コラム連載を始めて以来、日本のアメリカンフットボール普及や振興について、いろいろな方々からさまざまなアイディアや提案を頂戴する機会が増えた。今回は、あるファンの方からいただいた社会人フットボールXリーグについての改革案を紹介したい。


 この案を考えたのは葛西泰寛さん。都内でコンピューター関係の会社を経営している葛西さんは、昔からのアメフットファンだったが、Xリーグの試合を見るようになったのは最近になってからだという。
 しかし、すぐに「上位と下位のチーム間に、大きな実力差がある」と気づき、多くの試合で対戦カードを見ただけで勝敗がわかるようになった。
 アメフットの番狂わせは他のチーム球技と比べたら相当少ない。例えば昨シーズンのプロ野球で対戦成績が最も差が付いたカードは巨人対横浜DeNAだが、DeNAは5勝18敗1分けで、勝率は2割1分7厘。5回戦えば1回は勝つ。
 だが「Xリーグでファイナル4に進むようなチームと下位が戦ったら、何試合戦っても99%結果は同じでしょう」。そもそも、日本の社会人フットボールには米プロフットボールNFLのような、チーム間で実力を均衡させる仕組みがない。


 葛西さんは、現在のファーストステージは好カードが少なく、大差の試合、消化試合が多いと指摘する。
 「ファーストステージは50~60点差、時として80点差が付くことさえあり、試合として成立していないことが多い。クラブチームで80点差の敗戦があれば、スポンサー撤退に結びつく懸念があるでしょう」


 セカンドステージについては、好試合が多いことは認めるものの、決勝トーナメントへの出場条件がわかりにくいことを問題点としてあげる。
 「ファーストステージ1位通過以外のチームがファイナル4に進めるかどうかは、他の試合の結果で決まります。3位のチームは2勝しても進めるかどうかわかりません」。分かりやすくするためには、セカンドステージ以降は8チームによる単純トーナメントが望ましいという。


 「多くのスポーツでは、リーグ戦とトーナメントの良い所を取って、1次リーグと決勝トーナメントを組み合わせた方式をとっています」。消化試合やつまらない試合が減る。優勝は、必ず対戦するチームの間で決まる。
 チケットが売れるなどの利点があるからで、単純リーグ戦で優勝を決めていた日本のプロ野球両リーグでも、クライマックスシリーズと称してトーナメントを行うようになったと指摘する。


 葛西さんは、アメフットが他の競技と比べて、長い準備と多くの労力が必要な特性を持っていること、試合日程はかなり前にスケジュールを組まなければならないこと、多くの試合はできないこと、したがって敗者復活戦も難しいことなどを把握している。
 現状のX1は首都圏2ブロック、関西1ブロックだが、費用的な面から東西間の移動を伴う交流戦や遠征を頻繁にはできないことも承知している。その上で以下のような提案をしてくれた。


 ▽改革案1 直列2ブロック制
 ファーストステージは、首都圏12チームを「スーパー6」、「バトル6」の直列2ブロックに分け、関西など6チームの「ウエスト6」の計3ブロック内でそれぞれ総当たりで戦う<図1>。
 現在のXリーグはセカンドステージで「スーパー9」「バトル9」ともに好ゲームが多い。それをファーストステージから発生させる狙いだ。


 今シーズンからの関東学生リーグに似ているが、異なるのはファーストステージ終了後に「スーパー6」の下位3チームと「バトル6」上位3チームがワイルドカードを戦う点。勝てばセカンドステージの8チームによるトーナメント進出が可能となる<図2>。
 下位からでも最大3チームがトーナメントに進めるのだ。またこのワイルドカードはスーパー、バトル間の入れ替え戦としての性格も併せ持つ。「スーパー6」と「ウエスト6」は上位2チームがセカンドステージ進出が自動的に決定、3位同士もワイルドカードを戦う。


 試合数維持と、X2との入れ替え戦出場チームを決める目的で「ウエスト6」「バトル6」の下位3チームも順位決定戦で対戦する<図3>。
 セカンドステージのホーム&アウェーは、原則として当該チームのファーストステージ順位で決める。


 ▽改革案2 変則リーグ戦制
 直列2ブロック制は、上位と下位に分けるため、下位ブロックはトップリーグとは言いにくくなる懸念もある。
 そこでもう一つの案が変則リーグ戦制。これは、首都圏12チームは1つのカンファレンスとして統合し、ファーストステージでは<図4>のような変則リーグ戦を戦うというものだ。
 12チームを横3ブロック、縦4層として、対戦相手は、同じ色で示された縦横の5チームとなる。同レベルの相手と2試合、レベルが違う相手と3試合戦うことになる。決勝トーナメント進出は勝敗順で決め、同勝敗チームが出た場合はトーナメント進出決定戦を行う。
 セカンドステージは、8チームによるトーナメント戦で、これは変わらない。


 ▽順位決定の基準
 葛西さんの案は、順位決定も重要となってくるためその基準も提示している。
 優勝したチームが1位、決勝で敗れたチームが2位。他は、全試合終了時の勝敗数。同じ場合は、前年順位で決定。引き分けは勝ち数0.5、負数0.5とカウント。得失点差、TD数などは用いない、などだ。


 葛西さんがまとめた改革案は、
・首都圏12チーム、関西6チームを維持し、試合数の増減は最小限
・チームの負担になる東西間の遠征も抑える
・より多くの試合に緊張感を持たせる
・すべてのチームに優勝の可能性を残す
という特徴がある。私案とはいえ、よく考えられていると思う。東の12チームと西の6チームが同条件にならないという問題はあるが、仮に東西の18チームを合同したとしても、上記2スキームを適用することは可能なように思う。


 葛西さんは「アメフットはルールがわからない、難しいというが、一度、素晴らしい試合を見ればわかるようになる」という。野球やサッカーのファンの多くは、ルールに精通しているわけではない。
 そんなことよりも「試合の中で、どこで熱くなるか、熱くなれるか。それがわかればいいのです。誰でも4Qの逆転タッチダウンを見れば、試合がわかるようになります」。


 ファンの方々と話していると「関学、日大、オービック、パナソニックを一つのリーグに」「いっそプロリーグ化を」などという、思い切ったアイディアを聞くこともある。
 しかし、ドラスティックな案はファンの耳目を集めやすいが、実現は困難だ。現状をある程度受け入れながら、改善可能な提案をするのは企業経営者ならではだろう。社会人協会にとっても、参考になる部分が多いと思うのだがどうだろうか。

【写真】<図1> 直列2ブロック制