日本社会人アメリカンフットボール・Xリーグの2014年シーズンが8月25日に東京ドームで開幕した。
 開幕戦のLIXILディアーズ対オール三菱ライオンズの試合前、記者会見の場で日本社会人協会(NFA)の深堀理一郎理事長が、2016年シーズンからのXリーグの新方式について発表した。
 実力差のあるチーム同士の対戦をどうするか、一方的大差となる試合をどうやって減らすか、学生、社会人を問わず日本のアメフット界共通の懸案に対する一つの回答だ。深堀さんが理事長就任後、1年で新方式の発表にこぎつけたのは、リーグの危機感の表れでもある。以下、内容を概説する。


 ▽地区内総当たりを廃し、均衡した試合を増やす
 NFA方式と名付けられた今回のリーグ戦スキームの最大のポイントは、形の上では3ディビジョン(地区)、18チーム制を維持しているが、地区内の総当たり戦を廃止し、実力的に同レベルか、それほど差のないチーム同士の対戦を意図的に作り出すところにある。各チームは前シーズン順位に基づいて対戦相手が決まる。


 レギュラーシーズンのリーグ戦は地区内3試合、地区外3試合の計6試合。
 地区内は、上位3チームは他の上位2チームに下位1チーム。下位3チームは他の下位2チームと上位1チームが対戦相手。地区外対戦3試合は、同レベルのチームとの対戦が基本。具体的には以下のようになる。
地区1位:地区内2、3、4位と対戦 地区外1位×2、3位と対戦
  2位: 同 1、3、5位と対戦  同 2位×2、3位と対戦
  3位: 同 1、2、6位と対戦  同 1、2、4位 と対戦
  4位: 同 1、5、6位と対戦
  5位: 同 2、4、6位と対戦  
  6位: 同 3、4、5位と対戦
 結果として、これまではセカンドステージ以降に限られた東、中地区と西地区の対戦も生じる。前年3位以上のチームはリーグ戦で必ず1試合は東西間で遠征することになる。
(注)4位以下のチームの地区外対戦は、東西間遠征の有無でパターンが異なる。


  ▽スケジュール・ストレングス(対戦強度)

 今回の新方式の中心となる基準が、スケジュール・ストレングス(対戦強度)だ。これは対戦相手の前シーズン順位の平均値で、2013年のシーズンを元にした例を見ると、東地区1位チームの対戦相手は、前年度2、3、4位(地区内)1、1、3位(地区外)なので、合計の平均値は2.33となる。以下2位と3位は2.67。4位が4.33、5位と6位は4.50となる。※数値は地区・シーズンによって変動する。


 ▽順位決定
 対戦強度は、対戦相手の決定だけでなく、リーグ戦終了後の総合順位の基準ともなる。地区内上位3チームと下位3チームは対戦強度がかけ離れているので、下位チームは全勝の場合でも総合順位は10位となる。前年上位に属するチームは全敗でも9位となるという。その上で以下の基準で順位が決まる。
(1)勝ち星数(2)当該チーム間の直接対決の勝敗(3)当該チームの対戦相手の勝利数合計(4)当該チームが勝利した対戦相手の勝利数合計(5)抽選


 ▽JXBトーナメント
 新方式によるリーグ戦終了後、11月以降に8チームによるジャパンXボウル(JXB)トーナメントが始まる。
 8チームの内訳は、リーグ戦上位6チームと、7、8位と10、11位が戦うワイルドカード(WC)プレーオフの勝者2チームだ。WCの組み合わせは「7位―11位」と「8位―10位」 または「7位―10位」と「8位―11位」。同地区対戦となる組合せを優先し、決定する。
 ライスボウル進出チームの総試合数は、9もしくは10試合となり、これは現在の10試合とほぼ変わらない。


 ざっと文字で説明すると、大変難しい方式のように見えるがそんなことはない。「NFA方式」とは要するに変則リーグ戦だ。
 チーム数が多すぎて総当たりは不可能なために、対戦相手の強度をリーグが管理しているケースは、例えばNFLもそうだ。日本の大相撲も、幕内力士であっても横綱や大関と対戦しない番付下位力士がいる点で似た部分がある。
 ファンとしては、対戦カードは一定の基準によって決まり、同レベルの対戦が増えるということを理解していれば十分ではないか。その後にWCを含めたトーナメントで王者を決める。決してわかりにくい仕組みではない。


