5月4日のパールボウルトーナメント予選リーグ、オービック・シーガルズ対太陽ビルマネジメント・クレーンズ(川崎富士見球技場)の一戦が、111対0で、社会人アメリカンフットボール、Xリーグの1試合最多得点差、最多失点の記録を更新したことは前回お伝えした通り。


 この結果に、ファンから厳しい意見も出ている。上位チームと下位チームの実力に差がありすぎて、同じ1部リーグ「X1」として運営するのはおかしい、上位チームだけで1部を再編するべきというものだ。
 関東学生連盟は今季から、1部並列2ブロック16大学を上位の「Top8」、下位の「Big8」の直列2ブロック制に変更する。それが念頭にあるのだろう。


 しかし、今回の試合結果、特に点数だけを取り上げて、1部再編を議論すべきだとは思わない。なぜこれほどの大差がついたのか。それは、15分クオーター制と、20数人と60人という両チームの出場可能選手数の差が組み合わされた結果だろう。
 この春、日本のフル代表や大学世界選手権参加のカレッジ代表が国内外で外国チームと対戦したが、今回のオービック対太陽ビルの実力差以上にかけ離れた対戦もあったと思う。


 しかし12分クオーターだったことに加え、審判の判断で試合途中に時計をランニング計時に変更したことで、最大でも80点台の差にとどまった。
 日本代表対フィリピン代表戦やカレッジ日本代表対フィンランド代表戦など、15分クオーターで時計を流さずに試合を行なったら、おそらく点差は100点を優に超えていたはずだ。


 さらにオービックは、2本目、3本目の若手選手や、負傷やブランクからのカムバック組を試合の大半を通じて起用したため、首脳陣へのアピールがモチベーションとなり、最後まで貪欲に試合に取り組んだ面があった。
 競技は違うが、1995年に開催されたラグビーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で、日本代表がニュージーランド代表・オールブラックスに145対17で惨敗した予選プールの試合を思い起こした。この試合も、既に決勝トーナメント進出を決めていたオールブラックスのメンバーは控えが中心だったため、最後まで手を抜かずにトライを重ねた結果が記録的な大差に結び付いたと記憶している。


 ラグビーの話をしたついでに言えば、花園ラグビー場で開催される全国高校ラグビーでは毎年1、2回戦で大差の試合が散見されるが、昨年度は100点以上の差が2試合あり、対戦高校名は書かないが113対0と121対0だった。


 ラグビー日本代表の惨敗はクリント・イーストウッド監督の映画「インビクタス」で、モーガン・フリーマンが演じたマンデラ大統領に驚かれるほどのものだった。
 当時の日本代表、昨年末に大差で敗れた高校ラグビーの2校、さらにアメフットのフィリピン代表。仮に「弱い」「面白くない」「無意味だ」と切り捨てたとしたら何かプラスになるのだろうか。


 もちろん敗れたチームが屈辱を胸に努力を重ねていつかは雪辱を、ということもある。しかしそれ以上に大切なのは、いかなる競技であれ、参加チーム数を絞り込むのは長い目で見て普及や人気拡大にマイナスだということだ。
 少数精鋭によるレベルの高い戦いといえば聞こえは良いが、結局スポーツとしての裾野が狭くなり、競技人口の減少、レベルの低下に結びつく。


 前述のようにアメフットの関東学生連盟は、より白熱したリーグ戦を求めて上下2ブロック制にしたが、ある意味大学スポーツだから可能だと思う。
 大学スポーツは不祥事による活動停止などはあっても、社会・経済の変動の影響は比較的受けにくい。部ごとの長い伝統があり、OBや同窓生の応援も根強いからだ。


 しかし、社会人スポーツは、成績不振のみならず、本体の業績低迷などによってもチーム自体が無くなる可能性が常にある。日本で最もポピュラーなスポーツ、野球を見ればわかる。
 全国高校野球選手権の参加校数は、少子化の影響が大きいとはいえ、最多だった2003年の4163校から昨年の3957校となだらかな減少にとどまっている。
 大学野球は最近、07~13年までのデータしかないが、加盟校数は370から378に微増、部員数は約2万人から2万4千人と大幅増だ。しかし社会人野球の場合、企業チームは、およそ半世紀前の1963年の237から04年には83まで減った。昨年度は89とやや持ち直しているが、状況は厳しい。


 社会人アメフットの状況はもっと厳しい。X1所属チームでさえ、メーンスポンサーの撤退や支援停止が相次いでいる。
 ノジマ相模原ライズは復活を果たし、リクシル・ディアーズ、ブルズフットボールクラブは今季以降も継続となったが、活動を停止したチームも複数ある。
 X1を再編しチームを絞り込んだ場合、下位リーグとなったチームのスポンサーはどう考えるだろうか。全体のチーム数は減ることはあっても増加にはつながらないのではないか。


 サッカーのJリーグは1993年のスタート時は10チーム。21年後の今季はJ1の18チーム、J2の22チームに加え、新設のJ3に11チームが加わり計51チームとなった。
 日本のプロ野球は10年前の近鉄球団の撤退時に、「1リーグ制」「10球団」などの議論もあったが、乗り越えて12球団による2リーグ制を堅持している。
 ラグビーのトップリーグは03年のスタート時の12チームが、昨年は16チームとなった。企業チームの減った社会人野球はクラブチームの参加を増やし、クラブチームだけの大会を振興し、参加資格も緩和した。学生野球の首都大学リーグは、今春から1部を6大学から8大学に増やした。


 国内では認知度が低く、五輪競技ではないため、他の競技のような追い風も吹かないアメフットが何をすべきかは、かなり明白なように思える。
 それは少しでも裾野を広げ、競技人口増加につなげることだ。かといって、今のXリーグがそのままでいいということではない。それについては、次回述べたい。

【写真】若手主体のオービック守備陣に止められる太陽ビルの攻撃=撮影:Yosei Kozano、4日、川崎富士見球技場