ターゲットを変えました」。加藤は躊躇せずに前田を狙い、前田はジャンプして藤本を振り切りパスをキャッチした。
 前半残り1分切ってからのTDは、ゲームに大きな影響を与える。先日の富士通対IBM戦でも見たシーンだった。


 加藤はとにかくクイックリリースを心がけたという。「僕が迷って、持ちすぎてしまうと、(オービックは)パスラッシュが強いので。あきらめるときもタイミングよく投げ捨てるように意識してやっていた」。「(過去の対戦では)不用意なインターセプトが多かったのは反省しているが、成功率は意識していなかった。QBにとって、パス成功、不成功よりも大事なことは、試合に勝ち切ること」。加藤の口調は、エースを証明した自信にあふれていた。

 
 ▽鍵握る菅原の復帰時期
 一方、敗れたオービック。第4クオーター残り3分で、ゴール前4ヤードまで迫りながらエクスチェンジミスでファンブルし攻撃権を失った。
 今季続いているオフェンスのミスが敗因となった形だが、大橋誠HCは「ああいう展開にしか試合を作れなかったのが敗因。オフェンスはつなぎ切れないシリーズが多かったし、ディフェンスは中盤をコントロールされ過ぎた」と、厳しい表情で振り返った。


 QB菅原が負傷欠場したとはいえ、畑卓志郎がそれほど悪かったわけではない。しかし、WR木下は、第2クオーター冒頭のTD以降はパスキャッチがなく、WR萩山竜馬も序盤で捕球していればTDというパスがあった。


 大橋HCは、試合を重ねることで伸びていくタフネスさ、したたかさが今季は足りないという。「セカンドステージで、今までと違うフットボール、違うプレーに切り替えられるわけではない。これから2週間で、同じプレーの精度や破壊力をどれだけ高めることができるか」。鍵を握るのは、菅原の復帰の時期だろう。この試合も、菅原が健在でフィールドにいたら、違った結果になっていたかもしれない。そういう期待感が菅原にはある。


 昨シーズンまで、余裕さえ感じさせる戦いでセカンドステージを乗り切ってきたが、今季はもう敗戦は許されないオービック。手負いの王者が、どんな戦いを見せるか。例年にも増して「熱い11月」となりそうだ。

【写真】冷静にパスを決め続けたLIXILのQB加藤=撮影:Yosei Kozano、19日、横浜スタジアム