5月17日の川崎富士見球技場。パールボウルトーナメント予選リーグ、太陽ビルマネージメント・クレーンズはIBMビッグブルーと対戦した。
 社会人アメリカンフットボール、Xリーグの1試合最多得点差、最多失点の記録を更新する惨敗から2週間足らず。「立て直し」は簡単なことではない。リーグナンバーワンパサーのQBケビン・クラフトを中心に抜群の得点力を誇るIBMと、どのように戦うのかに注目した。


 太陽ビルは序盤からIBMに4タッチダウン(TD)とセーフティーを奪われ、第2クオーター2分過ぎには0―30。またしても三桁失点かと懸念した。
 しかしその後の攻撃で、QB石川貴常のパスが要所で決まり、2ドライブ連続でTDを奪い13―37とした。後半は、体力差を含む力の差が出た感があり、結局13―72で敗れた。
 とはいえ、オービック戦では4回しか奪えなかったファーストダウンが13回。石川とRB工藤健一の元IBMコンビがけん引する攻撃は形になっていた。守備もクラフトからインターセプトを奪うなど見せ場を作った。ちなみにクラフトは昨秋、パス213回でインターセプトは2回、鹿島とオービックにしか許していない。


 太陽ビルの試合で、試合の点数よりも私が気になっていたのは、スタイルしていた選手数やスタッフの人数の少なさだった。
 近年、X1昇格後に最も好成績を残したのは2009年の日本ユニシスブルズ(現ブルズフットボールクラブ)だったが、春に川崎で見たブルズは2部時代に比べてサイドラインの人数や機材が大幅に増え、目を見張ったのを覚えている。
 秋シーズン、オール三菱、東京ガスを破るなどリーグ戦3勝2敗でセカンドステージにも進出した。それに引き換え、太陽ビルは、オービック戦では高校生のチームと見間違うほどサイドラインの人が少なかった。今井孝治監督によると、オービック戦でスタイルしていた選手が25人。IBM戦では35人まで増えたそうだ。


 今井監督によると、このオフに引退した選手が多いのが選手数の少なさの理由だという。
 「X1に昇格することが悲願で、それまで引退を伸ばしていたベテラン選手が多かった。今オフが区切りになった」。また、X2ではやれるが、X1のレベルではプレーするのに自信がないと言って今季から参加しなくなった選手もいるという。
 例年、新人選手が加入するのが遅いため今も人数が増えているそうで、6月22日の東京ガスクリエイターズ戦には45人程度、秋シーズンには60人まで増やしたいと語る。
 10余年前、QB石川は東海大で、RB工藤は専修大で、ともに甲子園ボウル出場をかけた関東大学決勝で涙を飲んだ経験を持つ。30代半ばにさしかかり、奮闘するベテランに呼応する若者が少しでも多く現れることを期待したい。


 話を変える。Xリーグを統括する日本社会人アメリカンフットボール協会(NFA)が2013年4月にあるレポートを作成した。その中に2012年のX1計18チームの興味深いデータがある。いくつか例をあげたい


・クラブの法人格:株式会社=1(チーム、以下略)、NPO法人=3、任意団体=14
・予算規模:5000万円以上=8、5000万~2001万円=2、2000万~1001万円=4、1000万円以下=4
・実質有給のコーチングスタッフ数:11人以上=1、6~10人=3、2~5人=5、1人=2、なし=7


 このデータが2012年のアンケートに基づくということを重ねて記しておく。「任意団体」というのは、法人格を持たない組織で、町内会や同好会、サークルと同じである。
 企業チームの場合は、所属企業に法人格があるので別だが、当時は18チーム中企業チームが3チームだけ。日本のトップリーグのチームの大半が、法的には囲碁を楽しむおじいちゃんの集まりや、草野球チームと同じなのだ。
 さらに予算規模、有給コーチの人数を見ればチーム間の格差は歴然としている。体制の差を考えれば、下位チームは善戦している方なのかもしれない。
 アメリカンフットボールはお金と手間をかけたチームほど強くなる、典型的な「弱肉強食」のスポーツだ。大量得点差は議論のタネになりがちだが、点数はチーム体制がぶつかり合った結果に過ぎない。


 このところ日本経済は好況と言われながら、一部の「勝ち組」企業だけが業績を伸ばし続ける側面がある。社会人アメフットもその縮図となって「エックスリーグのアベノミクスリーグ化」が進んでいるようだ。
 しかし、「競争と進歩の権化」のようなNFLがドラフトやサラリーキャップ制を導入して、戦力均衡に心を砕いているのはなぜか。フィールドの外にまで自由競争を広げると、最終的にチーム数と市場の縮小を招くとわかっているからだ。


 アメフット振興というと、実態を理解せずに、競技としてのプロ化を求める一部ファンもいるが、Xリーグの場合はそれ以前に経営・運営のプロ化が求められていると思う。深堀理一郎・NFA理事長はじめ、関係者はもちろんこの現状をよく理解している。
 深堀理事長は昨年のインタビューで、Xリーグとしての協賛金獲得や、各チームのマネジメント体制を支援することの重要性を語っている。また、イベントやフラッグフットボール、チア教室などを通じて地域に貢献するチームも増えているが、これも「情けは人のためならず」。地域社会と結びつきを深めることが長い目で見て運営上のプラスにつながっていくはずだ。

【写真】パスをインターセプトする太陽ビルDB中村竜=撮影:Yosei Kozano、17日、川崎富士見球技場