今週末の4月12日(土)に、アメリカンフットボール日本代表がドイツ代表と対戦するテストマッチ、「ジャーマンジャパンボウルⅡ」が、川崎で行われる。
 旧川崎球場に2000人収容の観客席が一塁側に建てられ、野球場から多目的の「川崎富士見球技場」となった記念の国際親善試合だ。2週間後の26日にはフィリピン代表と世界選手権アジア代表決定戦(東京・調布市のアミノバイタルフィールド)も控えている。


 日本代表の招集は、2011年7月の第4回IFAF世界選手権 (オーストリア)以来、国内での代表戦は同年2月の第1回アジア選手権の韓国戦(川崎)以来3年ぶりとなる。
 3月7日に発表された、一次代表候補85人が4回の強化練習を経て絞り込まれ、4月7日に45人の発表があった。


 今回の代表チームの特色は、代表初出場の選手が多いことだろう。過去代表経験があるのは攻撃では、23人中、QB菅原俊、WR前田直輝、萩山竜馬、宮本康弘、OL小林祐太郎の5人。守備・スペシャルチームでは22人中、LB塚田昌克(主将)、竹内修平、DB今西亮平(副将)、加藤公基、藤本将司、辻篤志、矢野秀俊、藤田篤の8人だ。
 このうち、宮本、竹内、矢野は、09年のノートルダム・ジャパンボウルでの選出で、代表メンバーが60人と多かった上、試合数も1試合だけだった。


 7割強が初代表というフレッシュな顔ぶれとなった今回のジャパンについて、森清之ヘッドコーチに話を聞いた。
Q:実力だけで選んだというよりは、若い選手を登用するという意図があったようだが
A:たとえばシーガルズの古庄(直樹、LB)、木下(典明、WR)など力で選んだら当然入っていたと思う。ただ、NFLヨーロッパが07年でなくなって、海外でプレー経験のある選手が少なくなっている。今回のような国際試合が、海外のチームと戦う機会となっている。これまで世界選手権などで代表に選ばれている経験十分な選手は、相手の情報がない中で戦うとか、国内でやっている戦いとは全然違うフットボールになるということを体感しているのだが、彼らの年齢が上がってきて、世代交代に近づいている。若い選手たちに、こういう貴重な機会を1試合でも経験させて、「こういう感じなのか」というものをつかませておかないと、来年(の世界選手権)は相当に厳しいものになる。だから、若い選手、今まであまり選ばれていない選手を選び、育ってもらおうというのが、今回の大きなテーマだ。ここで成功体験を得て、来年につなげてほしい。
Q:個々のポジションや選手で期待しているのは
A:OLの野田(健仁)は、外国人と比べてもサイズが見劣りしない(193センチ、138キロ)。前回の世界選手権の時には、強かったけれども技術的には未熟だったので代表には選ばなかったが、次代の柱になってほしいということで、練習にはずっと帯同させていた。Xリーグの試合を通じて、3年間で相当に成長して、今はラインの中で中心となりつつある。今回、外国チームと戦うのは彼にとって初めての経験だと思うので、結果を出してほしい。
Q:RBやQBで、経験者は菅原だけだが
A:菅原も、前回の世界選手権では、QBは高田(鉄男)と東野(稔)の起用が多く、ほとんど試合に出ていない。バックス・レシーバー陣では、経験があるのはWRの前田と萩山くらいではないか。ただ、レシーバーは若いがサイズもあってすごく楽しみな選手がそろっている。このメンバーが育ってくれないと、というところがある。
Q:オフェンスの戦術としては、ショットガンで細かいパスを中心に攻めるという従来の日本代表と同じと考えていいか
A:それは変わらない。ただラインが大きくなって、だいぶライン戦でも勝負ができるようになってきた。結果として、前回の世界選手権もランプレーがかなり出ている。(体が大きくパワーのある)ドイツの守備相手に、ランがどれだけ出せるかも見たい。小手先だけでは、どんどんキャッチアップされてきているので、真っ向勝負でもある程度戦えるようにすることが大事だと思う。
Q:守備でこれから主軸にならなければいけない選手は
A:今春卒業の学生LBが楽しみだ。池田(雄紀、関学大卒)、澤田(遥、関大卒)、田中 (喜貴、法大卒)の3人は、サイズとスピードがあり、スキルも高いものがある。真っ向勝負でランも止められるし、パスカバーもうまい。本格派の大型LBだと思うので、期待している。田中は、仕事の関係でドイツ戦には出られないので代表に入っていないが、2週間後のフィリピン戦にはメンバーを入れ替えて出場させる予定だ。
Q:川崎に、このような立派なスタンドができて、新生「川崎富士見球技場」に生まれ変わった。見に来るお客さんへのメッセージを
A:お客さんが、先入観を持たずに、フラットな気持ちで観戦されて、何かが伝わるような試合をしなければいけない。見に来られた方すべてが心を動かされるようなプレーをやりたい。もちろんプレーのレベルも大切だが、自分たちがアメフットを始めたときのような一生懸命さを持って戦いたい。


 今回の日本代表の発表については、あえて苦言を呈しておきたい。
 それは発表方法についてだ。ウェブサイト上で名簿を発表しただけで、記者会見もなければ、選手やコーチのコメントすらない。しかも発表の日時も、当初は4月3日、次は4月8日と変更され、結局4月7日に事前通告なしに発表された。結果として、一般紙、スポーツ紙、テレビなどのマスメディアでの露出は、ほぼないに等しい。


 サッカーでも野球でもラグビーでも、日本代表になるのは選手にとって大変な名誉であり、大きな目標だろう。それはアメフットでも同様のはずだ。まして、アメフットの代表は前出のスポーツとは違い、常設の日本代表チームがない。3年ぶりの招集なのだ。


 人気や注目度ではサッカーや野球の後塵を拝しているからこそ、こういう機会にメディア露出を心がけるべきなのではないか。
 社会人決勝「ジャパンXボウル」、日本選手権「ライスボウル」では毎回、試合前に記者会見を開いている。できないはずがない。会場費用などがネックになるのなら、日本体育協会がある岸記念体育会館(東京・渋谷)で開いてもいい。


 また、今回は新装なった川崎富士見球技場の記念試合なのだから、川崎の現地でスタンドお披露目を兼ねて記者会見やフォトセッションを設定してもよかった。
 政令指定都市の川崎市は、アメリカンフットボールの普及に、これまでも積極的な役割を果たしてくれている。今回の新装は予算面も含め、川崎市の全面的な協力あってのもの。その「恩」に報いることにもなっただろう。


 3月10日に、宍戸博昭編集長が「【編集後記】Vol.26」の中で、「代表の活動を主導する協会幹部の、当事者意識の希薄さ」を指摘したが、今回の他人事のような代表発表のやり方にも、同じことを感じざるを得ない。


 これまで川崎球場に通い続けた私としては、5日の代表の公式練習取材の際に、真新しいコンクリートのスタンドを見上げて、胸に迫るものがあった。
 米国ならプロのNFLはもちろん、大学でもこの10倍から20倍の収容力を持ったスタジアムを自前で持っている。
 だが、それまでのみすぼらしい鉄パイプの仮設スタンドを思えば、日本のフットボールにとっては大きな一歩だ。その感慨は選手やコーチにもきっとあるに違いない。ナイスゲームを期待したい。

【写真】新装なった川崎富士見球技場=撮影:Yosei Kozano、4月5日