この文章を書いているのは12月24日のクリスマスイブだ。家族、友人、恋人と楽しい夜を過ごしている人も多いだろう。しかし、愛と寛容の精神で互いを慈しむクリスマスに目もくれず、皆で祝い合うお正月も関係なく。「倶(とも)に天を戴(いただ)かず」と、相手を叩きのめすために全知全能を傾けている二つのチームがある。1月3日の日本選手権「ライスボウル」で、3年連続で激突する関西学院大学ファイターズと、オービック・シーガルズである。2年連続で敗れ、雪辱を期す関学大・鳥内秀晃監督と、前人未到の4連覇を目指すオービック・大橋誠ヘッドコーチ(HC)に話を聞いた。


 <ライスボウル発表記者会見=12月17日>
 ▽関学大・鳥内監督
 3年連続この場に立てた。今年も、社会人に勝つチームを作ろうということで始めてやっとここまで来られた。真っ向勝負でやりたい。(日本協会が公益法人の認定を受けたというが)、オービックの4連覇は公益ということで言えばアカンのではないか。学生は大分痛んでいるが、これからベストコンディションに整えたい。大学の授業も終わるので、練習量で勝負したい。よろしくお願いいたします。


 ▽オービック・大橋HC
 ほんの半日前に、富士通との激戦で何とか勝つことができたばかりで、関西学院大学と試合をするという感じがわいてこなかった。いま鳥内さんの隣にいて、「鳥内節」を聞いて、「やっぱり関西学院さんとやるんだな」という実感を持っている。(「4連覇は公益に反するのでは」という鳥内監督の言葉に)この手のプレッシャーをずっとかけられてきていて、この3年間私もだいぶ鍛えられました。
 オービック・シーガルズは今季厳しい試合もあり、でこぼこした道を歩んできた。その分いろいろな意味で鍛えられた。一段、二段と更に成長して関学さんとの試合に臨みたい。我々が倒してきた社会人のチーム全員の思い、我々を応援してくださるたくさんの方の思いを裏切ることがないように素晴らしい試合をしたい。


<一問一答>

 ▽関学大・鳥内監督
Q:左足を痛めたLBの池田雄紀の状態は
A:ギプスが取れない状態で、取れたとしても練習ができない可能性が大きい。ライスボウル出場はギリギリ。出られたとしてもベストのパフォーマンスはちょっとしんどいでしょう。
Q:オービックの印象は
A:昨日テレビで(ジャパンXボウルを)見たのですが、相変わらず個々の選手がすごいので厳しい。過去2年間のゲームをもう一度見直して、弱点をついていければなと思う。
Q:自分たちの強みは
A:学生は、これからの2週間、3週間でまだ伸びる。今まで通りのパフォーマンスを全員が発揮しながら、もうワンランク上のチームになることを目指してやっていきたい。4年生の中には、去年のチームよりもレベルは下だという認識があるので、そこが面白い。自分たちは弱いんだという気持ちでチャレンジできることが一番の強みではないかなと思う
Q:関学大は強いのに、過去1勝7敗となぜかライスボウルには勝てない
A:私が1982年に卒業した後に、1984年にライスボウルが社会人と学生の王者が戦って日本一を競う形に変わった。京大や日大が強いころに、今のやり方ができ、彼らはその時代にきちんと勝ったから通算の優勝回数が多い。関学としては、最後の試合は甲子園ボウルという考えだった。始まったころは「ご褒美の試合」みたいな捉え方があったのではないか。あの頃に勝っておけば今のようなプレッシャーも私になかっただろうに。今は選手の意識が、ライスボウルに勝つということに向いている。ただ、そんなことばかり言っているわけにもいかない。関西で立命館をはじめとする強いチームに勝たなければいけない。今年だって、立命館には勝てなかった。
Q:大橋HCは鳥内監督に重圧を感じているように見えるが
A:彼もベテランなので、内心ではそんなことは思っていない。皆さん騙されてはアカンよ
Q:関学大のキーマンを一人あげるとすれば
A:QBの斎藤でしょう。QBがちゃんと機能しないと。0点では、引き分けではアカンし。斎藤がパスを放れる状態に持っていかないと。セットバック隊形からのドロップバックパスばかりもやっていけないだろうから、工夫して投げる場所をいろいろ変えながら的を絞らせない攻撃をしないとしょうがないでしょう。あと、相手のディフェンスを疲れさすことでしょう。後半にはバテてくるでしょうから。
Q:勝負は第4クオーターになるというゲームプランか
A:前半で勝負がついたら面白くないでしょう。オービックが(エースWRの)木下(典明)にばっかりパスを投げないように言いたい。ファンが減るで、と。我々はプレーでミスをしたら終わってしまう。社会人は1試合通じて見ているとミスをしないということはない。どこかでチョンボをしてくれる。それをうまく利用できればなと
Q:昨シーズンの関学大は、近年では完成された最強チームという感があった。昨季を100とすると今のチームはどれくらいか
A:うーん。8割くらいではないか
Q:足りない2割の部分は
A:やっぱり個々に勝負できる選手が減っている。たとえば(昨年主将のDE)梶原誠人は(オービックの選手と)勝負できていた。QBの畑卓志郎も勝負できるはずだったが脚を負傷していた。畑が走り回って勝負できていたらもっと面白かったけど。今年の斎藤はそこまでのスクランブラ―ではない
Q:サイドラインのコーチの取り組みがさらに大変になるのでは
A:私でけではなく、コーチはみんなしんどい。作戦ミスがないように練って練って練らなければしょうがないでしょう。
Q:3年連続でオービックと戦うことについては
A:過去2年間、(戦力的には差があって)「アカン」割には勝負できていた。なんとかして勝たなければ。3年連続で敗れるわけにはいかない。ファンが減らないように頑張ります


