社会人アメリカンフットボールのXリーグは春シーズンの山場が来る。
 5月31日のパールボウルトーナメント予選リーグDブロック、オービック・シーガルズ対IBMビッグブルー(川崎富士見球技場)の一戦が、この4、5月に展開された日本のアメフットシーンの中で最もレベルの高い攻防となるのは間違いないだろう。


 この組み合わせといえば、IBMのQBケビン・クラフトが展開するハイパーパスオフェンスVSケビン・ジャクソン、バイロン・ビーティー・ジュニア、古庄直樹らを軸とするオービックディフェンスが一番の見どころだが、あえてオービックオフェンスの視点からゲームを考えた。


 まず、過去2シーズン、この両チームの対戦を振り返ってみた。
 2012年9月の試合はオービックが第1クオーターに4タッチダウン(TD)を奪って、IBMの攻撃をパスによるキャッチアップに追い込み、守備がクラフトつぶしに集中するというゲームプランが奏功した。
 序盤でIBMのキッキングのミスやターンオーバーから得たチャンスは全てフィールドゴール(FG)ではなくTDに結び付けた。
 2013年9月は、前半にIBMが3TDを奪い一時はリードしたが、オービックがQB龍村学、WR木下典明のコンビでパスTDを次々に決め、シーソーゲームを制した。

 オービックが昨シーズンのゲームで苦戦した理由の一つは、第1クオーターに2度敵陣20ヤード以内に入りながら、いずれもFGに終わったことだ。4TDと活躍した龍村もショートパスの不調を反省していた。
 この両チームは、オフェンスの決定力が高く、ロースコアの競り合いになることは考えにくい。相手陣深く攻め込んだ場合、FGの3点では不足なのだ。


 レッドゾーンオフェンスは相手ディフェンス選手の密度も上がる。先発が予想されるQB菅原俊の投げ分けが重要となる。オービックレシーバー陣といえば木下、萩山竜馬の快速ワイドアウトが頭に浮かぶが、クイックヒットのショートパスターゲットとしてWR池井勇輝、平野勇紀、大型TE森章光らの活躍が勝利には不可欠だ。


 オービックは昨秋に比べても、RBの陣容が充実してきた。エースの原卓門、古谷拓也が健在な上、2年目の望月麻樹を筆頭に、加藤寛樹、山﨑公士の90キロ超パワーRBがいずれも好調で力強い突進を見せている。
 さらに昨秋のシーズンをほぼ全休した中西頌も復活した。レッドゾーンに限らずショートヤーデージでは心強い。


 この試合、ランが重要となる理由がもう一つある。過去2シーズンは秋季リーグ戦のファーストステージだったので、12分クオーターだったが、パールボウルトーナメントは全て15分クオーター制だ。さらに天気予報によると、当日の天候は晴天で気温は27度かそれ以上になる。
 この時期の日差しは真夏よりも強いため、フィールド上の体感温度はさらに上がるだろう。ボールコントロールオフェンスで相手ディフェンス陣をフィールドに張り付け消耗させることが過去2戦以上に重要となる。


 オービックで鍵を握るのがフランク・フェルナンデス、ケアラカイ・マイアバの二人のOLだ。
 今オフに渡邊翔、保呂篤志らOL5人が引退した。坂口裕(立命大)、王野志宏(法大)、増山俊樹(日大)ら学生トップ級の素材が加入したとはいえ、経験とコンビネーションがものをいうポジション。また坂口は大学世界選手権に参加していたためブランクがある。


 IBMは、元オービックのDT紀平充則がアサヒ飲料チャレンジャーズから加入、中央を守る。かつてDBでプレーしていたアルバート・グリフィンもDEで復帰、外からスピードのあるラッシュを見せている。
 オービックが昨秋セカンドステージのアサヒ飲料戦で見せた「紀平封じ」、フェルナンデスとマイアバのインサイド起用を再現すれば、エッジラッシュへの備えがおろそかになる。IBMの狙い目だろう。


 今季から加入のQB畑卓志郎は、脚力があってラン、パスを巧みに使い分け勝負度胸もある。大橋誠ヘッドコーチいわく「練習よりも実戦で力を出せる」タイプ。重要なシーンでの投入もあるかもしれない。


 一点だけ気になるデータをあげておきたい。IBMのQBクラフトはあれだけのパス能力を持ったQBでありながら、来日以降出場した試合で第2クオーター以降の逆転勝利が一度もない。
 第1クオーター終了時にリードされた試合は必ず負けている。本来パサーはキャッチアップオフェンスが得意なはずだ。巡りあわせが悪かっただけと見ることもできるが、次の試合を見る一つのポイントになると思っている。

【写真】世代交代が進むオービックOL=撮影:Yosei Kozano