 また、3地区18チーム制を堅持した形にはなっているが、実際には各地区の上位3チームと、下位3チームの扱いには差がある。これは、対戦強度が大きく異なるからなのだが、上位9チーム内にいれば全敗しても総合順位9位、逆に下位9チーム内で全勝でも10位というのは、やはりわかりにくい。
 一方で、9位のチームがJXBトーナメントの望みが絶たれ、10、11位のチームがWCプレーオフに進めるというのは、全チームに優勝可能性を残したからでもある。


 均衡した面白い試合と、トップリーグのチーム数を減らさない努力は二律背反する面があり難しい。その中で苦心を重ねた結果が見て取れる。順位決定など、ファンだけでなくメディアから見ても理解しにくい部分の説明は今後の課題として残る。


 今回の方式で、リーグ戦段階から東西間の対戦も組まれ、従来よりも遠征回数が増え、経済的な負担増となる。また、トーナメント進出の上位チームのアドバンテージが見えにくい面もあり、ホーム、アウエーの差が明確になるような開催方法も課題となるだろう。
 そのためには、リーグもチームも財政基盤強化が必要だ。NFAが実施を来年ではなく再来年としたのはその準備期間だ。2年は長いようで短い。始まった時に準備不足といわれないようにしてほしい。


 さて、今回ほんとうに書きたかったのは、開幕戦のオール三菱対LIXIL戦についてだ。ご存知の方も多いと思うが、オール三菱が第3クオーター終了時まで28―14とリード、最後は力尽きて逆転負けを喫したが、東京ドームに来た4000人を超すお客さんは、「アメリカンフットボールって面白い」と思いながら帰ってくれただろうと思う。
 なぜオール三菱がここまでLIXILを苦しめたかは、松元竜太郎さんが書いているので触れない。その代わりにオール三菱とリクシルの前身、鹿島の対戦成績を記したい。
2012年春 0―56
2011年秋 0―28
2011年春 0―41
2010年秋 0―23
2008年秋 0―28
2006年秋 0―27
2004年秋 0―20
2003年秋 0―42
2002年秋 0―44(LIONS)
 2007年より前は春シーズンの記録が不明なのでわからないが、秋のリーグ戦では「ライオンは鹿に一度も勝ったことがない」ばかりか、得点すら挙げたことがなかったのだ。


 昨年12月1日、セカンドステージ下位リーグ「バトル9」の1位決定戦で、オール三菱はエレコム神戸ファイニーズとシーソーゲームを展開し、24―21で勝利した。白熱したゲームだったが、残念ながら観客がほとんどおらず、取材したメディアも実質的に私一人だったことは、このコラムでも書いた。
 同じコラムで、NCAAフットボールの話題にも触れ、全米ランキング1位だったアラバマ大を、28―34の奇跡的逆転で破ったオーバーン大が、前年は0―49で敗れていたと記した。
 そして「Xリーグが面白くないのは、強いチームと弱いチームに分かれているからではない。弱いチームがいつまでも弱いままだから面白くないのだと思う。オール三菱は5勝3敗、来季の目標はなにかはっきり分かっているはずだ」と辛らつな言葉を連ねた。


 オール三菱の林顕ヘッドコーチは、開幕戦前の記者会見で昨年の「バトル9」1位決定戦に言及し、「今季は上位のチームに勝つ」という誓いを口にした。惜しくも勝利はならなかったが、掲げた言葉「真摯」が事実だったことをプレーで証明してくれた。


 リーグがいくらスキームや方式で苦心を重ねたところで、「仏作って魂入れず」。当事者である選手がコーチが、そしてチームが、それに反応しなければ結局は何も起こらないのだ。試合後、通路ですれ違った深堀理事長の明るい表情が、この先も続くような試合を、各チームには期待したい。

【写真】オール三菱の林顕ヘッドコーチ=撮影:Yosei Kozano、25日、東京ドーム