社会人アメリカンフットボールのXリーグは5月4日、川崎富士見球技場でパールボウルトーナメントの予選リーグ2試合を行った。日本選手権「ライスボウル」4連覇の王者オービック・シーガルズと、昨季社会人準優勝の富士通フロンティアーズがともに今春の初試合。飽くなき補強で突出した2強のチーム力が、格差を見せつける結果となった。


 ▽富士通93―0ハリケーンズ
 試合前に配布された富士通の先発メンバー表にQBコービー・キャメロンの名があった。
 米ルイジアナ工科大出身の24歳の名前と大学に記憶があった。2012年のシーズンに12試合でパス4147ヤード、成功率68.8%、31タッチダウン(TD)、5インターセプトの好成績で、パス攻撃で同大を全米120校中9位に導き、所属するウエスタンアスレチックカンファレンス(WAC)の代表にも選ばれた大学トップクラスのパサーだ。


 そうした数字以上に中身が濃かった。第6週のテキサス農工大戦では、今季のNFLドラフト注目選手の一人、QBジョニー・マンゼルとパスを投げ合って、57―59で敗れたものの、キャメロンは450ヤード、5TDとマンゼルをしのぐパフォーマンスで話題となった。
 さらに開幕から10試合連続でインターセプトなしで、ラッセル・ウィルソン(現シーホークス)のNCAA記録を塗り替え、シーズン終了後には、優秀なQBに与えられる賞の一つであるサミー・ボウ賞も受賞。いわば記録にも記憶にも残るQBだった。
 その後はNFLパンサーズにドラフト外で入団、シーズン前に放出されたという。私自身、NFLのドラフト候補としてマークしていた選手がXリーグのフィールドに立つとは思わなかった。


 キャメロンは巧みに富士通の攻撃をリードした。パスで奪ったTDは3本だが、むしろRBをうまく使った印象が強い。ショットガンからドローと、ドローフェイクのプレーアクションパスがまったく同じ動作から繰り出され、ハリケーンズ守備を翻弄した。
 また、センターがカウントを間違えてスナップを出しても、受け止めてランに切り替えファーストダウンを奪うなど、終始冷静なプレーが目立った。


 サイドラインでは、今季から攻撃コーディネーターを兼任する藤田智ヘッドコーチ(HC)と話し合う姿も。藤田HCによると、プレーコールはサイドラインからとキャメロン自身によるものの半々だったという。
 実戦のブランクは1年以上で、藤田HCは「まだまだ全然本来の力が出ていない」とみる。富士通は、宜本慎平、潤平兄弟や、中村輝晃クラーク、秋山武史、強盛ら、運動能力が高くスピードのあるWRが多い。キャメロンが彼らを使いこなすようになれば、他チームの守備陣には脅威だろう。


 試合後、ファンに写真を一緒に撮ってほしいとせがまれ、やさしく対応するキャメロン。「スキルやフットボールの知識だけでなく、人柄も素晴らしく、手本になる選手」(藤田HC)の姿が垣間見えた。


 ▽オービック111―0太陽ビル
 オービックの強さは、各ポジションに核となる歴戦のベストプレーヤーがいること。さらに、米国人選手も、攻撃ラインのフランク・フェルナンデス、ケアラカイ・マイアバ、守備ラインのケビン・ジャクソン、バイロン・ビーティー・ジュニアと、制限いっぱいの4人で固まっている。


 高レベルの選手がそろう反面、世代交代やインパクトのある強化は簡単ではない。それを意識してか、特に今オフは学生オールスター級の逸材を続々と入団させた。
 大橋誠HCは「3ポゼッション差になるまでは主軸級の選手を出し、それ以降は若手、新加入選手を使う」方針だったため、試合の大半を通じてオービックの新人と若手が活躍し続ける結果となった。


 中でも目立ったのが、新加入のQB畑卓志郎と2年目のRB望月麻樹の「関学大コンビ」だ。
 昨シーズンは不本意な成績だった望月は、ラン103ヤード、4TDとチーム最多の活躍。畑も第3クオーターから登場し、最後のニーダウンを除く9回のドライブを全てTDに結び付けた。
 ライスボウル4連覇の中でオービックが最も苦しめられた「青」の二人が、オービックのジャージーに身を包みフィールドを縦横に駆け巡った。


 守備でも、2サックの長尾篤(早大)を筆頭に高橋誠(日体大)、江頭玲王(日大)らルーキーDLが奮闘した。
 ここに大学世界選手権の日本代表に選出されて遠征中のOL坂口裕(立命大)やDL清家拓也(関大)が加わる。この強力なメンバーが、オービックでは「2軍」なのだ。


 大橋HCは「畑は練習よりもよかった」。登録選手をほぼ全員きっちりと使いこなせたのがこの日の収穫だったという。
 春のトーナメントとはいえ「他のチームも勝ちに来ている以上、真っ向勝負でたたきにいかないと、秋にも影響が出る。2シーズン制で戦っている感覚だ」と、次のIBM戦(31日・川崎)に向けて気を引き締めていた。


 大差となったこの2試合、特にオービック対太陽ビル戦はリーグの最多得点差、最多失点の二つで記録更新となった。
 大敗したハリケーンズ、太陽ビルの両チームはサイドラインでスタイルしている選手も20数人で、試合をするのにギリギリ、交代もままならない。ファンからは「格差リーグ」への不満も多いようだ。次回はこの問題について考えたい。

【写真】富士通QBコービー・キャメロン。サミー・ボウ賞受賞の実績を持つ=撮影:Yosei Kozano、4日、川崎富士見球技場