日本社会人アメリカンフットボール、Xリーグは10月18~20日にファーストステージ最終戦を迎える。イースト、セントラル、ウエストの3地区で、唯一の全勝対決となるのが、セントラルのオービック・シーガルズ対LIXILディアーズの一戦(19日・横浜スタジアム)だ。リクルート、鹿島時代から長く続くライバルがどんな戦いを見せるか。


 まずデータを押さえておきたい。両者がレギュラーシーズンで対戦するのは2008年11月以来、6年ぶり。この時は鹿島が17―13で勝っている。
 その後、両者は社会人準決勝のファイナルステージもしくは決勝のジャパンXボウルで、2010年から昨年まで4季連続で対戦し、オービックが鹿島を打ち破ってきた。言い換えれば、昨年まで4季連続で、鹿島はオービックに敗れてシーズンエンドとなっている。
 この間、春のパールボウルトーナメントを含めシーガルズはディアーズに5連勝中だ。ライバルとはいえ、少しずつ差が開きつつあると言っていい。


 ▽オービックはオフェンスに不安
 王者オービックは、今季4試合で失点ゼロとディフェンス陣の強さが例年に増して目につく。特にDLの充実が目につく。3年目の冨田祥太、ルーキー清家拓也がインサイドで強力な2枚看板となった。
 さらに175センチながら激しいパスラッシュを見せる三井勇洋、ルーキー江頭玲王も台頭し、ケビン・ジャクソン、バイロン・ビーティー・ジュニアも含めて、選手をローテーションさせてフレッシュな状態を維持できている。
 LBでは、4年目の豊田真史、3年目の萩野憲輝が6月のパールボウルで負傷した古庄直樹主将の穴を埋める働きを見せている。DBでも寺田雄大、東條健人らルーキーの成長が目覚ましい。


 一方、234得点のオフェンスだが、決していい状態とは言えない。力にはっきりとした差のある太陽ビルマネジメント・クレーンズに86得点、ブルズフットボールクラブには100得点で大勝したが、今季好調のオール三菱ライオンズ戦では34得点、アサヒビール・シルバースター戦では14得点と、対戦相手のレベルが上がるにしたがって点が取れなくなっている。


 内容も悪い。直近2試合では後半のタッチダウン(TD)がない。オール三菱戦では、後半2度にわたってパントをブロックし、相手ゴール前20ヤード以内からのドライブだったがフィールドゴールにとどまった。シルバースター戦では大雨の影響もあってレシーバーがパス落球を連発し、ファーストダウンを更新できない3&アウトが6回にも及んだ。
 反則も多く、オール三菱戦では9回80ヤード、シルバースター戦では12回73ヤード。半数以上がオフェンスによるもので、特にフォルススタート、ホールディングの反則が目につく。


 オービックの大橋誠ヘッドコーチ(HC)は、反則については「経験のない控えや若手選手が犯しているかといえば必ずしもそうではない」。悪天候によるシルバースター戦の攻撃不振については「大雨になるのは、前日から予報でわかっていたこと。雨でできないことはあるが、そことは関係ないメンタルエラーが起きていた」と厳しい表情だ。


 気になるのは、今年のオービックのスケジュールだ。4月には日本代表、5月には学生代表が組織され、代表候補となった選手も含めれば20人以上の選手が関わった。そのままパールボウルトーナメントが始まり、富士通フロンティアーズとの決勝が激戦となった。
 約1カ月で米国アラバマでの試合に向けた練習が始まり、8月に遠征。帰国後約2週間で秋季シーズンが開幕した。春先からずっとフットボールをしている状態だ。


 しかも代表としてのテストマッチや、初の米国遠征など、通常のリーグ戦以上に気が抜けず、勝手の違う試合もあっただろう。フットボールの技術や試合運びはこなれているが、精神面、肉体面でどこかリフレッシュできていない部分があるように思う。
 そのために、強い相手と対戦し、後半体力が消耗してきた時に、つい初歩的なエラーを犯しているのではないか。