 ▽オービック・大橋HC
Q:関学大の印象は
A:今年の関学大を見る機会がまだ少ないが、毎年思うことは遂行力が高いなと。自分たちがやろうとしたことをやり切る力が高い。(対戦する側として)いろいろなことを仕掛けられるのが嫌なのではないかと尋ねられますが、やられることよりもやり切られることが嫌なので。ミスを誘うようなことができればいいかなと思っている
Q:自分たちの強みは
A:我々のチームは選手に恵まれたチームだと思っている。問題は選手一人一人のタレントをどれだけフィールドで出し切れるか。その準備をするのが我々の強みだと思っているので、それができる1月3日にしたい
Q:勝てば史上初の4連覇だが
A:建前で言っているのではなく、過去どれぐらい勝っているかということは今季のチームには関係がない。2014年のライスボウルという舞台で我々が結果を出すこと、2013年シーズンのチームが目標にしたことをやり切ることが大事。ただ、試合が終わったときに、試合の中での目標を達成して結果が4連覇となったときに、応援してくださる方々にはきっと喜んでいただけるのだろうな、と思う
Q:関学大という、一番気の重くなる相手と今年も戦うことについて
A:すごく正直な話、社会人王者として学生王者には負けられないというプレッシャーはある。その中で、関学のような、誰もが認める試合巧者でしっかりとした伝統のあるフットボールチームと毎年戦うことは非常な心労です。一方でこういった機会がもらえていることはとても幸せなことだなという気持ちもある。勝てれば我々が目指してきたものが高みに登ることになる。困難な課題ほど達成した時の喜びは大きい
Q:16日の甲子園ボウルは
A:ジャパンXボウルの前日だったので、余裕がなくて見ていない。(日大と)もうちょっともつれるのではないかと予想していたので、試合結果だけ聞いて「やっぱり今年の関学も強いんだな」と
Q:関学に敗れた日大は、個々の選手の力量では負けていなかった。オービックの選手がタレント的に優位でも試合で通用するとは限らない
A:その通りだと思います。こちらの能力を発揮させないようにしてくるのが関学フットボール。タレントに任せて「えいやー」でなんとかしてくれという雑なプレーではいけない。選手のタレントを生かせるような戦術・策略をこれから2週間必死に準備したい
Q:過去2年間の戦いでは、関学大に仕掛けられてオービックが受けに回っている印象があったが
A:我々が成立させるべきプレーを決めきれない。逆に関学は着々とそれを成立させたというところで、リードされたり逆転されたりしたというところがある。我々がもっと精度の高いプレーをしなければならない。そこでの勝負に負けないようにしないと
Q:序盤から主導権を奪ったジャパンXボウルのように、出端をくじくような戦術・プレーは考えているか
A:我々は、どのゲームでもオープニングをどう制するかと考えて、仕掛けにいっている。それが本当にアグレッシブなプレーとして出るかどうか。昨日の試合で学んだのは、戦術とか戦略も大事だが、選手のメンタリティが一定以上のレベルに達していないと難しいということ。きちんとモチベートしてゲームに臨みたい


 記者会見で印象に残っている言葉がある。それはオービック主将、LB古庄直樹の言葉だ。立命大出身で、関学大と戦い続けてきた古庄は「特に、この2年間、関学と戦っていて感じるのは、フィールドにいる選手の納得感がすごい。誰も疑問を持たずにそのプレーを遂行しているところが強さであり怖さであると思っている」と語っている。


 関学フットボールは恐ろしい。それをしのぎきったオービックもすごい。2年間サイドラインで見た私の実感だ。
 1月3日、日本のフットボール2013シーズンの集大成は、やはりこの試合しかないという勝負を見せてくれるだろう。しっかり見届けたい。

【写真】ライスボウル発表記者会見に臨む、関学・鳥内監督(右)と、オービック・大橋HC=撮影:Yosei Kozano、17日、都内