4月12日、新装なった川崎富士見球技場で開催された、3年ぶりのアメリカンフットボール日本代表戦「ジャーマン・ジャパンボウルⅡ」は、日本がドイツ代表を38―0で下した。この試合の詳細については、この「週刊TURNOVER」の中でも報道され、さらに中村多聞さんや共同通信の松元竜太郎さんがドイツ代表について論評している。


 試合前、新たなメーンスタンドが観客で埋まり、その中で国旗を掲げ入場した両チームを見ていて私もテンションが高まった。
 日本の最初のオフェンスシリーズで、QB菅原俊からのピッチを受けたRB高野橋慶太が、ドイツLBダァビッド・ミュラーのタックル一発でなぎ倒されたプレーは撮影していてもゾクゾクした。
 しかし、この高揚感は、試合が進むにつれてどんどん下がっていった。ドイツ代表は残念ながら強くなかった。期待される部分に欠けていた。


 私は、背景にメーンスタンドが写るように、ドイツ側のサイドラインで撮影していた。移動で選手の間をすり抜けながら、彼らの身体は、背は高いが、太さや厚みがないように感じた。それはプレーに反映していたと思う。
 日本は、特に攻守のライン戦においてパワーで圧倒されるシーンは少なく、逆にクイックネスでは優位に立った。日本の攻撃ラインはQBサックを許さず、守備ラインはドイツQBにプレッシャーをかけ続けた。


 奪ったサック数こそ2だったが、スクリメージを割って入り、QBを追い掛け回すシーンが何度もあった。ドイツ代表が、我々が期待する「らしさ」を見せたのは、LBや守備ラインのラン守備ぐらいではないか。
 他方、レンズを通してみる反対サイドの日本代表は、選手同士が談笑するなど、緊迫感に満ちていたとは言い難い。3年ぶりの代表戦は、そういう試合だった。


 日本のアメフットでは、社会人・学生を交えたフル代表の歴史はそれほど古くなく、1998年8月のフィンランド代表との一戦が最初だ。
 私はこの試合を含め、国内で行われた日本代表の試合の大半を撮影してきたが、最強の相手は、2009年7月に対戦した、ノートルダム大のOBチーム「レジェンズ」だったと思う。


 この試合のキックオフ前に、東京ドームのフィールドでアップしているノートルダムの選手たちを間近で見たとき、体の大きさ厚み、大腿や上腕の発達した太さに目を見張った。
 今はプレーしていないOBばかりのはずだが、腹回りもすっきりシェイプされた選手ばかり。「この試合は苦戦しそうだ」と感じたのがそのまま的中した。


 ノートルダムは実質的にQBがおらず、守備バックの選手がQBに入ったため、パス攻撃はほとんどなく、ランプレーしかなかった。しかし、その来るとわかっている力ずくのランが止められなかった。
 攻撃では早いタイミングのパス攻撃は決まったが、第4ダウンギャンブルやゴール前では守り切られてタッチダウンを上げることすらできなかった。最終スコアは3-19の完敗。フィジカルでは、点数以上の差を感じた。


 インジュアリータイムアウトでフィールドに倒れているのは日本の選手ばかり。一発で倒され、一発で倒せないシーンが続いた。ヒット、タックルの強さが全然違った。
 名門大OBとはいえ、現役ではない選手たちの迫力あるプレーに格差を感じた。


 ドイツ戦の後、日本代表の森清之ヘッドコーチに話を聞く機会があり、5年前のノートルダムOBとの試合についても尋ねた。
 当時も日本代表HCだった森さんいわく、フィジカルの差もあったが、それ以上に「フットボールをわかっていることの違いが大きかった」という。
 確かに大きい、確かに強い、でも隙が多いというのが米国以外の外国のチームだという。
 「でもあのノートルダムのチームは、QBがいない(味方の高得点が期待できない)という状況の中で決定的なミスをしない。勝負所で、出されてはいけないプレーは出させない」


 この試合で記憶しているのは、試合の大勢を決めた第3Qのタッチダウン後、トライフォーポイントで一人の選手がマウスピースを装着せずに出て「装具の不備違反」の反則を取られた場面だ。
 この試合のためだけに復帰した通算249勝の名将ルー・ホルツHCが、顔を真っ赤にして怒号を上げ、反則を犯した選手は直立不動だった。
 引退して70歳を越え、本国では「Dr.フットボール」として敬愛される温和な老将が見せた「やってはいけないことを許さない」迫力。アメフット母国の底の深さの一端を感じさせられたシーンだった。


 森HCは、今回のドイツ代表が強いチームでなかったことを率直に認めたうえで、「日本の攻撃ライン、守備ラインは従来の代表チームと比べても相当に良くなっている」という。
 これまで、レベルの高くない欧州の代表チームといえどもライン戦の局面は別で、苦戦することが多かったが、今回はそういうシーンが少なかった。それは、ラインの選手が負傷退場するシーンがなくなったことでもわかるという。


 だからこそ、日本代表と本場米国のチームとの戦いを見たい。ハードなプレー、緊迫感のあるサイドライン、胃が痛くなるような試合展開。それをジャパンの試合で見たい。
 ジャパニーズフットボールの命題は、4年に一度の世界選手権に勝つことではない。遥か遠くに見える米国の背中を追い続けることだろう。


 全米大学体育協会(NCAA)所属大学は、規則上日本代表とは試合ができない。5月にスウェーデンで開催される「第1回大学世界選手権大会」にも、米国は代表を送らない。NFLはヨーロッパリーグを廃止し、本体による国際的な人気拡大以外には当面目を向ける様子はない。
 歌手・石川ひとみさんのヒット曲「まちぶせ」ではないが、どうしたらアメリカを振り向かせることができるのだろうか。

【写真】日本代表のOL。右からRT黒川、RG荒井、C鈴木、LG野田、LT小林。平均の身長は188.8センチ、体重は125.6キロ=撮影:Yosei Kozano、12日、川崎富士見球技場