日本社会人アメリカンフットボール・Xリーグで、今季最も激しい争いとなりそうなのが、イーストだろう。昨季社会人準優勝の富士通フロンティアーズ、セントラル2位のノジマ相模原ライズ、同3位のIBMビッグブルーが3強を形成している。
 この3チームは、今季が始まる前に共通する戦力補強を行った。それは米国人DEの加入だ。いずれも米のNCAA1部にあたるフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS)の強豪校で活躍した実績を持つ長身、大型パスラッシャーだ。


 富士通に加わったのは背番号「69」のオースティン・フリン。合流がシーズン直前となったため、9月23日現在、チームの公式サイトには彼の記述はない。1990年6月生まれの24歳だ。
 米ではカリフォルニア州のジュニアカレッジから、現在カレッジフットボール最強カンファレンスと目されるサウス・イースタン・カンファレンス(SEC)のアーカンソー大に転校して2012年のシーズンにプレーし、10タックル、1・5サックの記録を残した。NFLオークランド・レイダースのキャンプにも参加したという実力派だ。


 アーカンソー大のメンバー表では身長196センチ、体重118キロだが、現在はもう少し体重はあるかもしれない。特に目を見張るのは上腕の太さだ。カリフォルニアのジムで指導員をしていた際、日本人の留学生にも熱心に指導していたという。
 日本で初めてのプレー(9月7日のハリケーンズ戦)は、QBがパスを投げた後のヒットとなり反則になってしまったが、インパクトは十分だった。2戦目となる明治安田戦(9月16日)でも、QBにロスタックルを決めるなど、破壊力のあるプレーを見せている。


 ノジマ相模原に加入したのが、タビタ・ウッダード。背番号「14」。ハワイ出身で、ハワイ大で2011年から3年間プレーし、通算で30試合に出場、80タックル、6サック、2インターセプトの成績を残した。
 特に2012年シーズンは5・5サックと活躍。今春のNFLドラフトにも候補選手として名を連ね、スカウトを招いて行う体力、技能審査の「プロデイ」では、垂直跳び38.5インチのジャンプ力を披露したという。


 5月には昨季のスーパーボウル王者シアトル・シーホークスのルーキーキャンプにも参加した。ノジマ相模原の公式サイトによると、8月に23歳になったばかり。身長は193センチ、体重117キロ。
 日本でのデビュー戦となった9月15日のハリケーンズ戦では、QBサックこそなかったが、単なるパスラッシャーというよりはオールマイティーな守備能力を見せるプレーぶりで、QBにプレッシャーをかけてファンブルを誘発するなど早くもチームに貢献している。ハワイ出身者らしい人懐っこい雰囲気を漂わすなかなかのイケメンだ。


 IBMに入団したのはジェームス・ブルックス。背番号は「34」。米NCAAパック10(現在はパック12)カンファレンスの強豪、アリゾナ州立大で2008年から3年間DEとしてプレーし、通算53タックル、9サックという記録を残した。
 特に3年時の2010年のシーズンは25タックル、4サックと活躍し、現NFLコルツのアンドルー・ラック(当時はスタンフォード大)、イーグルスのニック・フォールズ(当時はアリゾナ大)とも対戦し、フォールズからはQBサックも決めている。


 家庭の事情で、最上級生の時にフットボールから離れたが、昨年はドイツのクラブチームでプレーしていた。IBMの公式サイトによると身長197センチ、122キロだが、体の骨格は3人の中でも一番大きいようだ。
 日本で2戦目となる9月17日の東京ガス戦では、第1クオーターに東京ガスのフィールドゴールトライをジャンプしてブロックしたほか、パスプロテクションする東京ガスTの由利真彦(188センチ、120キロ)を片手で突き倒すなど、桁違いの身体能力を見せつけた。プライベートではミュージシャンとしても活動しているという。


 さらにIBMには、昨年まで2年間ノジマ相模原でプレーしていたハワイ大出身のDEトゥイカ・トゥファーガが移籍してきた。トゥファーガは188センチ、114キロで、パワフルなラッシュを見せる実力派。両サイドから強力なプレッシャーが可能となった。


 外国人DEがイーストの3強にそろったことについて、守備が専門のIBM山田晋三ヘッドコーチ(HC)は「それはそうだろうと思う。(守備ラインの端に位置する)DEは、相手と1対1になることが多い。インサイドの選手はダブルチームでブロックされる。いくら強い相手でもダブルチームなら止められる」と、Xリーグのトレンドになっていくことを予想する。


 自チームの2人については「ブルックスは昨年プレーしていたドイツでは、スピードでドイツ人を圧倒していた。運動能力はずば抜けている。問題はスタミナで、常にフルスピードで全力のプレーができるわけではない。トップクラスのチームとやった時にはその辺が課題になる。トゥファーガは、ライズではインサイドをプレーしたりすることもあったが外で使う。日本でのプレーに慣れているのも良い」という。


 DE2枚を補強した理由については「ジェームスがいたら、その逆サイドをやられるだろうというのは想像がつく。だから両方に強い選手を置くしかないという結論だった。まあ『どこかのチーム』ではないですが」と笑った。


 山田HCが言う『どこかのチーム』とは、外国人DE起用の先駆者で、かつ最も成功したチーム、オービック・シーガルズのことだ。
 9年連続オールXリーグ選出、社会人アメフット史上最高の米国人選手、ケビン・ジャクソンと、Xリーグ屈指のエキサイティングなハードヒッター、バイロン・ビーティー・ジュニアというコンビが、ライスボウル4連覇の原動力の一つであることは疑いがない。ビーティー・ジュニアの前に在籍したカール・ノアも、長身で運動能力に優れたDEだった。


 オービックの大橋誠HCは「現代のフットボールにおいて優れたエッジラッシャーを持つというのは重要なこと。的を射た補強だと思う」と語る。
 とはいえ「このディフェンスの時には、こんなことをしてほしいとか、相手のオフェンスがこう来た場合にはこういう風にしてくれとか、かなり細かいコミュニケーションがないと機能しない。ただただ強く外からラッシュをかけてくれればいいからと頼むだけで、全部のプレーに絡んでくれるかといえばそうではない。通常、日本人のDEに対してかける時間の1・5倍くらいコミュニケーションを取って、お互いのコンセンサスを得ておかないと、(外国人DEを)なかなか生かし切れない」という。


 今季のイースト3強の激突は、27日のノジマ相模原―IBM(八千代市総合グラウンド)が最初となる。ノジマ相模原は、高いモバイル能力を持ちパスも年々巧みさを増す木下雅斗。IBMはリーグナンバーワンパサー、ケビン・クラフト。攻撃の中心となる二人のQBに対し、新加入の米国人DEがどれだけ圧力をかけ、オフェンスを潰していけるかが勝敗を左右することになるだろう。


 最後に、気になる点を。来年の世界選手権では、米国、カナダ、メキシコの北米勢を倒すことが日本代表の重要なテーマだが、QBと同様にDLも米国出身選手に任せてしまうと、強い日本人DLが育たなくなる懸念がある。ケースとしては、プロ野球の外国人スラッガー、サッカーJリーグの外国人ストライカーの起用に似た部分もある。この問題については、改めて書きたい。

【写真】右腕1本で、OLを突き倒すIBMのDEブルックス=撮影:Yosei Kozano、17日、東京ドーム