日本社会人アメリカンフットボール・Xリーグの今季最激戦区となったイーストで、富士通フロンティアーズ、ノジマ相模原ライズと3強を形成するIBMビッグブルー。第3節の9月27日、新装の千葉県八千代市総合グラウンドを舞台に、ノジマ相模原を30―21で破り開幕3連勝となった。


 IBMにとって、今季は勝負の年だ。2010年に山田晋三ヘッドコーチが就任して5年目。12年にはQBケビン・クラフトが加入し、リーグに旋風を起こしながら、結果が付いてこなかった。
 ファーストステージでは12、13年ともに3勝2敗で3位。そして不利な状況のままセカンドステージに突入して守備の強い相手に敗れ、準決勝に進めずというパターンが続いてきた。


 下位チーム相手には持ち前の攻撃力で圧勝するが、上位相手の試合では、僅差の逆転負けを喫することが多いIBMにとって、攻守のラインが強く、堅固なフットボールを展開するノジマ相模原は苦手チームの一つだ。
 過去3シーズンで1勝2敗。1勝は、12年にセカンドステージで敗退が決まった後の重圧のかからない試合だった。昨シーズンは第2節にノジマ相模原のホームゲームとして、相模原市で対戦し、21-24で敗れている。ファーストステージの1位、さらにその先のビッグタイトルを狙う上で、乗り越えなければならない壁だった。


 しかし、勝利の原動力となったのは、クラフトでも末吉智一、小川道洋、栗原嵩、ジョン・スタントンらタレントぞろいのバックス・レシーバー陣でも、ジェームス・ブルックス、 トゥイカ・トゥファーガ、紀平充則ら強力な補強を行ったDLでもなかった。岸本祐輔、中山裕貴らに率いられたノーネームなLB、DB陣が「曲がっても折れない」粘り強い守備で、ノジマ相模原の攻撃を抑えきったのだ。


 以下、試合の展開を振り返ろう。
 ゲーム序盤は、完全にIBMのペースだった。最初のドライブ、ノーハドルからQBクラフトのパス、末吉、ルーキー髙木稜の2人のRBによるランで前進すると、最後はWR小川にタッチダウン(TD)パスをヒットし、先制した。79ヤードを8プレー、わずか1分27秒で進んだIBMらしい攻撃だった。
 ノジマ相模原は反撃し、フィールドゴールで3点を返したが、IBMは次の攻撃でもクラフトからTEスタントンに40ヤードのTDパスが決まり、試合開始7分で早くも13―3とリードした。


IBMは4回目のドライブでは、クラフトが6連続パス成功、最後はルーキーWR梶川航平にTDパスを決めて、第2クオーター4分で20―3とした。
 この時点で、クラフトのパスは20回中18回成功の成功率90%、205ヤード3TDとさえ渡り、末吉、高木のランも好調。IBMが50点か、あるいはそれ以上奪うのではないかとさえ思われた。

 
ノジマ相模原は焦らずに追撃する。「たまにしか走らない」とランを封印してきたQB木下雅斗の15ヤードスクランブルで、レッドゾーン(ゴールまで20ヤード以内)に侵入。 このチャンスに、木下はエンドゾーンのWR井上繁明にパスを投じるが、IBMがルーキーDB中谷祥吾、LB岸本の好ディフェンスでTDを防いだ。
 その後のプレーでスナップミスが出て大きく後退したライズはFGに終わった。ノジマ相模原は直後の守備で、DBロカ・カノンガタがIBMクラフトのパスをインターセプト。IBMの反則もあり、再びレッドゾーンに侵入する。
 しかしIBM守備陣がここでも踏ん張り、TDを許さず。ノジマ相模原はまたしてもFGにとどまり、IBMが20―9で後半へ折り返した。

 
 後半、ノジマ相模原守備陣がクラフトのパスにアジャストする。望遠レンズでQBを追っている私には、ノジマ相模原のパス守備の詳細は分からない。しかしクラフト特有のクイックなパスは影をひそめ、レシーバーを探すのに苦労しているのが分かった。
 両チームがFGで3点ずつ加えて迎えた第3クオーター5分からのIBMの攻撃をノジマ相模原がこの試合初めて3回連続パス失敗に追い込み、パントに。しかもこのパントが16ヤードしか飛ばず、ノジマ相模原はIBM陣48ヤードからの攻撃となった。