 大橋HCによると、例年体力づくり専用の期間を作って走り込みなどをするというが、そういう時期が今年はなかったという。「『貯金』がない状態で、勝負となるファーストステージの終盤戦、セカンドステージがどうなるか」
 フィジカルの勝負になった場合、LIXILの好守ラインは大型で強く、シルバースター以上の難敵となる。「自分たちが考えているようなリズムでなくても、コンディションをリカバリーして、力を出せるような試合」をオービックができるかが鍵となりそうだ。


 ▽LIXILは大黒柱が壁を越えられるか
 一方のLIXIL。開幕戦のオール三菱戦は一時14点差をつけられながら、終盤逆転勝ち。第2戦のシルバースター戦は苦戦しながらも、力で押し切った。
 その後の2試合は、想定通り大勝し4戦全勝。とはいえ、オービックに比べると戦力面で劣勢に立つLIXILが勝つための条件は、エースQB加藤翔平の活躍だ。


 加藤は関西学院大学時代、大型パサーとして期待されたが、エースQBに昇格後は甲子園ボウルに出場できなかった。逸材にほれ込んだ当時のエースQBで、関学大時代にも日本一に輝いた尾崎陽介が、自分の後継者にと直々に鹿島への加入を口説いたという話も伝わっていた。


 2011年のシーズン、ルーキーの加藤は期待以上の活躍を見せた。セカンドステージまで7試合でパス1148ヤード、67%の成功率もさることながら、16TDでインターセプト(INT)がゼロだった。
 1歳上の山城拓也とプレー機会を分け合っていたものの、富士通フロンティアーズ戦、ノジマ相模原ライズ戦では、ほぼ加藤がメーンで起用され、1年目にしてエースの座をつかんだかに見えた。


 その加藤の鼻をへし折ったのがオービックディフェンスだった。12月4日のファイナルステージ、加藤のパス成績は成功率38%、126ヤードでゼロTD。第4クオーターだけで3INTを喫した。鹿島はオービックに20―45で完敗し、シーズンが終わった。


 オービックディフェンスは加藤の前に立ちはだかり続けた。2012年はパールボウルトーナメント準決勝で苦杯をなめた。ジャパンXボウルは負傷のため試合に出られなかったが、昨シーズン鹿島としての最後の試合となった12月1日のファイナルステージでもTDを奪えずに2INT、チームも敗退した。
 加藤の対オービック通算パス成績は3試合で428ヤード、成功率48%、1TD6INTと惨憺たるものだ。それでも、LIXILはパスでオービックディフェンスを攻略する必要がある。


 攻撃ラインやRBが世代交代期を迎えているLIXILは、鹿島時代最後の数年と新チーム移行期に、選手補強が滞った面もあり、以前のようなゴリゴリと力で相手を圧迫するフットボールを展開するのは難しくなっている。
 そのLIXILがオービックと比較して勝るとも劣らないタレントをそろえているポジションがWRユニットだ。
 攻撃のジョーカー的存在の前田直輝に加え、長身でスピード豊かな宮本康弘、クラッチレシーバーの中川靖士という2人の日本代表。さらに190センチながら40ヤードを4秒台半ばで走るスケールの大きな鈴木謙人が覚醒の気配を見せている。他にも、岩井悠二朗、永川勝也、藤森裕人と粒ぞろいだ。


 LIXILは好パサーだった山城が引退し、名実ともに加藤がオフェンスの大黒柱となった。加藤がWR陣を使いこなせるか、そして苦手のオービック守備陣の壁を超えられるかに、LIXILの勝利と、ファーストステージ1位通過がかかっていると言っていい。


 最後に。オービックは、シルバースター戦で負傷退場したエースQB菅原俊の状態が気がかりだが、出場は可能なようだ。またシルバースター戦で限定的に出場した古庄が、本格的に復帰戦となるだろう。チームの精神的支柱が戻ってくるのは大きい。
 順当ならオービックが若干有利だが、日本のフットボールは「順当過ぎて」面白くないとも思う。この試合の後に行われる、シルバースター対オール三菱戦も含めて、日曜日の横浜スタジアムでは予想外の戦いを期待したい。

【写真】オール三菱戦で、ロングパスを狙うLIXILのQB加藤=撮影:Yosei Kozano