 
 ノジマ相模原は、木下がベテランWR井本圭宣へ29ヤードのパスを通してゴール前3ヤードへ。ここでTDを奪えば流れは完全に変わる。パワーランが得意なノジマ相模原絶好のシチュエーションだが、IBMの守備陣が奮起する。
 エースRB宮幸崇のランを2度にわたって止め、サードダウンでも木下のパスを防いだ。ノジマ相模原は絶好のチャンスを生かせず、この試合4本目のFG。


 IBMは次の攻撃で、第4ダウンのギャンブル。クラフトがプレッシャーをかけられながら無理にパスを通そうとしてボールが浮きDBカノンガタに2本目のインターセプトを喫する。
 直前までの5ドライブを4回得点に結びつけているノジマ相模原は、木下が粘り強くパスを決めてゴール前に攻め込むと、宮幸がエンドゾーンに走り込んで、この試合初のTD。しかし、同点を狙った2ポイントコンバージョンパスをDEブルックスにはたかれて2点差のまま。


 ノジマ相模原のパス守備に苦しむクラフトだが、エンドゾーン手前に走り込んだスタントンにパスを通すと、最後は末吉にパスを決めてTD。ノジマ相模原を9点差と突き放した。
 最低2回以上の得点が必要なノジマ相模原は第4クオーター、残り4分余りからの攻撃で、木下のスクランブル、さらにWR井本へのパスでIBM陣内へ。しかし、ファーストダウンを狙った木下のミドルパスを、IBMのDB中山が値千金のインターセプト。この時点で残り3分。試合は事実上決まった。


 IBMの後半の攻撃は135ヤードで10得点。3&アウトが3回もあり、クラフトも後半はパス111ヤード、1TDで1インターセプト。ノジマ相模原は後半255ヤードを前進し、12得点。しかし、前半も含めレッドゾーンに4回侵入しながら3回はFGと、TDを取り切れなかったのが響いた。
 IBMが「らしくない」といっては失礼だが、タレント力で相手を圧倒する得意のパターンとは違った、ボクシングでいえばボディーブローの打ち合いのようなしのぎ合いの展開で相手を制した。

 
 試合後のハドルで「こういう試合をよく勝ち切った。ほんまにようやった」と選手をたたえたIBMの山田HC。「ライズは本当に強かった。ブルックスはダブルチームされて思うように動けなかったし、後半はオフェンスも止められた。しかし、ディフェンスがFGで耐えたのが大きかった」という。


 殊勲のインターセプトの中山は「中を空けて、外を守っているふりをして(中にパスを投げさせて)戻って決めた。逆からレシーバーが入ってくるのが見えた」。10月で33歳になるベテランらしい読みのプレーだった。
 守備陣については「勝負所でランプレーを止めた。みんなが自分の役割を遂行した。ライズのようなチームのランプレーはLBのキーリードが大変だが、練習の成果が出た」と胸を張った。


 LB、DB陣では岸本が今春日本代表に選ばれたものの、スター選手はいない。だが、かつて関学大で名をはせた國方雄大や、QBから転向したベテラン椙田圭輔、この日は1インターセプト6タックルと活躍したルーキー中谷と、新旧の戦力がかみ合ってきている。

 
 ただ、チームも山田HCも勝利の余韻に浸っている時間はない。1週間後の10月4日には富士通との対戦(川崎)が待っている。「ライズ戦の準備でいっぱいで、正直そこまでなかなか手が回っていない」という山田HC。ただ、夏にこの日程が出た段階で、ある程度準備はしてきたという。
 勝てば、念願のファーストステージ1位通過が見えてくる。「しんどいです、ほんま。心臓に悪いです」と言いながら去っていく後姿には充実感があふれていた。

【写真】4Q、勝負を決めるインターセプトで笑顔を見せるIBMのDB中山=撮影:Yosei Kozano、9月27日、八千代市総合グラウンド